幕間 「嘘つきの棚」
只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ
どうストーリーが進んで行くか乞うご期待!!
現在は、第4部終盤の執筆に取り掛かっております!
残すは5、6、7部。
先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)
皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!
〔ミラの記録の束の薬の効き目を書いた紙のあいだに挟まれていた一枚。鍛冶場の帳簿用の紙の余り。表と裏に小さな字で行を詰めて書いてある。ところどころ字が左に傾いている〕
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焼けてから七日目夜
宿の土間。梁の上の鳥。
リュカが下の市からもらってきた。灰色。掌に乗る大きさ。
リナンが名前をつけた。セイル。
夜、土間でイサさんと上の子の布を替えていたら、梁の上から声がした。
聞いた音をそのまま言う。
声も息の混じり方もそのまま。夜にまたヴェスナさんの声で「羊だよ」と言ったとき、ヴェスナさんがまた頷いていた。
夜になると、昼に聞いた音を順番に言う。
それが終わると、知らない爺さんの声で長い話を始める。
リュカによるとザッハという人。下の市で古い本を売っている。四十年、誰にも話を聞いてもらえない人。
市の人はその人の棚を「嘘つきの棚」と呼ぶ。
リュカは話を最後まで聞いたらしい。
それで鳥をもらった。
爺さんの話は嘘だと言われている。
嘘かどうかは私には分からない。
分からないものは書いておく。
効いたのも、効かなかったのも書くのと同じ。
昼に聞いた音は書かない。籠の綱の音や下の市の人の声やドランさんの声。
爺さんの話のところだけセイルが言ったとおりに書く。
あいだに挟まるリュカや市の人の声も、話に関わるところだけ書く。
区切りはセイルが息を継いだところ。
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一
あれはなわしがまだ髭が顎の先までしかなかった頃の話だ。
わしは、北の浮島のそのまた北の名前のない岩場で一冬を過ごしたことがある。
〔ここで人が通り過ぎる足音。三人ぶん〕
その岩場には、昔石がいくらでも採れる山があってな。
掘っても掘っても石が出た。
ところがある年からぱったり出なくなった。
皆掘り尽くしたと言った。
掘り尽くしたんじゃない。
〔ここで声が少し低くなる。セイルの声も同じだけ低くなる〕
降らなくなっただけだ。
〔ここでリュカの声。「……降らなくなった」〕
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二
あれは焼けるべくして焼けたんだ。
わしは二十年前にそう言った。
三番街の結界は、端の端で細い柱一本で繋がっとる。
あれが倒れたら、全部なくなるとな。
〔ここでリュカの声。「……言ったんですか」〕
言った。
誰も聞かなかった。
〔ここで同じ「誰も聞かなかった」をもう一度。二度目のほうが少しだけ小さい。セイルが前の日に自分で言ったのをまた拾ったのだと思う〕
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三
〔ここできいという音。台の脚がきしむ音だとリュカが言っていた。本物の台より少しだけ高い〕
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四
わしが若い頃南の塩の湖のほとりである一族の話を聞いた。
代々星の降るのを追いかけとる一族でな。
その一族は何代にもわたって、ある石を見つけとった。
どんな願いでも、一つだけ叶える石だ。
見つけた者は何でも願える。
金でも命でも失くしたものでも。
ところがその一族は誰一人として、願わなかった。
〔ここでリュカの声。「……見つけたのに」〕
見つけたのに。
何代も。
見つけては願わずに、そのまま死んだ。
〔ここでリュカの声。「なんで」〕
知らん。
理由はどこにも書いてなかった。
一族の記録には、見つけた日と場所とそれから願わなかったとだけ書いてあったそうだ。
代々同じ書き方で。
嘘だと思え。
皆そう思っとる。
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五
〔ここからリュカが聞いていない話。リュカは知らないと言った。セイルが前から覚えていた話だと思う〕
あれはな東の、
〔ここで女の人の声。「あらいくら」。爺さんの声で「売り物じゃない」。女の人の足音が遠ざかる。話はそこで途切れる。続きはない〕
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六
あれはなわしの父親のそのまた父親の代にな、
〔ここで子供の笑い声。三つ。走っていく足音。話はそこで途切れる。続きはない〕
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七
あれはな、
〔ここで爺さんの咳。長い。それきり何も言わない。しばらくして、台のきしむ音〕
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八
〔最後にいつもこれを言う〕
一冊も売れん。
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焼けてから八日目夜
布を替えにまた土間へ行った。
同じ。
一から八まで同じ順番で同じ言葉で。
一言も違わない。
二が終わったところでヴェスナさんが土間の隅で「そうだよ、あの柱」と言った。
セイルはそれも拾った。三が終わったあとにヴェスナさんの声で言った。
リナンは四のところで毎晩手を止める。
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焼けてから九日目夜
布を替えに行った。
同じ。
五と六と七は続きがない。
続きのない話が三つ。
爺さんが話し始めて、誰かに邪魔されて、そこで止めた話。
止めたまま、四十年、続きを誰にも話していない話。
セイルは止まったところで止まる。
続きを知らないから。
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焼けてから十日目夜
リュカに訊いた。
四の話どう思うと。
「分からない」と言った。
「嘘だと決める理由も、本当だと決める理由もない」と。
リナンにも訊いた。
四のところでどうして手を止めるの、と。
リナンは少し考えて言った。
「願わなかった理由がどこにも書いてないのが」
そこで言うのをやめた。
セイルはその言いかけた言葉も拾った。
次の夜八のあとにリナンの声で言った。
「願わなかった理由がどこにも書いてないのが」
リナンはそれを聞いて、梁を見上げていた。
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〔紙の裏下の余白に小さく〕
母は効かなかった薬ほど長く書いていた。
効いたものは一行でいい。
効かなかったものは、なぜ効かなかったのかを書けるだけ書く。
書けなかったら、書けなかったと書く。
爺さんの話も同じようにしておく。
本当だった話は一行でいい。
嘘だった話はなぜ嘘だったのかを。
どちらか分からない話は分からないと書いて、とっておく。
いつか、誰かが続きを持ってくるかもしれないから。
読んで頂きありがとうございます。
引き続き1話ずつ毎日更新していきます。
現在4部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。
基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!
少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!
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