第7話 どうしたんだ近江。何のための臨時休養だ
さて、試合が終了すると、真っ先に行われた事がある。
『蛍が丘高校野球部裁判』
である。
これにより最上に重罪が課される予定であったが、信英館への勝利に関する多くの勲功があったため、今後の試合でも尽力することを条件に司法取引が成立。事実上の無罪が確定したのであった。
そんなしょうもない事が試合後に行われたのである。
信英館もこのようなイロモノ高校に負けたのだから、それはそれは無念であっただろう。
そんなことなどお構いなしの蛍が丘高校は、春馬の「疲れた」の一言で即刻帰ることに。
帰りの車は3つの車に分乗。新田楓音家の車には、楓音、春馬、近江、最上の4人。猿政家のトラックには荷物と共に猿政。そして大崎家の車には、皆月、寺越、因幡の3人。残った大崎は、「相棒と走って帰る」と言い出し、車から折りたたみ自転車を引っ張り出して疾走中。
「にゃ~、にゃ~」
「じゃれつくな、近江。鬱陶しいぞ」
2列目の席で近江の相手をしている春馬だったが、ふと試合の事を思い返す。
「しっかし最上の作戦は、毎回ヒヤヒヤするぞ。最後のジェンキンスの打席とかさ」
「あれはな、ジェンキンスがゴロを転がしに来た時点で成功なんだよ。元々スラッガーのジェンキンスに自分のバッティングをさせなかったんだから」
「なるほどな。けど、最上。ひとつ言わせてもらうと、お前の策は怖い」
「ははは。悪かったな」
最上は笑って返しながら座席に深く座り込む。そして窓から、まだ少し見える球場をみつめる。
『(本当にあのシフトを破りたければ、穴を突くべきではなかった。スタンドに叩き込むべきだったな。信英館)』
最後部座席で静かになった最上の一方で、近江はしつこいまでに春馬にじゃれつき続ける。
「ねぇねぇ、ひざまくらして~」
「だからじゃれつくな」
近江の頭を押して拒絶する春馬。一方で彼女も諦めない。その中でかなり冷静を気取っているのは、助手席に座っている楓音。
「もぅ、近江ちゃん、試合後だって言うのに騒ぎすぎだよ。最上くんなんて気付いたら寝ちゃってるし」
「え? はやっ。つい数十秒前まで起きてただろ」
春馬は振り返って驚きの声を上げる。実際は彼女の声に合わせて眉毛が動いているため、完全に寝ているわけではなさそうだが。しかし近江は最上が寝ていようが起きていようが、そんなもの関係なしのようで、楓音に対して真っ向から対立。
「いいよね、楓音は。学校でも春馬くんのひざまくらでお昼寝してるもん」
「お、近江ちゃん? それは、その……」
大人のような立ち位置を決め込んでいた楓音も、そこを突っ込まれると明らかに弱い。顔を赤らめて黙り込んでしまった楓音。彼女に代わって口を開いたのはその隣。
「春馬くん、本当にありがとね。楓音ね、毎月の頭はいっつも機嫌が悪かったのに、ここ最近はずっと機嫌がいいのよ。前なんて月の始めはムスッとした顔で学校に行っていたのに、最近だといつも以上に楽しそうに――」
「お母さんっ」
先ほどから近年では珍しいMT車を運転中。楓音の母親である。大学時代は暇つぶしに峠に出かけていただけあり、さすがのクラッチ使いである。それも大学卒業前にハンドル操作を誤り、愛車を潰してからは引退したようだが。
「いえいえ、近江に比べれば全然大したことないですよ。例えるなら、初回で10対0くらいの差ですかね」
コールドゲームは決定的なレベルである。
「だったらよかった。本当、不束者の娘ですが、これからも楓音のこと、よろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそ」
「お母さんっ」
「はいはい」
まるで新郎に対するあいさつのような言葉をかける母に、楓音が強い口調で牽制球を放る。そして静かになると、楓音は怒ったように窓から外の風景を眺め始める。
「でも、本当に春馬くんと楓音は相性がいいみたいで安心したわぁ」
「もぅ……お母さん……」
口を閉じたかと思えば、すぐに話しはじめる。ここまで来ると、楓音も少し諦めも頭に浮かび始める。
「そうですか?」
「そうそう、昔からそうなのよ。2人とも」
「昔? そう言えば、保護者会での話なんですけど、楓音のお母さんって、1年生の時から僕の母さんと仲がいいですよね? 面識あるんですか?」
春馬と楓音は、幼稚園から中学校まで1度も一緒の学校になった事もなく、また習い事などの学外団体でも、同じ組織に属したことはないはずである。春馬も、親同士が同じ会社勤めだとか、そうした話は聞いた事が無い。
「あれ? お母さんから聞いてない?」
「何をですか?」
「春馬くん。誕生日は?」
「11月12日です」
「時間は?」
「そこまでは……」
誕生日を知らない人は稀だろう。だが、誕生時間まで知っている人はまた稀であろう。一般的には時間を知らず、日付のみ知っているのだろうが。
「春馬くんの誕生時間は午前中」
「なんで知ってるんです?」
「ふふふ。生まれた病院は?」
「市立の蛍が丘病院ですけど……」
地元にある病院で、中学期における野球での怪我でお世話になったため、春馬もよく知ってる場所だ。
「だよね。因みに楓音はね、11月12日が誕生日。までは知ってるかもだけど、生まれた時間は午後。生まれた病院は市立の蛍が丘病院」
「へ?」
「つまり、春馬くんが生まれた病院で、直後に楓音が生まれてるの。同じ病院で同じ日に出産。それも同じ『新田』姓だもの。そりゃあ、顔見知りにもなるわよ~」
軽いテンポで言いながらも、スピードダウンに合わせてギアもしっかりダウン。
「そんなの初耳です」
「私も初耳。けどお母さん? それ、本当? だって幼少期の私って、お父さんの仕事で鳥取にいたよね?」
「出産期と幼稚園に入るまでの間だけ、おじいちゃんとおばあちゃんに助けてもらえるよう、実家に帰ってたのよ。ほら、蛍が丘に家があるでしょ?」
そう言われればと納得する楓音。
「それからよ。お付き合いは。でもあのころから2人は相性がよかったわね。たしかね、病院にいた時に、楓音が突然泣き出したのよ。それでどうしても泣き止まないって時に春馬くんが来たのよね。そしたらピタッと泣き止んで、その後は2人同じベッドでぐっすりよ」
「へぇ」
興味深そうに聞き入る春馬の一方で、楓音はさらに顔を真っ赤にする。ひそかに恋心を持っている相手との間に、そうした過去があれば当然である。
「病院を出てからもしばらく実家にいたんだけど、その時も春馬くんはときどき遊びに来てたのよ。その時は凄かったわぁ。楓音と春馬くんを別々の布団に寝かせてたのに、気付いたら楓音が初めてのハイハイをして春馬くんの所に行ってたりね。因みに楓音の生まれて初めて言った言葉が『ゆんま』なのよね」
「ゆんまって、もしかして『しゅんま』の『しゅ』が上手く発音できなかった?」
「そう言う事。ほんと、ショックよ。『パパ』でも『ママ』でもなく、春馬くんに取られちゃったんだもん。初言語をね」
「ほんと、すみません。いろいろ」
なにせ親の感動の瞬間であるハイハイ、そして初言語を春馬絡みで持っていかれたのだから、親としては感動もありつつ、しかし残念でもあろう。
「春馬くんは、初めてしゃべった時、なんて言ったか聞いてる?」
「いえ、聞いてないですけど……」
「『のんのん』って言ったんだけど、分かる?」
「のんのん?」
いったい何のことだか分からないと首をかしげる春馬。何かのアニメキャラかと思ったが、意外に気付いたのが近江。
「はいはい」
「はい、近江さん。どうぞ」
「『かのん』の『のん』」
「正解。その時は逆に春馬くんの両親がショックよ。楓音に初言語を取られたんだもの」
「なんか面白い話ですね」
正解になぜか喜ぶ近江の一方、自分のことであるため、気恥ずかしく素直に笑えない春馬。この上なく苦笑いである。
「でも、ほんと、僕と楓音って昔からの仲なんですね。覚えてないですけど」
「そうよ。そう考えると、楓音が春馬くんのひざまくらでグッスリなのも、体が覚えてるのかもね。あ、そうそう。帰ったら写真でも探してみればどう? あるかもしれないよ」
「そうですね。暇があれば探してみます」
いつもの保護者会のような和やかな雰囲気で話し続ける2人。だがその間で、ゆでだこのように顔を赤らめて恥ずかしがっているのは、誰かなど言うまでもない。
「かの~ん。どうしてそんな真っ赤なの~つんつん」
「うぅ、なんでもない」
頬を突っつく近江にもまともに対応できず。
春馬こそ割とまともに会話を成立させてはいるが、楓音にとってはそんなもの不可能。あくまでも子供の時の話と言えば子供の時の話だが、春馬と一緒の布団で寝ていたなど、そうした話は恥ずかしい話以外の何者でもないのだ。
「でね、他にもね」
「もぉぉぉぉ、お母さん。やめてぇぇぇぇ」
さすがの楓音も耐え切れず大爆発。話を聞きたそうにしていた春馬と、言いたそうにしていた楓音母だが、さすがにこれ以上は話すわけにいかず、お開きとなった。こうしておけば安心と思う楓音だが、保護者会と言うおしゃべりタイムがあることを思い出すのは、しばらく後のことである。
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期末テストも終了し、残る1学期は実質的消化試合となった蛍が丘高校だが、果たしてすべての授業が消化試合かと言われると、必ずしもそうとは言い難い。
「えっと、つまりここの計算式は――」
他の教科ではテスト返しで授業はまともに行われないのだが、あいにく数学は既にテスト返しが終わっている。そのため、普通に授業が行われている。しかしただでさえ気力の続かないこの時期。もっと気力も体力も続かない者がいる。
「で、ここの回答を最上。……最上?」
適当な問題を答えさせようと名指しするも、まったくもって返事が無い。彼が座っている最前列、窓際から2番目の席を確認してみると。
「寝るな。最上。起きろっ」
「もぅなんですかぁ。先生」
「今日の授業は大事だぞ。最上」
「先生。僕の名前は『さいじょう』です。いつになったら覚えてくれるんですか」
爆睡していた野球部のエースは、あくびをしながら体を起こす。
「分かった、分かった。最上。ここの問題……って、野球部全員寝てるじゃないか。起きろぉぉぉぉ」
最上の後ろ、楓音は頑張ってノートを取っていた形跡があるも、途中から睡魔と激闘をしていたのか、何を書いているのか分からない。そして爆睡。さらにその横の近江は、こちらも途中まで真面目にノートは取っているものの、最終的にはプロ野球チームの先発オーダーが書いており、そしてやっぱり爆睡。そして春馬はと言うと……
「いや、野球部全員って、僕は起きてますよ?」
春馬は真面目にしっかり起きていた。ただし授業を受けているのかと言われると、センター過去問を解いており、まったく授業は受けていない。
これほどまでに野球部メンバーを疲弊しているのは、純粋に「夏大中だから」というわけではない。
さて、蛍が丘が信英館を破った理由はなんであろうか。
打力・投手力・走塁力・監督の統率力。いずれも信英館が勝っており、蛍が丘が勝っていたのは守備力だけに思える。だが、そうではない。
野球とは、気を抜くことができる競技である。攻撃中であれば、自分が打者・走者の場合を除いて、気を抜いておいても問題はない。守備は攻撃ほど気を抜けないが、ボールデッド中や投球間などは気を抜いても大丈夫だ。つまり一部のポジションを除き、野球は長期的で断続的な集中力よりも、短期的で爆発的な集中力が問われると言える。
では、野球部とはどのような練習をしているか。例えば信英館・天陽永禄のような強豪校は、それこそ起きている間は野球のように、7時間、8時間の練習も不思議ではない。その一方で蛍が丘高校は、新田春馬監督の指導の下、野球に適応した『短期的で爆発的な集中力』を身に着けるべく、時間は短い代わりに、集中して、質の高い練習を行っている。
その質の違う集中力で、信英館を打ち破ったのである。
しかしそれが野球に適していると言うのは『1試合』に限定した場合のみ。高校野球は過密スケジュールで行われるが、そこで必要なのは爆発的な集中力よりも体力。
結論を言えば、蛍が丘高校には『強豪を破るレベルの爆発的集中力』を持ってはいるが、『強豪なら普通に持ち合わせている、連戦を戦い抜く体力や、長期的集中力』は持っていないのだ。
重いまぶたを擦りながら起きる3人に、先生は監督の顔を見る。
「新田。野球部、試合前だからって練習しすぎてないか?」
「いえ? むしろ試合前なんで、体力温存も兼ねていつも以下ですよ。むしろサッカー部の方がやってます。なぁ、鈴木」
サッカー部の次期キャプテン候補のクラスメイトに目をやると、確かにと、2、3度首を縦に振る。
「今日は休みにしようかな? 大崎や寺越も、野球部全滅って言ってたし」
「野球部全滅、かぁ。で、新田は大丈夫と」
なんつう体力絶倫なんだと驚愕を露わにする教師。ただの野球部員だけではなく、監督兼任、リリーフも行い、勉強は常に学内トップ、さらに生徒会役員と、様々な二兎どころか五兎以上は追っている春馬。屈指のヘビーワーカーのはずであるが。
「そりゃあ、ちょくちょく授業をサボって屋上で寝てますし」
「自慢になってないぞ~」
内申書は辛うじて近江に勝るレベル。やはり授業サボりは成績への影響が大きいのだ。
「それに、重労働には慣れました。どこぞの生徒会長が仕事もろくにしないで副会長にすべて回してきますから。ほんと、子供は社会を写す鏡ってよく言ったものですよ。働く部下の手柄は無能な上司の手柄って」
「誰が仕事もしない生徒会長か」
教室中ほどの席から反論をしてくるのは、その仕事をしない生徒会長・南天海。
「だいたい、高校生って子供なの?」
「ふっ。腐った日本社会で本当に働いている大人たちに比べれば、僕らなんてまだまだひよっこさ」
「ねぇ、あんた何歳よ?」
さしずめ精神年齢14歳前後ではなかろうか。
「いやいやいや、そんなこと話している場合じゃなかった。早く授業に戻るぞ」
どれほどチームワークの無いクラスでも、教師の話が脱線したときの一致団結は何物にも勝るものである。
「って、だから野球部。寝るな」
「いや、だから僕は起きてますよ」
「に、新田以外、寝るな」
「おやすみなさい」
「いや、そっちの新田は起きろぉぉぉ」
授業終了後、春馬が他クラスに出張して授業担当教員に聞いてみたところ、やはり野球部は爆睡。猿政に至っては目を開けて寝ると言う、末期に突入していたようである。そのため新田春馬監督は、本日の練習を中止し、臨時休養とする旨を発表。
一方、試合前とは思えないこの判断に、近江キャプテンは自主練習を敢行。
これを近江母から知らされた春馬は頭を抱える事になる。
「どうしたんだ、近江。何のための臨時休養だ……」
―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――
1回戦から2回戦の間隔は、雨天中止、およびその翌日のグラウンド不良などの影響もあって、1週間と大きめであった。一方で2回戦から3回戦ともなると、チーム数は半減。試合間隔も半分程度となり、信英館戦の4日後には大野山南戦となっていた。
既に水曜日。大野山南との3回戦を明日に備えた蛍が丘高校は、ついに練習に本腰を入れ始め、夜遅くまで練習を――
「もう明日だな……」
「新田。本当にこんな練習でいいのかよ。なんだかんだで信英館には勝ったけどさぁ」
「バ~カ。試合前になって必死になったくらいで上手くなるかよ。本当に練習が足りないのなら、試合前じゃなくて、1年通じて練習量を増やさないと。ま、案ずるな。ここまで来ると大切なのは試合前の練習よりもコンディション調整だし、練習は時間じゃなく質だからな。だいたい、お前らこれ以上練習をしたらグッタリだろ。それはそうとこの前さぁ……」
するわけがなかった。むしろ教員の成績会議で午後から授業が無く、練習開始時間が前倒しとなったため、帰宅時間もいつもよりかなり前倒し。ここからは家に帰って、明日のために体調を整えるのみである。
「ねぇねぇ、ママ。おまつり行きたいなぁ」
「じゃあ、あとで行きましょうか」
「わ~い」
先日、近江の自転車が自身の打球直撃により小破。今日は徒歩通学との事で、彼女に合わせて自転車を押して帰っていた、春馬、楓音、最上の3人。その横を若い母親と、小学校低学年くらいの男の子が通過する。
「その時、マイクに言ってやったのさ。それはポークではなくビーフだと」
「え? アメリカンジョーク?」
「ジョークにもなってないだろ」
それを近江以外の3人は目もくれず、春馬はつまらないジョークを言い、楓音がツッコみ、最上はさらに冷たいツッコミを入れる。しかし近江は気になっていたようで、親子の会話を、後ろを振り返りながらギリギリまで盗み聞く。そして、聞こえなくなったところで、春馬の制服の袖を掴む。
「ねぇねぇ、春馬君。おまつり行きたいなぁ」
「そうか。じゃあ行ってくれば?」
「うぅぅぅぅ」
期待した答えではなかったため、さらに両手で制服を掴んで主張。
「ねぇねぇ、春馬君。おまつり行きたいなぁ」
「妹と行けば? 優奈だっけ?」
「あうぅぅぅ」
保護者会で手に入れた近江妹情報を使いつつ返すが、これも彼女の期待する応えではなかったようである。ついには春馬が自転車を押しているのも気にかけず、背後から春馬へ抱きつく。
「ねぇねぇ、春馬君。おまつり行きたいぃぃぃ」
「はぁぁぁぁ」
今月一番に長い溜息をもらす春馬。
「いいんじゃね? どうせ、新田も暇だろ?」
「明日は試合だぞ。家帰って休みたい。特に近江は休め」
「いやいや、新田。たしかに身体的な疲れはそれでいいだろうがな、精神的な疲れと言うものは、遊んで回復するものだ」
「ねぇねぇ。最上君もこう言ってるし、一緒に行こ?」
「な、近江もそう言ってるしな」
春馬に飛び乗り、彼の左肩の上から顔を出す近江。それに最上もさらに同調。
「最上。どうしてそんなに連れて行きたがるんだよ」
「だってさ、文化祭、楽しかっただろ。あの時と違って、新田は仕事があるわけでもないし。火事と喧嘩は江戸の華って言うだろ?」
「祭りはどこに行った?」
「とにかく行こうぜ」
もっともな事を言って、近江と共同で春馬を引っ張り出そうとする。すると、そこまで言われて春馬もついに折れる。
「分かったよ。ただ、明日も早いから、あまり遅くはいられないぞ」
「やったぁぁ。春馬君、大好き~」
頬を擦り付ける近江は、基本的に無視していく方向性。こうなると楓音も誘った方がいいかな? と感じ、彼女の方を振り向こうとしたものの、それよりも早く誘ったのは最上。
「楓音はどうする? 新田も行くって言ってるけど」
他の2人にばれないように、楓音へと下手くそなウインク。
「えっと……そ、それじゃあ私も」
そんな最上のあからさまな誘いに乗っかる。最上の手のひらで転がされ続けるのは、必ずしも敵チームだけではないようである。




