1-3 サエぼと妖精剣士たち お寿司食べたい
勇者と破壊神が一緒にいてくれるなら何も危険はない、と言う事で、話はとんとんと進み、俺たちは商隊と並んで歩いている。
建前は、知り合いであるフリージアと俺たちのパーティーが出会い、談笑しながら同じ目的地である城壁都市エリスへ向かっている、となっているので、フリージアたちの護衛依頼には何ら迷惑はかからない……とセイジュさんが言ってくれたので安心した。
俺たちは歩きながら、フリージアたちがどうしてここにいるのかを聞いた。
まず、フリージアたちは、メイプルの親戚であるハーフサキュバスの上級冒険者アニスさんへ、エルナからの言葉をしっかりと伝えてくれたことを教えてくれた。
これに関してはエルナが礼を言っていた。
なお、アニスさんはエルナの伝言を聞くなり、そのままラベルを出て行ってしまったらしい。
エルナが顔を手で覆い、エリスの冒険者ギルド支部でアニス向けのメッセージを作成する事を決意した。
話が戻り、フリージアたちが何故、商隊の護衛をしているのかと言うと、これはとても簡単かつよくある話らしい。
フリージアたちは自分たちのアタックできる手身近なダンジョンや遺跡の調査を終えたため、遠くの街で調査を求められている物件がないかを探していたところ、エリスまで護衛をしてほしいという商隊の依頼を見つけた。
別の国のダンジョンや遺跡を調査するなら、先方の冒険者ギルド支部に掛け合う必要があるため、丁度いいと言う事で、この依頼を引き受け、ここに居るとのことだった。
「途中でスライムとかマジックディア以外の魔獣と出会わなくってさ。盗賊の一人も出てこなくてすっごく楽だったよ!」
ナンナが「ラッキーだね♪」と喜ぶのに同意しながら、俺は心の中で、俺たちがやりました、と苦笑いした。
「盗賊相手に後れを取るつもりはないが、体力と装備の温存ができるから、有り難かった」
「僕もゆっくり落ち着いて本が読めましたし」
アナが生真面目に言って、ディーは少しずれた答えを口にしていた。
そしてフリージアは、
「オルシャーガのエビフライが美味しかった」
微笑ましい感想を教えてくれた。
そっか、よかったな。でもそうじゃないんだよな。
「確かにオルシャーガの海鮮料理は美味だな」
フリージアの答えに、セイジュさんが乗っかった。
いや、アンタはツッコミ側だろう、そっち行くなよ。
ほら、エルナが苦笑いしてるし。
「……寿司が食べたいですね」
ココロがぼそっとつぶやいた。お前もか。
でも、刺身が食べたいって言うのは分かる。
そして日本にそっくりヤマトには、寿司の文化もあるのか。そう言えば、保存食だったのが始まりだったと読んだことがあるし、その類なのかもしれない
「私もお寿司食べたいなぁ」
寿司の単語に反応したエルフィさんが思い出したのか、目を輝かせた。
「エルフィさんも寿司をご存じなのですか?」
「うん。あぁ、サーモン、サーモンが食べたいっ」
わかる、わかるぞエルフィさん。
俺も久しぶりにスーパーの握りセットが食べたくなってきた……!
しかし、寿司の話題でココロとエルフィの仲が少し深まったようで、それからも料理の事で仲良く話し合っていた。
ヤマトは日本の昔と似ているようだし、どこか通じるところがある……んだろう。
二人を見守っていると、肩を突かれたのでちらと見てみると、ナンナだった。
「ねぇ、何でココロ様とヴァーヴァリアス様と一緒にいるの?」
こそこそと、口元に左手を当てて聞いてきたが、そんなことしても二人には聞こえてると思うぞ。
「成り行き」
「成り行きで勇者と旅の破壊神と一緒に旅なんて聞いた事ないんだけど」
「んな事言われてもなぁ」
本当の事だからなぁ。
困っていたら、アナとディーが助け船を出してくれた。
「ナンナ、あまり困らせるな」
「そうだよ。ごめんなさいハルキさん」
「いや、別にいいけどさ。ナンナ」
「何?」
「今さっきくらいの声量だと、ココロもリアさんも聞こえてるぞ」
「うげっ」
ナンナは恐る恐る振り返るが、ココロとリアさんは気にした様子もなく、周囲を警戒したり、どこか明後日の方角をぼーっと見つめていたりしていた。
「……気を付けよっと」
「別に今の質問くらいだったら、二人とも怒らないと思うぞ」
「うぅ、そ、それはそ……いやヴァーヴァリアス様はわかんないじゃん。って言うか、ハルキ、さっきからヴァーヴァリアス様の事をリアって呼んでる?」
「本人から呼んでいいって言われた」
「はぁっ?!」
大声を出す予感が会ったので、サイレント・ベールを使っておいて正解だった。効果範囲は俺とナンナだ。
アナとディーには、ナンナが驚きの余り、声も出せずに驚くリアクションだけ取った、と言う風にしか見えないだろう。
実際に、二人ともナンナの様子に苦笑いを浮かべていた。
「一体何をどうしたらそんなことになるのさ……」
「さ、さぁな……」
俺が暫定(暫定と言ったら暫定だ、まだ認めてない)勇者だと言う事は教えないつもりだ。
ここは、神様の気まぐれとか、そう言う事で片づけてくれ。
だから、アナとディーも、さっきはあぁ言ったが、興味津々な目で見てこないでくれ。
「リアちゃんがどーしたの?」
メイプルが小首を傾げながら話に入ってきた。やめてくれ、カオス度が増すだろ。
「カエデちゃんまで……いや、カエデちゃんなら、ヴァーヴァリアス様もお許しくださるよね」
ナンナはどこか諦観したように言って、メイプルの頭を撫でた。
「ねぇカエデちゃん。ココロ様とヴァーヴァリアス様とどうして旅をしているの?」
「おい」
コイツ、俺が答えないからってメイプルに矛先を変えやがって。
「ん~……なりゆき?」
「そっか~」
うん、そうなるよな。
だが、まぁ、前々からココロとも打ち合わせしている話があるから、それを話すくらいはいいか。
ちらとココロに振り返ったら、頷いてくれた。
「実は、俺とココロの出身が同じじゃないかって話が合ってな。それで、旅に付き合ってもらっている」
「あぁ、そう言う事か」
半分嘘の訳を話すと、意外とすんなりナンナたちは納得していた。
「やっぱり、ハルキって、ココロ様と同じ国の出身なんだね」
「やっぱりってどういうことだ?」
「ハルキの顔って独特の作りをしてるでしょ? あ、別に悪く言ってるんじゃないよ?」
「わかってるよ」
俺の世界の某風呂漫画曰く、平たい顔族、らしいからな。
「会った時に、もしかして、と思ったんだ」
「ココロ様のご尊顔は、以前拝見したことがあったからな」
「そうだったのか」
もしかして、こいつらが前に酒場で俺の正体について話していたのは、ココロと顔のつくりが似ているって事だったのか。
それなら、俺の話をすんなり受け入れてくれたのも納得だ。
「と言う事は、ココロ様と一緒に、ハルキとカエデも故郷に帰られるのかな?」
ナンナが何気なく、悪気なく、優しい言葉を口にした。
それは、多分、無理だろうとは、言えない。
生まれた世界が違う。
そして、ココロは魔王となるダンジョンマスターがこの大陸に現れなくなるまで、故郷に帰るつもりがない。
つまり、一生、この地で戦い続ける気でいる。
「そうなれば……いいな」
だから、俺はありきたりな答えで濁しておいた。
ココロが故郷に思い残しなく帰還できる日を迎えるには、どうすればいいのか、改めて考えながら。
お読みいただき、ありがとうございます。
メイプル「海鮮丼……」
晴樹「カルパッチョ……」
エルフィ「く~~! 食べたくなってきたんで、今度作ってくださいよぉ!」
メイプル「材料がない」
エルフィ「オルシャーガってとこで買わなかったんですかぁ?!」
晴樹「まぁ、うん」
メイプル「またじかいをおたのしみに~」
エルフィ「ノ~~~~!」
セイジュ「そこ、やかましいぞ」




