異国のココナッツタイム
食事が終わり部屋に戻ると、辺りを見渡してから広めの袖口に潜ませたココナッツオイルを取り出した。
良く冷やされ、角砂糖のように銀食器に盛られていた一欠けらを、こっそりナプキンにつつんで持ち帰ったのだ。
ココナッツオイルは25度以下では個体で、25度以上で液状になり始める。
「やばいもう溶け出してる」
埜乃は急いでココナッツオイルを体に塗り始めた。
コーヒーを飲んでいる時から思っていたけど、やっぱりすごく良い香り。
上質なココナッツオイルは食べても体に塗ってもアンチエイジング効果があって、肌の乾燥にも良いという。
あまりの良い匂いにお腹が空くのが玉に傷だけど。
うっとりとココナッツオイルの香りに酔いしれる。
顔、首筋に続いて胸元のボタンも開けて素肌に塗り込む。
そこへノックこそされたものの、有安が返事を待たずに自分の部屋かのように入ってくる。
「埜乃~?」
「ちょ、ちょっと有安君!女性の部屋に急に入ってくるなんて」
埜乃は太ももまでまくり上げていた衣服の裾を慌てておろし、残ったココナッツオイルを腕に塗りたくった。
有安は、開いた胸元にちらりと目を走らせると、当たり前のようにベッドに腰掛けて話し出した。
「いや~、極楽極楽~。風呂入って飯くって、俺たち何してるんだろうな?」
「それは私が聞きたいの、私が!ちょっとベットに勝手に!」
あ、アンタなんか、好きじゃないんだからね!の態度でトキメク胸を悟られないように、精いっぱい離れた反対側の枕もと近くに腰を下ろす。
それを面白そうに横目で見る有安。
無造作にベットに寝転がると、裾から服の中へ手を入れ、足からお尻まで手でなぞった。
勢いで膝小僧まで裾がめくれ上がる。
「なんか埜乃からいい匂いする。美味しそう♪」
足を抱え込むと膝に鼻を擦り付ける。
「あっ、ちょっと舐めないで!てか、かじるな~!味なんてしないんだから!」
膝小僧辺りをかじられ、背中に電流みたいな痺れが走った。
な、なに、変にひねったから腰痛とか??有安の手をはたき、自らの足を取り戻す。
「イテ~な、何すんだよ」
しぶしぶ埜乃の足とお尻から手を放す。
「それもこっちのセリフだから!!あ~ちょっと歯形ついてる!」
慌てて膝小僧をこするが消えない。
なんかエロイ。
「何してたの?」
めげずに埜乃の腕にすりすりと鼻を寄せる。
「ココナッツオイルでマッサージです。すごく良いオイルだったから」
腕くらいなら・・・とくすぐったいのを我慢して有安のしたいままに任せる。
「ココナッツオイルって、どこからくすねて来たの?埜乃って本当にお嬢様?」
痛いところを突かれる。
「俺にもして、マッサージ」
そういうとクスクスと笑いながらさっさと俯せになる。
本当に奉仕され慣れた人間のナチュラルさで。
「私は彼氏以外の人にはそういうことしないんです!」
「なんだよ、マッサージは無償の愛だろ?」
有安がニヤリと微笑んで再び埜乃に手を伸ばしたその時。
良いところで?またしてもドアがノックされた。
「埜乃様、ミキ様、お取込み中のところ失礼いたします」
入ってきたのは内藤と、ユウ王子だった。
べ、別に取り込んでなんてないですけどね。
・・・・ていうか何で有安がいることまで分ったの。
まさか盗聴器や隠しカメラが室内に?
思い切り太ももまでまくり上げてマッサージをしていたけど?
きょろきょろと室内を見回す埜乃に、内藤が咳払いで答える。
「先にミキ様のお部屋に伺ったところお留守でしたので、こちらにいらっしゃると思い、伺いました」
あら、そうですか・・・。
でも気をつけなくっちゃ。
忘れかけていたけど、ここでは私達囚われの身なわけだから。
「まず、何の説明もなくミキ様をお連れしたことをお詫びいたします」
内藤が深々と頭を下げる。
「別にお詫びはいいんだけど。理由は知りたいんだよね、さすがに」
王子様を前にしてるのにベッドに寝っころがったまま、さほど知りたそうでもなくたずねる有安。
「あ、あといつ帰れるのかも知りたいんだけど。用事が終わったらっていうけど、文化祭まで後約2か月だし全然準備は進んでいないし」
思い出したけど、私はマネージャーとして有安を連れ戻しに来たのだった。
「現段階では用件が終わりましたらとしか回答いたしかねます」
慇懃無礼な物言いが様になるなあ。
と、感心してばかりもいられない。
「その用件は何なのか教えてもらえないの?」
ここではぐらかされてはマネージャー失格と食い下がる。
内藤はかすかにため息をついて周りを見渡すと、傍によるよう手招きをして皆を集めた。




