↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星降譚―STELLA NOMINA―  作者: うめこまち
第一部 灰は軽く、風に乗る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/160

口に出して数える②

只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ


どうストーリーが進んで行くか乞うご期待!!


現在は、第4部終盤の執筆に取り掛かっております!

残すは5、6、7部。

先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)


皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!

 昼が過ぎた。


 荷車の瓦礫は、途中で路地の端の山に下ろした。空になった荷車を押しながら回った。


 左の軸がときどききしんだ。


 右に寄せる荷がなかった。


 横丁の三本目のいちばん奥の家で戸が開いていた。


 中に男が二人いた。兄弟らしかった。


 片方が焼けた梁を削っていた。もう片方が削った木屑を袋に詰めていた。


「焚きつけにするんだよ」


 訊く前に削っているほうが言った。


「燃えたやつをまた燃やすのかって顔をしてるな」


「……してました」


「燃え残りはよく燃える。一度乾いてるからな」


 男は削る手を止めなかった。


「二人だ。数えるんだろ」


「……はい」


「粉屋のネラから聞いた。坊主が戸口を叩いて回ってるって」


 リュカは頷いた。


 噂は路地を先回りしていた。


 二十八。


 四本目の横丁の奥で柄杓の男の子が戸口に座っていた。


 鎌翼の夜に井戸の脇で濡らし役をしていた子だ。


 男の子はリュカを見て、立ち上がった。


「兄ちゃん」


「今夜ここで寝る人は何人」


「……おれとじいちゃん」


「二人」


「二人」


 男の子は荷車を見た。


「それゴドのおっちゃんの」


「置いていった」


「おっちゃんどこ行ったの」


「下」


「……ふうん」


 男の子は、荷車の車輪をつま先でつついた。


「兄ちゃんも行くの」


 リュカは答えなかった。


 答えを持っていなかった。


「数えてる途中だから」


 それだけ言った。


 男の子は首を傾げた。


 三十。


---


 横丁の五本目は、入り口の家が焼け落ちていた。


 奥に二軒。どちらも戸が閉まっていた。


 一軒目は留守だった。叩いても中に気配がない。


 二軒目で女が出てきた。赤ん坊を抱いていた。


「……何人って」


 女は赤ん坊を抱え直した。


「あたしとこの子とうちの人。三人」


「三人」


「うちの人は今上の街です。仕事があるって」


「……今夜は」


「帰ってきます。毎晩、帰ってきますから」


 女はそう言った。


 言い方に少しだけ力が入っていた。


 リュカは三人と数えた。


 帰ってくると言った人を帰ってこないほうに数える理由はなかった。


 三十三。


 横丁の六本目は短かった。奥に一軒だけ残っていた。


 年寄りが一人で住んでいた。耳が遠いらしく三度訊いて、三度目で伝わった。


「一人だ!」


 大きな声でそう返ってきた。


 三十四。


 坂の側の小路に入った。


 薬房の焼け跡。誰もいない。ミラはイサの家で数えた。


 石段を上がって鍛冶場。


 炉の前にトトが座っていた。


 焼け残った鞴の革を膝の上に広げて、縫っていた。太い針で一目ずつ。


「……何してる」


「鞴を縫ってる。革は半分残ってた」


「炉、焚くのか」


「いつかな。今は縫うだけだ」


 トトは顔を上げずに言った。


「で何の用だ」


「今夜ここで寝る人は」


「俺」


「一人」


「一人だ。親方が戻ってきたら二人」


 トトは針を止めた。


「……数えてんのか」


「数えてる」


「何人だ」


「まだ途中」


「親方は入れるなよ。上にいる。今夜はここで寝ねえ」


「入れない」


「戻ってきたら足せ」


「足す」


 トトはまた針を動かした。


 三十五。


---


 小路を下りて広場へ戻った。


 残っているのは本通りの西側だった。


 宿より西。空き地までのあいだに立っている家が二軒ある。


 一軒目は老人とその息子夫婦。三人。


 二軒目は女が一人で住んでいた。夫は名簿の日に「いない」と答えられた家だ。


「……一人だよ」


 女は戸を半分だけ開けて、そう言った。


「一人になってもここで寝てる」


 リュカは頷いた。


 頷いて数に入れた。


 三十九。


 そのあと広場の東側のまだ訊いていない家を回った。焼け残った三軒に七人いた。


 四十六。


 残っているのは、昼に答えのなかった一軒だけになった。


---


 日が傾いてからその家へもう一度行った。


 焼けた瓦を立てかけた戸の前に立った。


 叩いた。


 しばらくして、戸が少しだけ開いた。


 老いた女が隙間からリュカを見た。


「……何だい」


「今夜ここで寝る人は何人ですか」


 女は戸の隙間からリュカの顔と荷車と立てかけた瓦を見た。


「昼にも来たね」


「来ました」


「なんでまた来た」


「数えたいので」


「……何のために」


 リュカは少し考えた。


 何のために。


 考えたことがなかった。


 杭を数えるのは四十本が一巡だからだ。歩数を数えるのは距離を知るためだ。日当を数えるのは、何が買えるか知るためだ。


 人を数えるのは。


「……分かりません」


 リュカは言った。


「でも、数えたいので」


 女は長いこと黙っていた。


 それから、戸の隙間を少しだけ広げた。


「あたしと孫が一人。二人だよ」


「二人」


「孫は熱を出してる。だから戸を開けなかった」


「……ミラさんに言います」


「薬房の娘かい。薬は燃えたんだろう」


「手はあります」


 女はまた黙った。


 それから、小さく頷いた。


 四十八。


 女は戸を閉める前に、もう一度だけ言った。


「……孫が起きたら伝えるよ。数えに来た子がいたって」


「はい」


「あの子熱で寝てるあいだに街が減っていくのを知らないからね」


 戸が閉まった。


 閂の音が内側でした。

読んで頂きありがとうございます。

引き続き1話ずつ毎日更新していきます。

現在4部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。


基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!


少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!


ブクマやお気に入り登録していただけますと今後の執筆の励みになります(´∀`*)

よろしければ是非応援頂けますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。