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我が覇道を讃えよ ~尊大不遜な元傭兵、辺境で勝手に建国して成り上がる~  作者: エノキスルメ
第一章 我は王である

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第十六話 建国宣言①

 アイヴァー川下流域の西側を完全に支配下に置いた二週間後には、館の改装と玉座の製作も完了した。

 これらの準備に関しては、実際に仕事をしたのは支配域に住んでいる木工職人たちだった。エドウィンは彼らに銀製の装飾品や家畜などを報酬として気前よく提示し、最優先で、大急ぎで製作に取り組むよう命じた。すると職人たちは――おそらくはエドウィンに対する恐れもあって――仕事に励み、エドウィンの期待に応えてくれた。

 エドウィンが配下たちと共にアロナ島に辿り着いてから、一定の支配域を確立して王になる準備を整えるまでにかかった時間は、僅か一か月ほどだった。


 そして、建国と即位の儀式が行われる当日の朝。エドウィンはクレアと共に、すっかり二人のものとなっている私室のベッドで目覚める。


「……いよいよ今日ですね、エドウィン様」


 クレアはエドウィンの方を向き、微笑む。エドウィンは彼女に微笑を返し、頷く。


「ああ。今日からこの地はリンダム王国となり、僕は初代国王エドウィン・リンダムになる。王の称号を我が物とするんだ。なんと喜ばしいことだろう」

「私も、まるで自分のことのように嬉しいです……リンダム王国、何度聞いても本当に素敵な響きですね。馴染みのある地名なのに、エドウィン様の治められる国の名前として聞くと、とても壮大で優雅な響きに感じられます」


 そう言いながら、クレアは一糸まとわぬ肢体をエドウィンに絡める。

 このアロナ島南西部の南端辺りの地域は、帝国支配よりも前の時代から、リンダムという地名で呼ばれているという。

 この地名の優雅で凛とした響きを大変気に入ったエドウィンは、この地に暮らす民も昔ながらの地名がそのまま国名となった方が国や王への愛着を持ちやすいだろうと考えたこともあり、己の国をリンダム王国と名づけることを決めた。


「これほど素晴らしい名を持つ地に辿り着いたことも、やはり神々の導きだ……これから偉大な国を作り上げることで、リンダムの名をアロナ島全体に、そしていずれは大陸にまで知らしめてやろうじゃないか」


 エドウィンはクレアの頬を撫でながら語る。クレアは嬉しそうに頷き、エドウィンの胸に頭をすり寄せる。彼女の透明感のある金髪からは、薔薇の良い香りがした。


「……クレア」


 エドウィンは愛する女性の名を呼び、彼女に覆いかぶさる。

 今日、自分は野望を叶え、王になる。その事実を前にしながら、クレアの肢体の柔らかさと髪の香りを感じると、身も心もひどく滾った。


「……」


 クレアは驚きに目を丸くして、同時にどこか期待するような恍惚とした表情で、頬を赤く染めてエドウィンを見上げる。エドウィンはそれ以上何も言わず、彼女を抱き締め、口づけする。クレアも何も言わずにそれを受け入れる。

 昨夜、愛を交わしたときのままの姿で、二人は再び肌を重ねる。


・・・・・・


 朝からクレアと官能的なひとときを楽しみ、いつもより少し遅くベッドを出たエドウィンは、儀式の準備にとりかかる。まずはドーラが持ってきてくれた桶のお湯で身体を丁寧に清め、綺麗に洗濯された服を着て、装飾品を身に着ける。

 化粧などもあるクレアよりも先に身支度を終えて広間に入ったエドウィンは、最側近であるジェラルドに己の装束を披露し、得意げな顔になる。


「どうだい? それらしく見えるかい?」


 服の上から鎖帷子を纏い、腰には剣と短剣を帯びている。これから戦うわけでもないのに鎧と武器を身に着けているのは、王とは領土と民を守るために戦う者であり、軍装こそが正装であると考えたため。

 そして全身を、装飾品で飾っている。一部は元々所有していたもので、残りは討伐した盗賊団が掠奪品として持っていたのを戦利品として頂戴したもの。首飾りや腕輪や指輪など、いずれも銀製で、中には宝石が埋め込まれているものもある。

 さらに、肩にはマントを羽織っている。元はクレアの父が着飾る必要のある場面で纏っていたというマントは、縁に凝った模様が施され、なかなかに立派なもの。右肩でマントを留めるブローチも、やはり銀製。大きな柘榴石が中心を飾る、戦利品の中でも最も見事な一品。

 アロナ風の装飾品とマントを纏うことは、キラケス人でありながらアロナ人を支配し庇護する王にならんとするエドウィンの決意、アロナ人に同化して生きていく意思を示している。

 これが、建国と即位の儀式に臨む上でエドウィンが選んだ装いだった。


「いいじゃないですか。誰が見ても偉い人間だと分かりますよ。その格好で王様を名乗れば皆が納得するはずです」

「はははっ、それはよかった。本音を言えば金の装飾品で着飾りたかったけど、手元にないものは仕方がないからね。国を大きく育てながら手に入れることにするよ」


 エドウィンは自身の手元に視線を向けながら、苦笑交じりに言う。

 アロナ島南西部の端では最高級品である金の装飾品を持っている者は滅多にいないようで、盗賊団の掠奪品の中には銀や青銅、鉄や真鍮の装飾品しかなかった。クレアの父は金の指輪を一つ持っていたそうだが、用心棒の生き残りが夜逃げをする際に持ち去ったという。


「……父を越える偉大な人間になる。ひとまずその夢には辿り着いた。ある意味ではここからが本番、どこまで上り詰められるかの挑戦になるが、とはいえまずは大きな第一歩だ。ここまで来られたのもジェラルド、君の助けがあったおかげだ。感謝しているよ」


 そう言って、エドウィンはジェラルドに優しい笑みを向けた。

 エドウィンが生まれる前から傭兵をやっている熟練の戦士であるジェラルドは、その経験を活かし、アロナ島へと移り住む準備において実務の面で多大な活躍をしてくれた。島へと渡る船の上では不穏分子を抹殺して新参の配下たちを素直にさせ、盗賊団討伐の際はエドウィンを傍で守りつつ補佐し、以降も戦士たちの筆頭として、エドウィンの最側近として、様々な場面で多くの役割を果たしてくれている。

 ジェラルドの能力と忠誠心がなければ、自分はこの日を迎えるまでもっと時間を要していただろう。あるいは、この日を迎えることができなかっただろう。そう思っているからこそ、父親ほどの年齢の配下へ、礼儀として率直に伝えた。


 主人の言葉に対し、ジェラルドは照れ隠しのつもりか、下手な笑みを零す。


「恐縮なことで。ですがやはり、ここまで上手くやったのは若様のお力でしょう。親父さんが今の若様を見たら、随分と立派になったと喜びますよ……若様を若様と呼ぶのも、いよいよ最後になりますか」

「はははっ! そのあだ名は気に入っているんだ。身内や側近たちしかいない場では今まで通りに呼んでくれて構わないさ。そうでないと寂しいじゃないか」


 エドウィンは上機嫌に笑いながら言うと、そのままジェラルドを伴って館を出る。配下たちにも自身の着飾った姿を見せ、儀式に立ち会うために来訪した各人里の代表者たちを歓迎するために。

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