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囚着点(しゅうちゃくてん)
とても楽しい夢を見た
笑顔があって
どうしようもなく
光があって
分け隔てもなく
楽しい夢だった
誰もいない喫茶店
高い珈琲に口を付け
視線をあげれば店主が忙しそうに動いてる
苦味の良さがわからない
珈琲を一口
真っ白なミルクを垂らして
黄金色に変えていく
知らない女性が本を読み
知らない男女が談話する
椅子と机は十もあるのに
他には誰も
存在しない
楽しい夢を見た
楽しい夢だった
私が見たのは
何の夢だった
わからない
気が付けば
無機質な我が家
薄暗い灰色の
天井がこちらを見ている
邪魔な髪を
滑らして
私は今日も
夢を見る
これが夢の




