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神曲  作者: もてぃまー
19/19

序曲第五部

来賓一覧

月明りの差し込む、とある街の神殿にて。


(やぶにらみ) カ次郎(かじろう)、死因は頭部の平行切断による致命傷。右腕も肩口から切断されていた。頭部、肩口ともに非常に滑らかな切断面だった」

「・・・」

「登録名なしの男、死因は首・両腕・両脚の切断による失血死。いずれも非常に滑らかな切断面だった」

「・・・っ」

須藤(すどう) 伊織(いおり)、死因は頭部の縦切断による致命傷。左脚は膝から切断され、右手指は5本とも切断、左腕は手首が切断されていた。いずれも非常に滑らかな切断面」

「うっ・・・」

小野夢(おのゆめ) 佑仟(ゆうぜん)、生死不明。塔の下に放置されていた死体は3名分のみ」

「そう・・・ですか・・・」

吶々(とつとつ)とした調子で(こう)は短く呟き目を伏せた。


「塔は上層階外壁が激しく崩れていたことを観測者(スカウト)が確認している。かなり派手に戦ったようだ。あの建造物は平凡な能力者の力では破壊出来ない」

「ということは、相手はかなり強い力を持っていた。ということですか」

「・・・あるいは。対峙した者たちの力か」

「彼らには失礼ですが、そこまでの力があるとは・・・」

「あくまで推測の域は出ない。その上で考察するのであれば、自軍施設を破壊する程の力を行使しなければならない状況だったとは考えにくい」

「なぜですか?」

「先ほど申し伝えた3名の死体は(いず)れも刃物による切断だった。また、それぞれの身体を見るに接戦とは程遠い、順序立てたような損傷具合だった」

「・・・なるほど、確かにそうであれば建物を壊す必要はないですね。小野夢さんの死体が見つかっていない。ということは、不懐(ふかい)の建物を壊すほど強力な力を使って敵を返り討ち、あるいは撤退に追い込んだのではないか、と」

顔を上げた功だったが、それに対する返答は数秒遅れて返ってくる。


「・・・いや。これも推測だが、それもないと考える」

「それは・・・?」

「貴様がいなかったとは言え、仮にも五光として呼ばれた者たちを。恐らくは単独で圧倒したこと。死体の損壊がすべて鋭利な切断面だったこと。戦場において極めて重要となる塔を守護していたこと」

カツン、カツンとヒールを鳴らしながら対峙する女は腕を組みながら机に向かって歩き出す。


そこに置かれた一枚の羊皮紙(ようひし)を取り上げ、功の前に戻ってくる。

押し付けられたそれに目を通すと。

「これは・・・組織図・・・ですか?」

「そうだ。我らが敵、空を駆ける者どもの、な」


功はここで不思議な感覚を覚えた。

そも、このよくわからない世界の言葉が日本語として通じることに違和感をずっと覚えていたが。

文字までも日本語で記載されていることに。

「これは名前ですか?肩書き?」

「さぁな。誰が言い出したのかも不明であり、我等も個体識別以上の理由を求めていない」

「この一番最初に登場している”大火”というのが敵方のボスということですか?」

「そう言われている。だが誰もそれを見たものはいない」

「正体不明のボスということですか・・・戦争と死・・・えっとじゅりょう?呪猟の祝福・・・剣三つ目(けんみつめ)・・・愛の戦い・・・愛?・・・等しく与える者・・・」

「それらが実質的な頂点だ」

「なるほど」

文字に目を落としながらその短い言葉に応じる功。


「ここまでの推測より、剣三つ目による仕業で間違いないであろう」

「剣三つ目・・・ということは彼らは剣で斬られたということですか・・・」

「ああ。確定する証拠はないが私はそう確信している」

羊皮紙から顔を上げた功は、受け取った紙を相手に向けながら続ける。


「この間俺が戦った相手は、この中のどれになりますか」

「あれの個体名は記載されていない。それよりも下の構成員だな」

「・・・そうですか」

先日、功が戦った曲剣(シミター)使いの男。命がけで対峙したあの男が、一覧にすら載ることのない格下構成員である事実に嫌気がする。


「我らは(しか)る後、再び奴らに攻撃をしかける」

「えっと・・・それはどういう・・・?」

「先もアルフレッドが申し伝えた通り、あの塔は非常に重要な意味を持つ」

「それは・・・」

「そうだ、あれは世界の門。奴らによって開け放たれた状態である今、貴様も、貴様の隣人もみな”こちら側”へ引き込まれ続ける」

「・・・」

「故に、門を閉じて施錠しなければならない。二度と開くことのないように」

女は羊皮紙を功から取り上げると、それを丸めて懐に収める。


「・・・ということは、その”剣三つ目”とかいうのと戦えってことですよね」

「ああ」

「格下構成員だけで命がけだったのに、俺一人では勝負にもならないと思うのですが・・・」

「そうだな」

「そうだな・・・って・・・」

「然る後、と言った」

「それはいつですか・・・?」

猫背気味にうつむけた功の顎を、歩みながら近づいた女が片手で掴み、強制的に自身の顔に向かせた。


教会の窓から入る月明りに照らされた、凛と立つ司祭服の女と、それに支えられる青年のシルエット。


功はこの時、初めてまともに女の顔を見た。

美しい

湧いて出た感情はシンプルであり、その雰囲気も伴い、思わず彼女の姿に見入ってしまう。

はっきりとした目鼻立ち、細く整えられた眉、フィットした司祭服によって強調されたボディライン。

そして何よりも、月明りで淡く輝く碧眼の右目。


「・・・」

言葉を発すことも出来ない功の瞳を見ながら、女は笑う。

ともすれば妖艶に。


「貴様がそれを殺せる力を得た時、私と共に」

主賓 大火

上賓 戦争と死、呪猟の祝福、剣三つ目、愛の戦い、等しく与える者

次賓 不遜、不滅、乖離、剛力、賢聖、魔境、凶弾、革命、博愛

ほか、来賓13名

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