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サキュバスとエロ漫画野郎と冒険者  作者: 胡桃リリス
第七章 サキュバスとエロ漫画野郎と暁の魔法使い
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2-4 サエぼと要塞卿と城壁の乙女 俺たちでよければ

 応接間に全員が集まると、最初に口を開いたのは、ジャンヌさんだった。


「おじい様、皆様にシャールの事を紹介いたしました」


 先ほどまで、疲労困憊だった姿からは想像もできない、しっかりとした言動だが、よく見たら両手が若干震えている。恐れではなく、ツッコミ疲れによるものだ。


「そうか、ご苦労だった。我が屋敷の技術士殿は、呼ばないと食事も抜いてしまうからなぁ」

「面目ない」


 セバスティアンさんのやんわりとした苦言に、シャールさんは苦笑していた。


「あ、初めましての方もいるね~。

 シャール・トワイライトって言うんだよぉ」

「セイジュだ。シャール君、と呼んでも?」

「いいよぉ」

「うむ、シャール君。君はドワーフか?」

「うん、そーだよ」


 やっぱり、シャールさんはメイプルが以前言っていた、知り合いのドワーフだったか。メイプルやブロードの態度と、マスケットを見てそうだろうなとは思っていた。


 それにしても、この世界のドワーフ、背が高いのかな。他のドワーフを見たことないから何とも言えないが。

 で、俺と同じように、シャールさんがドワーフだということに驚いたのは、エルフィだった。


「えっ、シャールさんってドワーフやったん?!」

「うん、私、ドワーフなんだ。貴女はエルフだよね?」

「そ、そうやけど……」

「どうしたの?」

「その、エルフとドワーフが仲悪いとか、ってない?」


 恐る恐ると言った様子で尋ねるエルフィに、シャールさんはからからと笑って見せた。


「ないよぉ、そんなこと。誰かドワーフの子と喧嘩でもしたの?」

「いや、そんなことはないんやけど……その、私、よく知らんから」

「??? よくわかんないけど、ドワーフもエルフも、みーんな仲良しだよぉ!」

「そ、そうなんや」

「うんうん」


 どうやら、この世界のエルフとドワーフは、仲が悪いということはないらしい。

 そして、エルフィは新しい友達ができたようで、何だか嬉しそうだった。


 その微笑ましいやり取りを他所に、ジャンヌさんは、マスケットを背負ったメイプルを見ていた。

 メイプルがそれに手を振って、満面のカエデちゃんスマイルで返したら、ジャンヌさんの笑顔が引きつった。


「それでおじい様、その、光の運命神様が仰っていた勇者様とパーティーについてなのですが」

「うん」

「その、こちらの方々は、上級冒険者……には、見えないのですが……」


 エルフィを見て、それから残りの俺たちへ注がれる視線。

 まぁエルフィは、エルフだし、ダンジョンマスターだし、魔力もメイプルに次いでヤバいから、まぁジャンヌさん的に見ても実力者なのだろうが、俺たちはそうはいかないだろう。

 何せ、幼女、男の娘、冴えない一般人(パンピー)、少し質の良い装備をしているがよくって中級という雰囲気の冒険者だし。


 だが、先ほどのメイプルがやらかしたおかげで、その認識が根底から瓦解したようだ。

 彼女の俺たちを見る目が、言葉とは裏腹に、こいつらも何か隠しているのかもしれない、と懐疑的な色を浮かべている。

 ルネさんは……特に何の感情もうかがえず、静かにジャンヌさんのすぐ斜め後ろに控えていた。この人、大物だな。


「何を言う。勇者様とそのパーティーが来ると。つまり、勇者様についていけるだけの実力者と言うことであろう」

「それは、そうなのですが……」


 メイプルを見て、それから俺を見て、説明しろとばかりに睨んでくるジャンヌさん。

 もちろん、目を逸らしてお断りしたら、キッと音が出そうなくらい睨まれた。怖い


 すると、セバスティアンさんは、くつくつと笑い出した。

 驚いて振り返るジャンヌさんに、セバスティアンさんは言葉を続ける。


「その様子だと、そこの小さなレディと仲良くなれたのかな?」

「おじい様、この子の事をご存じなのですか?」

「いや、会うのは今日が初めてだが、噂はかねがね、エリス様より聞いている」


 あ、やっぱこの人、エクスードさん(ギルマス)とか、そっち側の人だった。

 しかも、この都市の守護神である女神から聞いているということは、こいつの武勇伝も知っているのかもしれない。


 メイプルはカエデちゃんスマイルのまま、セバスティアンさんへ優雅に一礼して見せた。


「お初目にかかります、セバスティアン・ル・プレストル・ド・ヴォーバン殿。

 メイプルと申します」


 とても八歳児とは思えない、大人びていて、どこか艶やかさのある挨拶だった。

 これにまたも驚くジャンヌさんを他所に、セバスティアンさんも一礼して応えた。


「貴殿がメイプル殿であらせられたか。我がヴォーバン一族は、貴殿を勇者パーティーの一人として心より歓迎する」

「おじい様?!」


 ジャンヌさんだけでなく、今度はルネさんも一緒に驚いていた。

 セバスティアンさんの態度が、もう完全に上位の人に対するそれっぽいからな。


「あのセバスティアン殿が……」


 ってセイジュさんも驚いてるし。


「へぇ、本当にエリスから色々と聞いているのね」

「ちょっと貴女! エリス様を馴れ馴れしく呼んではいけません!」

「良いのだジャンヌ」

「えっ?!」

「メイプル殿はエリス様のお知り合いなのだ」

「お知り合いだからと言って、このような呼び方は不敬ではありませんか?」

「エリス様から話は聞いている。だから良いのだ。それに、メイプル殿はエリス様たちのご友人でもある」

「えええええ?!」


 よかった、叫ぶ前にサイレント・ベール使っといて。あの様子だと、多分屋敷の外まで響き渡りそうな大絶叫だったろうな。あとは精神回復弾を撃ち込んで、よし。

 あ、セバスティアンさんが俺を見て、小さく頷いてきた。これにも気づくのか。凄いなこのご老人……!

 落ち着いたジャンヌさんが、メイプルを見て、それからセバスティアンさんを見て、最後に俺を見て、


「貴方の義妹(ご家族)、どうなっているんですか?」

「すみません、こいつが神様相手に敬語使ってるところ、今のとこ見たことないです」


 ソファに座って一人、読書に勤しむリアさんを見て答えたら、ジャンヌさんが地下室の時のように固まった。うん、大陸中で畏怖される旅の破壊神相手にそんな態度を取れるってなったらそーなるわな。

 後で俺も、こんな風に見られるんだろうか……。


「待ってください……と言うことは、貴方も彼女のような……」

「あ、俺はですね」

「彼は勇者だ、ジャンヌ君」


 セイジュさん、横から人の自己紹介搔っ攫って行かないでくださいますか?!

 ほらもう、ジャンヌさんもルネさんも俺の事、穴が開くほど見て来たし……ってこんなやり取り今日この短い時間で何度やるんだ……?


「この殿方が? た、確かにココロ様と同じような顔の造りはされていらっしゃいますけど……勇者召喚のお話は耳にしておりません」

「勇者じゃないんです」

「えっ?」


 俺は勇者じゃなくて、ただ神様たちから邪神をぶっ飛ばしてほしいと力をお貸し頂いているだけの一般人なんだよ!

 例えリアさんたちが勇者だと言っても、俺だけは断じて俺が勇者だと認めねぇ!


「あの、おじい様、このように仰らていますが……」

「そちらの方は冗談がお好きなようだ。セイジュ様の言う通り、勇者だ」


 ヴォーバン、貴方もか……。


「すまない、セバスティアン殿、ジャンヌ殿。彼はどうしてだかわからないが、頑なに自分が勇者だと認めないんだ。もうすでに光の運命神や神ヴァーヴァリアスから勇者だと認められているというのに」

「あぁ、ハルキは私も認めた勇者だ」


 それまでこちらに興味のきの字も示さなかったリアさんが、本から顔も上げずに、援護射撃(フレンドリーファイア)してきた。


「そして我々仲間も認めている。なぁココロ君」

「はい。私はハルキさんも勇者であると思っています」

「晴樹さん、ヴァーヴァリアスさんもココロちゃんもこう言ってるんやし、そろそろ認めたらどうです?」

「ちゃうんや……」

「あ、この子の戯言はいつも通りだから、スルーしていいわよ」


 メイプルがさらっと流してくれたおかげで、この話題から逃げることができた。恩に着るぞ……だから、後で何かおごれってテレパシーで送ってくるなよ……。


「じゃあ、この際だから、皆、自己紹介していきなさい。次、エルフィ!」

「あ、次、私? 私はエルフィ・エクスカッシャンって言います! 見ての通りエルフで、魔法使いです! よろしくお願いします!」


 元気な挨拶に、セバスティアンさんは微笑ましそうに頷き、ジャンヌさんがようやく癒しを得たとばかりにほっとしていた。


「僕はブロードって言います。よろしくお願いします」

「貴女は……魔法使い、ですか?」

「あ、まぁ、そんな感じ、です……あはは」


 女性の呼び方をされて、ブロードが少し、遠い目をしていた。見た目が傾国級の超絶美少女で、今はドレス姿だから、仕方ないな……後でエルフィと一緒に愚痴でも聞いてやろう。

 さて、最後はエルナか……と思ったら、エルナは相変わらず俺の後ろで気配を消して隠れていた。

 こいつ、この屋敷に来てからずっとこんな感じだが、どうしたんだろうか。


「エルナ、次、お前だぞ」

「……エルナ、冒険者です。よろしくお願いします」


 しぶしぶ、顔を隠すように姿勢を低くして、俺の影からちょこっと出てきて、小さな声で挨拶をした。

 セバスティアンさんはそれを見ても咎めもせず、俺たちの時と同じように頷いていた。

 が、ジャンヌさんは何か訝しむようにエルナを見ていた。


「改めて、皆様、我々ヴォーバンの屋敷へようこそ。そして、大変お心苦しいのだが、皆様のお力をお借りしたい」


 セバスティアンさんが真摯な態度で呼びかけてきた。

 セイジュさんとココロさんは、もう話は着いているようで、俺たちに頷いてきた。

 最初から答えは決まっている。

 だから、


「俺たちでよければ」


 右手を差し出すと、セバスティアンさんは口元に笑みを浮かべて、握り返してくれた。

 ごつごつとした分厚い手だ。力強く、彼に心に宿る熱さを感じ取れた気がした。


 それから、まだ時間はあるとリアさんが言ったので、俺たちは屋敷で寝泊まりすることになった。

 リアさんが何も言わずに俺たちの前から姿を消すか、何か言ってくる時が、俺たちの出番だ。

 それまでに、体を本格的に休めよう。

お読みいただき、ありがとうございます。

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