4-2 エロ漫画野郎と要塞卿 とても、良い国だと思います
前半パートがあるので、まずはそちらからお読みください。
だが、ダンジョンマスターもとい、魔王はまだ意識があった。
殺せと言う魔王に、カズマ殿とヒナコ殿は、それはできないと言って、彼女を魔法で拘束した。
そして、二人は、魔王からその目的を聞き出した。
魔王は、魔界にいた時に、何者かによって突然、ダンジョンマスターになる力を与えられ、いずれ魔王になって、飛ばされた世界を征服し、安定させるようにと言われ、我々の世界に飛ばされてきた、と語った。
それ以外については、何やら記憶が曖昧であり、またその何者かによって語ることができない仕掛けをされていると言い、ヒナコ殿もそれが嘘でないと証言した。
魔界に帰られないなら、せめてこの世界を征服して、その何者かに反撃したいと魔王は考えていたらしい。
魔王に同情しながら、そんな手段を使うのはダメだと諭した二人は、私と冒険者に、この魔王と取引をしたいと言い出した。
その時だ。
私は、エリス様の天啓を受けた。
エリス様は、エリスを独立した都市国家とし、その王としてその魔王を置き据えるようにと仰せになった。
私は事情を三人に説明し、魔王に取引を持ち掛けた。
魔王は、いくつかの条件を出して、この話を引き受けた。
その後、街に戻って運営陣と冒険者ギルドに報告と説明を行い、ひと悶着ありつつ、最終的にはようやく介入してきたエルフと冒険者ギルドマスターの一声で決着がついた。
その際、ヒナコ殿がこの街を見て、今日のようなことが起きた場合に対応できるようにと提案してくださったのが、このエリスの街自体を巨大な魔方陣にし、上級魔王の攻撃すら食い止めることができる、絶対魔法ハイ・グランド・シールド。
そう、ハルキ殿たちがジャンヌに案内された地下施設、あれはこの街の地下全体に建築した魔方陣の一部だ。
このエリスと言う都市国家は、地表の街と地下施設で構成された、絶対魔法の魔方陣なのだ。
地下の魔方陣となる施設を造るのに、二人と冒険者は我々ヴォーバンに協力してくれた。
そのおかげで、二十年はかかる予定だったものが、たったの半年もかからずにできあがった。
地下の重要部分と、地下魔方陣の発動に問題ない事を確認した二人は、街を出ることになった。
その前日、ようやく一息つくことができるようになった私は、それまで聞くことを憚っていたことを二人に聞いた。
二人はどこから来たのか、と。
そうすると二人は、ニホンという国から来たと答えた。
☆
「長々と話したが、これが、私が二人の勇者と、ニホン国を知っている理由だ」
「そんなことがあったんですね」
収納魔法からお茶の入った水筒と木製のコップを二つ取り出し、コップにお茶を注いで一つをセバスティアンに渡した。
「あぁ、すまない」
喉を潤すと、セバスティアンさんは「変わった味だな」と言いながらも、口元を綻ばせていた。
「メイプルが作った緑茶です」
「紅茶とは違うのか」
「発酵させずに、焙煎してるんです」
「そうか」
緑茶が気に入ったようで、セバスティアンさんは飲み終えたカップを差し出してきた。継ぎ足したら、二口程飲んでから、話の続きを始めた。
「二人の顔立ちや、着ていた衣服や靴と、貴殿の出で立ちが似ていたことで、もしかしたらと考えていた。当たりだったな」
「そうでしたか」
「あぁ。ところで、カズマ殿とヒナコ殿は、貴殿の世界では……ごく普通の民、なのではないか?」
「恐らくですが……その二人が着ていた衣服って、どんなものでしたか?」
「似た造りと色合いのジャケットと、同じ色のネクタイにズボンとスカートだったな」
「多分、学生ですね」
写真……いや、セバスティアンさんの記憶を覗き込めばわかりやすいのだろうが、メイプルのようにホイホイと覗き込む覚悟が、今の俺にはない。
それに、セバスティアンさんにとって、これは大切な記憶のようだ。やっぱり覗き込めない。
余裕ね、とメイプルには呆れられるだろうな。
「そうか。学生だったはずの若者たちが、勇者になってしまったのか」
「それについてなんですが、二人はどうやってここに来たか、とか言ってましたか?」
「あぁ。何やら、本を開いて遊んでいたところ、気が付いたらこちらの世界にいた、と」
「そうですか」
本を開いて遊んでいた……俺とは状況が違うな。
こっちに飛んだ時に俺と同じように力を授けられたタイプのようだが、俺を呼んだ奴の仕業なのかもわからない。
後でメイプルと話してみるか。
「貴重なお話、ありがとうございました」
「いや、こちらこそ、あの二人と同じ国から来た者と出会えて、それ勇者で、またこのエリスの危機を救ってくれること、心から良かったと思っている」
彼は飲み終えたカップを洗って返すと言ってくれたが、その場で風と水の魔法で洗浄して見せたら、笑ってくれた。
「貴殿は器用だな。カズマ殿とヒナコ殿も器用だったが、貴殿はさらに器用だ」
「えと、これくらいだったら、長年魔法使って来た人の方が凄いんじゃ……」
「いやいや、風と水の魔法を適度に、そしてカップを傷つけないようにしながら汚れを落とす、と言うのは想像以上の集中力や魔力を要する。魔法で洗う時、普通なら、もっと簡単に洗ってしまう」
なるほど、なるほど?
俺、あんまりそういうの意識せず、手を使わずに、手を使う時と同じ要領と言うか感覚でやってたけど、こっちでは珍しい技術になるのか。
覚えとこ。
「あぁ、そうだハルキ殿。もう一つ、聞きたいことがあるのだが、いいだろうか」
「何でしょうか」
「……貴殿は、フランスと言う国を知っているか?」
「え?」
「カズマ殿とヒナコ殿に私が名乗った時、二人がそのような国の名を口にしていたのだ」
あぁ、そういうことか。
おそらく、そのシカメ君とマキノさんは、地球のヴォーバンの事を知っていて、思わず聞いてしまったんだろう。
貴方は、フランスにいたヴォーバンなのか、って具合に。
でも、この人はこの世界の住人だ。
俺たちの世界のヴォーバンじゃない。
「えぇ、知っていますよ」
「どのような国なのだ」
「俺も詳しくは知りませんけど……そうですね、とても、良い国だと思います」
「……………………そうか」
セバスティアンさんはそう言って、微笑んだ。
「カズマ殿とヒナコ殿も似たような事を言っていた」
「まぁ、俺が知っている限り、ですが」
「それでも良いのだ。貴殿たちの顔を見れば、フランスなる国は、きっと良い国になっているのだろうとわかる」
「ん?」
何か言い方が気になったが、セバスティアンさんが「長く引き留めて悪かった」と言って来て、考えが途切れてしまった。
釈然としないまま、俺は来た時と同じようにシールドに乗り、元の部屋へと戻った。
振り返ったら、セバスティアンさんが手を振っていたので、振替して部屋の中に入り、そのままベッドに潜り込んだ。
色々と情報が得られた。
驚くことばかりで、メイプルだけでなく、エルフィにも聞かせてやりたい。
だが、最後にセバスティアンさんの言っていたことが、言い方が気になった。
くっ、眠気と昔の話のインパクトのせいか、何かがおかしいことはわかっても、具体的に何がおかしいのかわからないもどかしさがある。
そうしてもやもやしていると、思考がすとんと言う擬音が似合うくらいに、あっという間に落ちてしまい、起きた頃には、直前に何か気になることがあったような気がする程度に、それを忘れてしまっていた。
お読みいただき、ありがとうございます。
晴樹「(ってか、この国の王様、元ダンジョンマスターか……マジか……」
王様「へっくちっ!! ぬぅ、誰か私の噂をしているのかしら……きっとセバスの奴に違いないわ。そうに違いないわ!」
見回りメイド「早く寝てくださいマイロード」
メイプル「皆、面白いわねー、この街」
エリス「ウチの子たちの事を盗み見るのやめてくれるー?(邪神とドンパチ戦いながら」
ノディアー「(あ、あの子、今は国王やってるんだ……(雷神たちを相手取りながら」




