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星降譚―STELLA NOMINA―  作者: うめこまち
第一部 雲より古いもの

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幕間 「止めた手」

只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ


どうストーリーが進んで行くか乞うご期待!!


現在は、第4部終盤の執筆に取り掛かっております!

残すは5、6、7部。

先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)


皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!

 我々は道標を取りに来た。


 三つ。三つとも。


 人はそれを別の名で呼び別のものとして使っていた。囲いの力の元として。囲いの内側を外側から切り離すために。


 我々にはそう見えなかった。


 あれは方角を示すものだ。


 方角を示すものを人が持っている。


 それだけで足りた。


---


 人の街は下にあった。


 初めは囲いの薄いところから入った。少しずつ。一つまた一つ。囲いの薄い場所は外から見れば分かる。人には見えないらしい。


 それから、柱が一本倒れた。


 倒れたあとは隙間になった。狭い隙間ではなかった。人の背丈のことを言っているのではない。囲いの切れ目のことだ。


 切れ目ができてからは順に入った。


 下の者たちは通りを進んだ。


 戸を押し屋根を伝い人を払いのけた。


 戸を押したのは通るためだ。通り道にある戸は、開くか開かないかのどちらかで開かない戸はそのままにならない。


 人はそれを壊すと言う。


 払いのけるという言い方を人はする。


 我々には払うという動きがない。そこに在るものは進む先にあれば、退くか退かないかのどちらかだ。退かないものはそのままになる。


 そのままになったものがあとで数えられることを我々は知らない。


---


 火は我々が点けたものではない。


 上の街の油が下の街へ落ちた。落ちた油は燃えた。屋根から屋根へ移るまでに我々の呼吸ひとつぶんもかからなかった。


 人の火は速い。


 人の時はもっと速い。


 我々が一度上から下まで見下ろすあいだに人は走り叫び戸を叩き名前を呼びまた走っていた。


 我々はそれを速いと思った。


 速いものはすぐに終わる。


 終わるものを止める理由はない。


---


 道標はいちばん上にあった。


 人がいちばん高いところに置いていた。高いところに置けば安全だと人は考えるらしい。


 上まで行ったのは、我々のうちの別の手だ。


 我々は下にいた。


 囲いの切れ目を開け下の者たちを通し、最後に退く。それが我々の役だった。


 上で三つとも取られたことは退く前に分かった。


 我々は退きはじめた。


 退く道の途中に人の街があった。


---


 通りの一つに水を汲む穴があった。


 その周りに人が集まっていた。


 屋根が燃えていた。人の顔が下から照らされていた。


 我々がその上に差しかかったとき、下の者たちはまだ通りにいた。


 退きはじめる前だった。


 一体が通りの口に立って、振り返った。


 それから、口の形を作った。


 ――口の形。


 我々は口の形を作らない。


 音を出すための器官を我々は持たない。声を持つ者が我々の側に立ったことはこれまでに一度もない。


 あの個体は下級だった。名を持たない。我々の一部であり我々そのものではない。


 その個体が口の形を作った。


 何かを外へ出そうとしていた。


 出るはずのないものを。


 我々はそれを見た。


 見て直さなかった。


 直すという動きをそのとき、しなかった。


---


 そのあと下の者たちは順に東へ退いた。水を汲む穴のある通りを横切って、囲いの切れ目のほうへ。


 最後の一体が通りを抜けた。


 そのすぐあとだった。


 水を汲む穴の前に、小さいものが一つ立っていた。


 顔を上げていた。


 人は上を見ない。人の顔はたいてい下を向いている。地面と手元と抱えているものを見ている。


 そのときも、ほとんどの人が下を向いていた。屋根を見て、火を見て隣の人を見ていた。


 一つだけ上を向いていた。


 我々はその上で止まった。


 止まる必要はなかった。


 下を通り過ぎればそれで済んだ。


 止まった。


---


 我々は手を伸ばした。


 我々の手が届く範囲では時が遅くなる。人の一歩が一歩を終えるまでに我々の側で何度も数えられるほどの長さになる。


 伸ばしたものは落ちる。


 落ちたものは動かなくなる。


 手を伸ばしそれから。


 止めた。


 伸ばしかけた手をそのままにして、動かさなかった。


 どのくらいのあいだか我々には言えない。


 人の言い方でいえば二つあるいは三つ。


 人の時ではなく我々の時で。


---


 なぜ止めたのかを我々は持っていない。


 我々には理由という形がない。


 理由は人のものだ。人は動いたあとにそれを説明するための形を作る。作った形を互いに渡し合って、渡し合ったものを覚えている。


 我々は動く。動かない。それだけだ。


 だから、止めたことを我々は説明しない。


 説明しないが消えない。


 消えないものを我々は数に入れない。


 数に入れないものが残り続けることをそのとき、我々は知らなかった。


---


 我々は通り過ぎた。


 東へ。倒れた柱のあった隙間へ。


 下の者たちはもう通りにいなかった。


 我々が抜けたあとで、道標は三つとも上へ運ばれていった。


 人がそれを見上げていたかどうかは知らない。


 人の街は燃えていた。


 燃えているものは放っておけば終わる。


 終わったあとに何が残るのかを我々は見なかった。


 見る必要がなかった。


---


 隙間を抜けるとき、一度だけ下を見た。


 水を汲む穴の前の小さいもののあたりを。


 もう顔は上を向いていなかった。


 下を向いていた。


 何かをしていた。


 何をしていたのかは分からなかった。


 人は我々が見ていないあいだにたくさんのことをする。


 速い。


 速いものはすぐに終わる。


---


 そのはずだった。

読んで頂きありがとうございます。

引き続き1話ずつ毎日更新していきます。

現在4部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。


基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!


少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!


ブクマやお気に入り登録していただけますと今後の執筆の励みになります(´∀`*)

よろしければ是非応援頂けますと幸いです。

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