5-2 サキュバス一行と白金の女王 これにて謁見終了!
「それにしても」
シャルロット王は落ち着いたジャンヌさんから目をはずして、俺たちへと振り返ってきた。
「人間、エルフ、サキュバス、オーク、それからドワーフ、ねぇ。どの国の軍や冒険者にも、こんなに豪奢な混成部隊はいないわね」
「そうなんですか?」
エルフィが思わずと言った様子で疑問を漏らした。さっきまで緊張で固まっていたのがウソみたいに、自然にぽろって感じだ。
シャルトット王は、一秒にも満たないわずかな時間、間をおいてから頷いて、ふふんと鼻を上機嫌に鳴らした。
「えぇそうよ~! まず、エルフは基本的に、人間のどの国家にも肩入れはしない。ハーフエルフも冒険者になることはあっても、軍に入ることはない。いいえ、入れないの」
「何でですか?」
「エルフは総じて力が、特に魔力が強い。ハーフエルフもそう。エルフたちはこの世界の均衡を保つために、平和を守るために、自分たちの力をどこかの一勢力に肩入れさせることはない。冒険者ギルドと言う、自分たちが創設に関わった独立した機関以外には、ね」
なるほど。
これまで、エルフなりに考えて、この世界に接しているってことか。エルフにしろハーフエルフにしろ、そのルールに不満を抱いてる奴はいそうだな。
「次にオーク。理由はさっきジャンヌが言った通り! そもそも、オークが地上に姿を見せるってこと自体がとても珍しいことね。でも、ブロードは慣れてるみたいだし、何度か地上に来ている感じがするわ」
「えと……その」
ブロードが言いづらそうに口ごもると、シャルロット王は首を横に振った。
「ごめんね。事情はそれぞれあるわよね。それと、オークは人間のどの勢力にも属しない。善人悪人老若男女種族年齢、あらゆるものを問わず、冥府の門を開いて案内する種族。だから、ブロードみたいな例は、恐らく、このパーティーだけの特別なものよ」
「なるほど」
エルフィがふむふむとしきりに頷いていた。
「ドワーフは……まぁ、自分たちが住んでる場所からあまり出てこないから、ねぇ。ほとんど見かけないわ」
「住んどる場所はわかるんですか?」
「私は知ってるけど、おいそれと教えられないわね。ドワーフってとっても優秀な鍛冶師で技術士で発明家。それと強靭な心身を持ってるから、ドワーフを迎え入れたがっている国や貴族は多い……と言うより、皆そうしたがっているわ」
「それじゃ、王様もシャールさんを国に迎え入れたいって思ったりしてます?」
「エルフィ、ストップ」
この子、以外と大物か。
シャルトット王は俺を手で制し、またも首を横に振った。
「正直なところ、かなり惜しいとは思ってはいる。実際、ここ最近、街の方でジャンヌが関わっている仕事の達成速度と質が向上しているし、居てくれたら助かる」
「あはは、照れちゃうな~」
シャールさんは王様から褒められて照れている。この人もこの人で、出会った時から大物感がある。
「でも、私は束縛しないわ。故郷に、好きな時に好きなように戻って、何ならそのまま帰ってもいい。ここにいる間、力を貸してくれているんだもの。感謝はあっても、砂をかけるようなことはしないわ」
そう言ったシャルロット王は、どや顔だ。
でも、この人も故郷から突然連れ去らわれて、この世界に来て、ダンジョンマスターにされてしまった。
リリィやミレニアもそうだったが、魔界には戻れないのだろう。
その痛みと悲しみを知っているからこそ、この人は、こんな風に言うんだろう。
「大丈夫だよ王様! 私、ジャンヌちゃんたちもこの街も好きだし、また戻ってくるよ!」
「そう言ってくれると嬉しいわ。その時はよろしくね」
「うんっ!」
なんというか、普通に友達の女の子同士が約束を交わしているように見えて微笑ましい。
その約束を果たさせるためにも、やれることをやらないとな。
「じゃあ、話を戻して……最後にサキュバス。この子たちはねぇ……うぅん」
ちらりと、ブロードと、それからエルフィを見て、シャルロット王は少し思案するような素振りを見せた後、
「繁華街にはいるけど、軍とか冒険者にはいないわ」
絶対ウソだ。
サキュバスが扱う様々な魔法は、メイプルから色々と見せてもらっているし、実体験もしている。
戦闘要員でなかったとしても、魔法を含めて、色々な活躍の場がある彼女たちがせっかく来てくれるのであれば、軍も冒険者も取り込みたいと絶対に思うはず。
と言うか、ハーフサキュバスの冒険者がいるし、何ならセイジュさんはメイプルをエル・ブロッサムの軍か、冒険者ギルドへ勧誘してたぞ。
「男女問わずね、色々と、問題起きるから」
そう言ってシャルロット王は、ふっと顔を若干逸らした。出来上がった影の部分に、彼女がわかる人にだけわかる気苦労みたいなものを見せている。
あ、うん。
そういえばこの世界のサキュバス、男女問わず対象にしてるんだったな。
んで、まぁ、どこかの組織に入れば、大変な活躍はするだろうが、色々と問題の種になると。
あ、下手したら組織が内部崩壊するか。
恋愛事情で。
しかも三角関係とか何それ美味しいのって言う感じのヤバい奴。絶対にナイスボートな展開が一つ二つだけでは済まない、そんな地獄の展開が予想できる。悲しみっていうか悲劇しか待っていない。
異世界でも、恋愛事情はヤバい。メイプルたちから聞いた。魔法がある分、こっちの方がもっとヤバそうだった。
「シャルロット王、私の友人に、冒険者のハーフサキュバスがいるぞ」
「え、そうなの?」
「あぁ。ラベルを拠点にしているから名は知られていないが、上級冒険者で、実力も確かだ」
「へぇ~、知らなかったわ」
おぉ、この人、凄いな。
自分の知らない事を、素直に認められる人か。
「それと、エル・ブロッサムの王都では、繁華街以外でもサキュバスが働いているぞ。例えば、図書館などでな」
「へぇ、そうなんだ。もしかしたら、ウチでも真似できるかしら」
エル・ブロッサム王都の図書館にいたサキュバスの司書さんは、確かに、パッと見た感じは素敵な美人司書という感じだったし、個人の性格などにもよるのだろう。
シャルロット王は人望もありそうだし、適材適所な職場を斡旋できるかもしれない。
そうなれば、野良サキュバスが減っていき、被害も消えていくのでは?
それは素敵だ。是非、セイジュさんと話しを詰めて頂きたい。
「あの、晴樹さん、大丈夫ですか?」
「うん、何でもないよ」
エルフィが心配そうな顔で見上げてきたので、問題ないと伝えておいた。もしかしなくても、顔色悪くなってたんだろうな。
「さて、そんな訳で、世にも珍しい種族が、それも勇者パーティーになってくれているって事の希少性がわかったかしら?」
と言って、エルフィと俺を見てくるシャルロット王。
えっ、あっ、そっか。
この人、俺とエルフィがこの世界の常識に疎い事に気づいてるぅぅ!!
俺たちが知らないだけで、この場にいる奴が皆知ってる事をあえて説明してくれてたんだお手数おかけしましたありがとうございます!!
「はい、わかりました!」
そしてエルフィは素直に返事をしていた。
「よろしい。ところで、エルフの貴女、名前は?」
「エルフィ・エクスカッシャンです」
「そう、エルフィって呼んでもいいかしら?」
「いいですよ」
「ありがとう。それと、そこの貴方」
シャルロット王が俺を見上げて来た。
琥珀色の瞳が興味津々な輝きを秘めていた。
「えと、何でしょうか?」
「貴方の名前も教えてほしいの。いいかしら?」
「晴樹と申します」
「ハルキね。話はエリス様から聞いているわ! ココロみたいな顔立ちの子がいるって!」
シャルロット王、御身もか。
どこからどこまで聞いてるかは知らんが、俺が星海の邪神を倒すために呼ばれた、みたいなところまでは絶対に知ってるだろこの人。
「それと……貴女は?」
シャルロット王が最後に、エルナへと振り返っていた。
エルナは特に慌てる様子もなく、
「エルナと申します」
冷静に、かつ恭しく自己紹介をしていた。
シャルロット王はそれに頷くと、もう一度俺たちを全員見渡して、
「じゃあ、ひとまず顔合わせは済んだし! これにて謁見終了! 楽しかったわ! あっ、よかったらこの後、お茶とお菓子を食べて行ってね!」
そうして、シャルロット王との謁見は無事、終了した。
その後、客間でクッキーとお茶を頂いて城を出て、予定通りジャンヌさんの案内で街を回ることになった。
お読みいただき、ありがとうございます。
シャルロット「わぁ、あのハルキって子、想像以上にヤバい子だったわぁ」
メイド「そうですか? 多少、できる様子でしたが」
シャルロット「いやいや、直接的な戦闘能力じゃないわよ。アレは……下手したら上級魔王なんて目じゃないくらいヤバいかもね」
メイド「そこまでですか」
シャルロット「えぇ。でも……エルナって子も凄かったわね」
メイド「本人は気づいていないようでしたが、魔力がとんでもなかったですね」
シャルロット「そうそう。それに、あの子……どこかで見たことがある気がするのよねぇ」




