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我が覇道を讃えよ ~尊大不遜な元傭兵、辺境で勝手に建国して成り上がる~  作者: エノキスルメ
第一章 我は王である

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第四話 盗賊団討伐②

 突撃するエドウィンたちに対して、盗賊たちの反応は鈍かった。屋内にいる住民たちの抵抗を受けながら、木板で補強された扉や窓、あるいは壁そのものを破壊しようと武器を振り回していた盗賊たちは、背後に鬨の声を聞いて振り返り、精強そうな武装集団がいきなり迫ってくる様を見て動揺したのかその場で硬直する。

 隊列を組むこともせず、それどころか武器を構えることさえ間に合わない盗賊たちに、エドウィンと配下たちは容赦なく襲いかかる。

 これまで訓練を重ね実戦を経験してきた元傭兵たちにとって、戦いの素人ばかりの盗賊など敵ではなかった。動揺して逃げ腰になった盗賊たちは、次々に仕留められていく。

 エドウィンも、目についた盗賊を一方的に屠る。戦いもせず逃げ惑い、目の真を横切ろうとした邪魔な盗賊の顔面に戦斧を叩きつける。まったくの無抵抗で戦斧の一撃を食らった盗賊は、血と肉片をまき散らしながらひっくり返るようにして倒れ、そのまま動かなくなる。


「はははっ! 弱い弱い!」


 背はあまり高くなく、身体の線は細く、配下たちと比べて肉体的に精強とは言えないエドウィンだが、子供の頃から父とその側近たちに鍛えられ、水準以上の戦闘力は持っている。傭兵時代は雇い主やその荷を守るために、盗賊や害獣と戦ったことも一度や二度ではない。こんな、戦いとも呼べない戦いで怖気づきはしない。


「若様! 館の扉が開いてます! 盗賊どもが入り込んだようです!」


 護衛として傍についてくれているジェラルドに言われ、エドウィンは農場主のものであろう館の方を向く。エドウィンたちが農場への突撃を敢行する直前に守りを突破されたのか、彼の言葉通り扉が開いていた。


「外の戦いはサベルトたちに任せて、僕たちはあの館に突入しよう! せっかく農場を救うために参戦したのに、農場主に死なれたら損だ!」

「了解です!」


 ジェラルドを連れ、開け放たれた入り口から館の中に飛び込むと、そこは広間だった。中には盗賊が五人おり、農場の住民たちが襲われていた。若い男が二人と中年の女性が一人。明らかに劣勢の様子で、怪我をしている者もいる。


「あぁ? 何だお前ら?」


 入り口近くにいた盗賊が振り返り、怪訝な表情を浮かべる。口ぶりからして、彼らは外で仲間が奇襲されていることにまだ気づいていない様子。


「おい、こんな奴ら仲間にいたか――」


 他の盗賊たちに呼びかけようとしたその盗賊を狙い、エドウィンは無言で戦斧を投擲。戦斧は回転しながら、盗賊の胴体へ吸い込まれるように飛んでいく。

 胸のど真ん中に戦斧が突き刺さった盗賊が、表情を驚愕に変えて床に倒れるよりも早く、エドウィンはもうひとつの武器である剣を抜く。その間にエドウィンの傍らから躍り出たジェラルドが、まともに反応する隙も与えずに別の盗賊を斬り殺す。

 エドウィンは残る三人の盗賊のうち、中年の女性を襲っていた男へ迫る。手にした薪割り斧を咄嗟に振り上げた盗賊との距離を詰め、振り下ろされた薪割り斧を円盾で受け止める。

 斧の刃が突き刺さって食い込んだままの木製の円盾を放り捨て、武器を失って無防備になった盗賊の横腹を切り裂く。その盗賊は傷口から臓物を溢れさせながら、その場に頽れる。

 残る二人の盗賊の方を横目に見ると、一人は既に地面に倒れ、虫の息。もう一人もジェラルドに追い詰められ、間もなく仕留められそうだった。

 広間の脅威は排除された。エドウィンがそう思い、剣を下ろしたそのとき。


「奥に! 奥にお嬢様が! そっちにも盗賊が!」


 そう叫んだのは、エドウィンがたった今助けた中年の女性だった。エドウィンは剣を握る手に再び力を籠め、広間の奥、農場主一家の私的な空間に繋がっているのであろう扉へ走る。

 広間と繋がる部屋には誰もいない。そのさらに隣の部屋に飛び込むと、そこには一人の盗賊と身なりの良い女性がいた。女性は部屋の奥側で床に座り込んで顔を伏せ、神々にでも祈っているのか胸の前で手を組み、震えている。

 こちらを振り返った盗賊は、背は低いが体格は良い。不敵に笑って斧を構え、腕っぷしに自信がありそうな態度を見せる。重心の安定した動き方からして、確かに多少の戦闘の心得がありそうだった。

 試しにエドウィンが攻撃を仕掛けると、その盗賊はなかなかの動きで防いでみせた。が、直後に攻撃を仕掛けるふりをすると、あまりにも簡単に引っかかった。

 こちらと同じく元傭兵か何かか。しかし実力は大したことない。エドウィンがそう考えながら剣を一閃すると、隙だらけになった盗賊の手元、右の手首から先が斧ごと斬り飛ばされる。


「なっ! おい、待っ――」


 利き手と武器を失った盗賊は、あっさりと戦意を失った様子。エドウィンは待つことなく、盗賊の喉に向けて、両手で構えた剣を鋭く突き込む。咄嗟に急所を守ろうと左手を掲げた盗賊の、その手のひらごと首を貫く。


「ぐえっ!」


 間抜けな声を上げた盗賊の首から剣を引き抜くと、面白いほど大量に血が噴き出し、その盗賊は倒れた。

 今度こそ終わった。ふう、と一息吐き、エドウィンは女性の方へ向き直る。

 戦闘の音が聞こえたからか、女性は今は顔を上げていた。驚きに目を丸くして、エドウィンの方を見ていた。

 美しい金髪と端正な顔立ちが印象的な、大人びた雰囲気の女性だった。胸の前で組まれた手には短剣が握られ、刃は彼女自身の方を向いている。盗賊たちから凄惨な暴行を受けて殺される前に、自ら命を絶とうとしていたのか。

 まだ若く未来ある女性が、そんな悲しく残酷な最期を迎えずに済んでよかった。エドウィンはそう考えながら、微笑を浮かべて片膝をつき、剣を床に置く。


「お嬢さん。怪我はないかな?」


 彼女に手を差し伸べながら、エドウィンは言った。危機に駆けつけた救世主を上手く演じられているといいのだが。

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