『俺の城』
築30年のアパート2階。
ここが俺の城だ。
水道局でなく水道は井戸水だから浄水器必須だし、
ガスはプロパンで金がかかるし、
真ん前にはマンションが建ってて陽射しも入らないけど、
角部屋で隣は階段があるため、騒音トラブルは一度もない。
ボロアパートだが気に入っている。
トイレと風呂が別だからな。
「さあ、はいって。」
「お邪魔します……」
女性はキョロキョロと部屋を見渡しながら中へ入る。
「なんか変なとこある?」
「いえ、男の人の家入るの初めてなので……ところでお名前は?」
「ははは、家に呼んどいて名前知らないのなんか変な感じだね。俺は青島 晃だよ。君は?」
「そうですね!大槻 沙夜です。……何で助けてくれたんですか?」
自己紹介する彼女は少し微笑んでいた
「いや、めっちゃ目が合ったから。とりあえずカップ麺でも食べる?」
「は、はい!ありがとうございます」
2人はそこで食事にした。
「ところでなんで帰るとこないの?その服装は研究所とかの服だよね?」
「……。」
「あれ?え?囚人?」
沙夜は一度躊躇ったが、話をしてくれた。
「……いえ、実は逃げてきたんです」
「どこから?」
「それは……」
と言葉を詰まらせた。
「話したくないならいいんだけどさ」
「……研究施設です」
「なんの?」
「……えっと。」
少し間を置いて、
「……超能力です」
俺はカップ麺を食べる手が止まった。
「超能力?映画に出てくるような?」
「……はい」
「へ、へぇー、そうなんだ」
(あー、わかった!この子不思議ちゃんだな?)
「じゃあ、このコップ動かしてみて」
やってみろぃってテンションで聞いてみた。
「はい」
意外にも素直に頷き、沙夜は目の前のコップに集中した。
(ほんとだとしても、せいぜい少しカタカタ動いて終わりかな……)
そう思った、その瞬間。
コップがゆっくり浮く。直後、チカチカと電灯が明滅した。
「え?え……?」
目の前の光景が信じられず情けない声が出た。
そして、キーンと耳鳴りがしたかと思ったら、次の瞬間
メキッ、ミシミシ……
ガラスのコップなのに割れるでなくアルミホイルを丸めるように丸くなった。
ビー玉サイズに……
そして、ことりと音を立てて机に転がった。
「す、すみません!手加減したんですが、コップ駄目にしちゃって」
「いや、いいよ。す、すごいね。どうやったの?」
「浮かせるつもりで念じたんですが、加減が難しくて……」
ほんとは叫んで逃げたかったが、この現象以外は至って普通の女の子だったからなんとか踏みとどまった。
「と、とりあえず新しいコップ出してくるね」
そう言って俺は逃げるようにコップを取りに席を離れた。
(あれが人だったら……どっちかと言うと暴漢の方を助けたのかもしれないな……)




