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我が覇道を讃えよ ~尊大不遜な元傭兵、辺境で勝手に建国して成り上がる~  作者: エノキスルメ
第一章 我は王である

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第三話 盗賊団討伐①(世界地図/アロナ島地図あり)

挿絵(By みてみん)


エルシオン大陸西部の大まかな地図です。

大陸と主要な島のみ描いていますが、他にも多くの島嶼がある設定です。



挿絵(By みてみん)


アロナ島の大まかな地図です。島内の水色の線は主要な河川を表しています。

この地図上では描写されていませんが、島内には大小の森や丘陵、山岳、河川や湖が数多くあります。


しばらくはエドウィンが上陸した島の南西部の南側(ティリス川以南)が主な舞台となります。

 ロドニア帝国が領土内に広めた統一暦で言うところの、四〇八年の夏。アロナ島南西部の、さらに南端の辺りに、三隻の船が辿り着いた。

 いずれも幅は四メートルほど、長さは十五メートルほどの、細長い船体が特徴の輸送船。三隻は喫水の浅さを活かし、河口から川を遡上して島の内陸部へ入る。


「世界の北西の果てだなんて言われているから、どんなところかと思っていたけど……案外、景色は本土の北部と大差ないものだね」


 先頭を進む船の中央に座って進行方向を眺め、風に髪をなびかせながら、エドウィンは呟くように言う。無事に辿り着いた新天地を見回しながら、楽しげに微笑を浮かべる。

 川の周辺の地形には多少の起伏があり、大小の森が点在している。島の他の場所がどのような地形をしているかは分からないが、少なくともこの辺りは帝国北部とそれほど変わらない、住みやすそうな土地だった。


「それで、どこまで進みますか?」

「とりあえず、このまま進めるところまで進みながら人里を探そう。この辺りは土地も豊かそうだし、すぐに村か農場が見つかるさ」


 船の中央の帆柱に掴まりながら傍らに立つジェラルドに、エドウィンはそう答える。


「食料もあまり余裕がないし、早いところ支配域を確立しないとね。せっかく全員無事に島に着いたんだから、皆揃って野垂れ死にするような事態は何としても避けないと」

「一応、船旅の途中で二人死んでますが」

「はははっ、あいつらは数に含めなくていいさ」


 大陸西部を離れ、アロナ島で国を作って王になる。そう決心したエドウィンは、まずは共に島へ向かう仲間を集めた。これまで率いてきた傭兵団の配下たちに今後の計画を説明すると、二十人ほどがこのままエドウィンに付き従うことを決意してくれた。

 さらに、他のキラケス人傭兵たちを勧誘すると、話に乗る者もいた。結果、エドウィンのもとには総勢で四十人ほどの戦力が集まった。

 傭兵は独身者が多いが、一部の者には妻や子もいる。エドウィンが率いる集団は、女性や子供も含めて七十人ほどの規模となった。

 人を集めたエドウィンは、次にアロナ島へ渡るための足となる船を用意した。幸いにも現在の帝国北部では多くの商人が逃げる準備を進めており、彼らは運びきれない財産や今後不要になる仕事道具を現金化したがっていた。エドウィンはこれまでの雇用主だった商人たちとの伝手を利用し、帝国北部の沿岸部や河川での物資輸送に使われていた船を三隻、安く買うことができた。

 傭兵たちと同じようにエドウィンの話に乗った船乗りを何人か仲間に加え、水や食料、島への入植に必要な道具を買い集め、天気の良い日に出航。大陸北部とアロナ島は距離自体はそれほど離れていないため、風にも恵まれ、翌日の早朝には島を視界に捉えた。


 海峡を北西に進んだ三隻が辿り着いたのは、島の南東部。エドウィンはそこから海岸線に沿って移動し、島の南西部へ向かうよう船乗りたちに命じた。

 大陸と近いアロナ島南東部は人口密度が高いそうなので、手勢が四十人程度では己の支配域を築くのに苦労するかもしれない。また、人口が多ければ、自分と同じようなことを考えて早々に支配域を築く者が現れる可能性も高まる。そうした者たちと鉢合わせして衝突しないためにも、最も上陸しやすい南東部は避けたい。

 かといって、島の北部は人口が相当に少ない上に、いずれ大陸西部と交易などを行う際に距離が遠くて不便。となると、大陸西部から遠すぎず、人口が多すぎず少なすぎない南西部の辺りに入植するのが最善。

 そのような考えのもとでアロナ島南西部を上陸地点に定めたエドウィンは、砂浜から険しい岸壁まで多様な地形が入り乱れる海岸線の中に、それなりの幅のある川の河口を発見。そこから内陸部へと遡上するよう命令を下し、現在に至る。


 航海の最中、死者が二人発生した。よその傭兵団出身の馬鹿な男たちが「あんな若造は殺してしまって、あんたがアロナ島で王になればいい。あんたを支持するから側近にしてくれ」とジェラルドに持ちかけ、直後に二人とも彼の短剣で首を切り裂かれて殺され、海に捨てられた。

 エドウィンに付き従って海にくり出した集団のうち、元傭兵の戦士は四十二人。二人死んだことで、残りはちょうど四十人になった。古くからの付き合いの者たちはもちろん、よからぬことを考えた者がどうなるかを目の当たりにしたその他の配下たちも、今後裏切る可能性は低い。その点で言えば、エドウィンは見せしめになった二人に感謝している。


「若様! あっちの方、木柵と建物が見えましたよ! 村か農場があるみたいだ!」


 しばらく川を遡上した後。エドウィンたちが乗る先頭の船、その船首の辺りに立っていた配下――ジェラルドと並んで亡父の代からの側近格であるサベルトが、左前方を指差しながら言った。


「おまけに、なんだかやばそうな雰囲気ですぜ! 武器を持った連中が攻め込もうとしてるみたいだ! ありゃあ多分盗賊です!」

「サベルト、報告ご苦労……本当だ。襲撃されそうになっているね。相手はなかなかの規模の盗賊団らしい」


 自身も船首の方へ進み出たエドウィンは、サベルトの指差す先を見据えて言う。

 そこにある人里は、木柵に囲まれた中に木造の館やいくつもの家屋が集まっているようで、その周囲には農地が広がっている。おそらくは中小規模の自作農家が集まる村ではなく、ひとつの地主家が支配する農場。館が農場主たる地主の住居だろうとエドウィンは推測する。

 その人里の北東側、川を北西方向へ遡上しているエドウィンたちから見れば右手側に、盗賊と思しき武装した集団が今まさに迫っていた。ここからでは距離がある上に、川沿いの木々が邪魔をしてよく見えないが、総勢で数十人もいるようだった。


「上陸しますか? それとも、見なかったことにして通り過ぎますか?」

「……上陸しよう。あの人里に近づき、様子を見た上で、可能なら盗賊を撃退する」


 ジェラルドに尋ねられたエドウィンは、少しの思案の後にそう答える。その顔には不敵な笑みが浮かぶ。


「上手く盗賊を追い払ってあの人里を守ってやれば、僕たちは正義の味方、住民たちにとって命の恩人だ。これからも庇護する代わりに服従しろと言えば、きっと素直に承諾してくれる。僕の国を作る上で重要な第一歩になることだろう……さあ、船を川岸に寄せるんだ」


 後方の船にも上陸命令が伝えられ、三隻は川岸に寄って停止。非戦闘員である女性や子供と、その護衛と船の見張りを兼ねた十人ほどの兵力を上陸地点に残し、残る三十人はエドウィンと共に移動を開始する。エドウィンは武器と円盾に加え、極めて高価な装備である鎖帷子を身につけ、配下たちを率いて急ぎ人里へ向かう。

 エドウィンたちが人里に辿り着くと、既に盗賊による襲撃が始まっていた。


「おお、もう木柵がぶち壊されてらぁ。こりゃあ大して時間もかからずに家の中まで攻め込まれて全滅するだろうな」

「もし俺たちが助けに入らなければな」


 襲撃の様子を観察し、サベルトとジェラルドの会話を聞きながら、エドウィンは考える。

 館と家々を囲んでいる木柵は、大した高さはなく、さして頑丈そうでもない。少数の盗賊に侵入を諦めさせる程度の抑止力にはなっても、本格的な襲撃を阻む防壁になるようには見えない。

 実際、木柵は既に一部が破壊され、盗賊たちの突破を許している。その向こうでは、どうやら建物の扉や窓も木材か何かで塞がれているらしく、盗賊たちが屋内への侵入に手こずっている様子が柵の壊れた部分や隙間から見える。

 木柵と、補強された扉や窓。戦いの知識などないであろう農民にしてはなかなか防衛の用意が周到だと言えるが、とはいえこの状況では、サベルトの言う通り全滅するのも時間の問題。


 人里の規模はなかなか大きい。農地の面積や家屋の数からして、抱える農民の数はおそらく百人近い。大陸の帝国北部の村や農場と比べても立派なもの。家々は土地を持たない小作農が住んでいるのであろう質素なものばかりで、館の大きさが際立っている。やはりここは裕福な地主の所有する農場であるようだった。

 これだけの大農場の主となれば、それなりに裕福である可能性が高い。だとすれば、最初に支配下に組み込んでしまえば、今後の支配域拡大を大いに助けてくれるはず。

 盗賊の数は、多くても五十人程度といったところか。数の差はあるが、兵力の質の面ではこちらが数段上のはず。おまけにこちらは盗賊たちの後ろから急襲するかたちになるので、まず間違いなく勝てる。損害はほとんど出ないだろう。


「若様、どうします?」

「……参戦しよう。この農場の救世主になってやろうじゃないか」


 ジェラルドに問われたエドウィンは、薄く笑みながら答える。


 アロナ島に到着して早々に、盗賊に襲われている大きな人里を発見。盗賊を撃退すれば、自分たちは正義の味方として住民たちの前に登場することができる。こちらにとって実に都合の良い展開と言える。

 これはきっと、神々がこの好機を掴めと言っているのだ。勇気を出して大陸を離れ、一世一代の挑戦としてこのアロナ島に渡った自分に、神々が好機という褒美を与えてくれたのだ。

 自分はこの地に支配域を築き、国を建てることを運命づけられているのだ。きっとそうだ。そうに違いない。

 己にそう言い聞かせ、気分を高揚させながら、エドウィンは得物である戦斧を掲げる。


「さあ、戦士諸君! 我に続け!」

「聞いたなお前ら! 突撃するぞ! 若様に遅れるな!」


 高らかに言ったエドウィンが戦斧と円盾を構えて駆け出し、その傍らに続きながらジェラルドが叫ぶ。配下たちも鬨の声を上げながら二人の後を追う。

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― 新着の感想 ―
ヨーロッパ的な地形で、立地的にはゲルマンと中東から攻められる大きめのローマ帝国みたいな感じかな? グレートなブリテンで彼は王になれるのか 楽しみだね!
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