狩猟①
日常
2022年7月28日 神奈川 午後4時00分
日が傾きかけてきた午後四時、二童町は夕日に照らされ空を紅色に染める。
買い物に出かける主婦達の立ち話や、はしゃぎまわる子供達で、商店街にはいつもの活気がやってくる。
洒落たテラスで午後の退屈な時間を過ごしている人。
大型スーパーの午後のタイムセールに走る人。
日も落ちて涼しくなった空の下を散歩する人。
いつもの平和な日常。
そして、商店街屋根上。
人などいるはずもない、そんな場所には、年も背格好も違う4人が平和な町を見下ろしている。
その中、長いストールの様なものを巻いた女の言葉。
「散開」
その一言で、明日も明後日も続くであろう、二童町の平和に終止符が打たれるのだった。
2022年7月28日 神奈川 午後4時12分
女は、静まり返った住宅街をうっとりとした目で見つめていた。
その視線の先、背後には音もなく付き従う黒い衣服の者たちが控えている。
「あと、九千八百」
彼女は小さく、愛おしそうに呟いた。
その瞬間、女の肉体が不自然に収縮し、脈動した。
彼女の骨格と筋肉のバランスが強制的に組み替えられていく。
女が軽く地を蹴った。
次の瞬間には、一軒の民家の引き戸が音もなく両開きに割れていた。
ガッ!と短い破壊音が響く。
女の動線上にあった障子も、柱も、そして布団の中で眠っていた住人の首も断ち切られていく。
そして後に続く黒い衣服の者たちがその死体をズタ袋の様なものに入れて運び出す。
「あぁ……ハンス様……」
女は、返り血すら浴びない無機質な動きで、隣の民家へと滑るように跳んだ。
一歩進むごとに、彼女の肉体は変動し続ける 。機械的な蹂躙。
悲鳴が上がる隙すらなかった。
ただ、夜風に混じって、肉と骨が効率よく両断されていく音だけが、二童町の住宅街に響き渡っていく。
一軒、また一軒。
積み上がっていく死体の数は、日が落ちる頃には二百を容易に超えようとしていた。
日常-200




