協奏曲第一部
ここから始まる
夕暮れの西日が差し込む、とある街の中央大神殿にて。
神殿中心部に設けられた大規模な教会の天井から下がる、12色の旗の下。
内陣内には、6人の司祭が己が旗の下に立っている。
「司祭ジネヴラ、報告を」
黒と赤でグラデーションのように染められた旗の下に立つ司祭が言い放つ。
これに応えるのは黒一色の旗の下に立つ司祭。
「アンダレヴェルトの枝に生る最後の実は落ちた。なるべく大きく、甘く熟すよう手をかけたが、空を駆ける者どもにあっさりと食われてしまった」
「狩ったのは」
「今回も剣三つ目。ただ、もう一匹いたようだ。ほぼそちらに食われてしまった」
「一層か」
「いや、恐らくは二層だろう」
「上質な実ではあったが、その程度だったか」
青白の旗の下に立つ司祭がぽつりとつぶやく。
「して、もう一匹の詳細は」
これに黒の旗の下に立つ司祭が応える。
「不明。目に見える異能ではなかった・・・ただ」
青白の旗の下に立つ司祭がその先を促す。
「申せ」
「時の経過と共に最適化されていくような体捌きだった」
「・・・なるほど。影に潜んでいたのだな」
「ああ。状況によっては不意打ちで仕留めるつもりだったが、恐らく剣三つ目に勘付かれていた」
「それで実を食わせている間に戻ってきた・・・と、顛末はそのようなことだな」
「そうだ。二層の男もかなりの手練れだった」
「その男の力は、最適化や適応、学習といったものかもしれぬな」
朱色の旗の下に立つ司祭がその言葉を繋いだ。
「私もそう考える。少なくとも、我らの知識にない者だ」
黒の旗の下に立つ司祭は小さくうなずいた。
「果実は踏みつぶされたのではなく、我らに情報をもたらしたということか」
「いずれにせよ」
黒と赤の旗の下に立つ司祭が言葉を放つ。
「これでアンデレヴェルトの枝は、その果実の全てを失い、我らが祝福の日はまた一歩遠のいてしまった。次の果実が生ることを待たねばならぬ。アーシェの回収にもまだ時間がかかる。これまでの傾向を考えれば、空の魔物たちは狩りの手を止め、軍靴を鳴らし蹂躙を始めることだろう」
司祭は”もうない方”の左目を隠し、右手を突き出した。
「ミュラー、ラハユ、アルフレッドが倒れ、ジョゼ、アンナ、アラタはまだ暫くは戻らぬ。空を駆ける者どもの軍靴を止められるのは我等のみ。各司祭は教徒たちをまとめあげ、防衛に専念する準備を。倒れた兄弟の子供たちは、リュウ、スガワラが導くように。フランチェスコは結界の確認と補強を進めよ。ジネブラは奴らの動向を監視せよ。ヨルンは引き続き勤めを果たせ」
「御意」
カツン、司祭の革靴が床に当たる音が一斉に上がった。
ここから終わる




