『訳あり少女』
西暦2145年
環境破壊が進み、冬に雪が降らなくなった。
「暑い……」
俺――青島 晃、日本警備の東京支社の警備員だ。
治安悪化で警備員は拳銃が必須だ。
たまに起こる銃撃戦で死者も出る。
特に、うちの現場は危険な仕事が多い。
一応、銃撃戦に巻き込まれた場合は危険手当を与えられるが……
「今日は2人か……ご遺族に連絡しなきゃ……」
ホログラムを操作しながら2人にバツをつける。
遺族の涙は本当に胸に来る。
現場で拳銃撃ってた方が楽だ。
(俺、ほんとは福祉がやりたかったんだけどなぁ)
仕事が終わり外に出る。
3月の夜なのに蒸し暑く、うっすらと汗をかく。
「夕飯めんどいなぁ、コンビニでいいか……」
この時代治安は最悪。
コンビニは防弾ガラスで仕切られている。
扉に手をかけると、横の壁に血の手形がついていた。
気にせず中に入ると、気だるそうな茶髪の学生が抑揚なく
「いらっしゃっせー」
と、無表情のおもてなしをしてくれる。
俺はカップ麺と護身用の拳銃の弾丸を買った。弾丸はタバコと同じ料金。
でも弾丸ないといざと言う時危ないしなぁ。
高いなぁ。
外に出るとデモ隊と警察がドンパチやってる。
「君子危うきに近寄らずだな」
俺はその通り道を避けた。
俺はよく首を突っ込んで痛い目いっぱい見てるから、そろそろ学習しないとね。
しばらく歩くと、悲鳴が聞こえた。
振り返ると、若い女性が男たちに絡まれており、女性とばっちり目が合う。
目が助けてと雄弁に物語っている。
「これは、さすがに……行くかぁ……」
結局、首を突っ込むんだなぁ
俺は男達に近づき、声をかけた。
「すみません、駅ってこっちで合ってますか?」
「なんだこいつ?」
男はナイフを持ってフラフラしていた。
目が普通じゃない。
薬物?電子ドラッグかな?
男は急に襲ってきた。
俺は躊躇わず眉間に弾丸を叩き込んだ。
次に照準を定めようとしたら……
その必要はなかった。
男達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
俺は人を撃ったことでドバドバ出てるアドレナリンを抑えて、息を吐いた。
「ふー……」
震えてうずくまってる女性を怖がらせないように声をかける。
「大丈夫?」
「はい……」
女性は研究所か囚人みたいな服装で、ところどころ破れていたので俺の上着を着せてやった。
「ありがとうございます……」
女性は声を振り絞った。
「女性がこの時間出かけるのは危ないよ」
「はい……でも、帰るとこなくて……」
この子、全っ然目が合わない!
「家出……じゃなさそうだね。役所には行った?」
「いえ、役所には行けないんです……」
(訳ありだよなぁ……でも、悪い子には見えない)
「そっか、じゃあうちの会社泊まる?シャワーと寝床あるよ」
「え?大丈夫なんですか?」
「――あ、よく考えたらダメだわ。部外者入れたら俺今度こそクビになっちゃう」
「……ですよね」
俺はしばらく考えた後、
「警察で保護してもらう?」
「警察は……ちょっと」
と、俯いた。
このまま放っとくのも心配だなぁ
「うーん、じゃあうち来る?狭いけど」
半ば冗談で聞いたら、
女性は顔を上げ
「……いいんですか?」
と、初めて目が合った。
期待の眼差しに冗談だよ。とも言えず
「大丈夫だよ。ただ狭いからね」
「はい……」
「じゃあ着いて来て、ここからなら近いし」
女性は大人しく……というか無言で俺の後についてきた。




