嘘と、棚①
只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ
どうストーリーが進んで行くか乞うご期待!!
現在は、第4部終盤の執筆に取り掛かっております!
残すは5、6、7部。
先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)
皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!
「荷が一つある」
詰所でドランが言った。
焼けてから七日目の朝だった。
リュカは籠の前で足を止めた。
「一つ」
「下からの荷だ。上の商会が焼ける前に頼んでた分が今ごろ届いた。下の受け渡し場まで取りに行って、上げてくる」
「行きます」
「分かってる」
ドランは籠の戸を開けた。
「今日は籠は二度しか動かさん。下りと上り。それだけだ」
「二度」
「昼までに戻れ。戻らなかったら置いていく」
「戻ります」
リュカは籠に乗った。
戸が閉まった。
ドランが止め木の柄に手をかけた。
籠が下りはじめた。
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八日ぶりの籠だった。
鉄の格子の向こうを摩天楼の壁が上へ流れていく。暗い。ところどころに壁の割れ目から光が差している。
下りるときの腹の底が持ち上がる感じ。
三年、一日に何度も味わってきた感じだった。
八日ぶりに味わうと少しだけ新しかった。
籠は途中で一度速さを落とした。
ドランが止め木を引いたのだ。
それから、また下りはじめた。
前はこんなところで速さを落とさなかった。
――減らしてる。
籠の回数だけではない。速さも減らしている。
何が持たないのかドランは言わなかった。
リュカも訊かなかった。
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地上層の受け渡し場は湿っていた。
天井が低く木の梁で組んである。壁に苔がついている。空気が重くて、息を吸うと喉の奥に水気が張りつく。
三年、この空気を吸ってきた。
八日ぶりに吸うと少しだけ胸が詰まった。
受け渡し場の奥に荷が一つ置いてあった。
木箱だった。縄が十字に掛けてある。荷札が縄の結び目に挟まっている。
字は読めない。数字は読める。十一。重さだ。十一貫。
「兄ちゃん」
声がした。
岩人の男が荷の脇に立っていた。
バルだった。
「……生きてたか」
「生きてます」
「さんは」
「……要らないですね」
バルは鼻で息を吐いた。笑ったのかどうかは分からなかった。
「上が焼けたって聞いた」
「焼けました」
「三番街か」
「三番街です」
バルはしばらく黙っていた。
荷札に印を押した。一つは受け取りの証。もう一つは日付。
日付の駒は今日の日付だった。
「お前の寝床は」
「半分残りました」
「そうか」
バルは木札をリュカに渡した。
「……鎌翼が上に行ったって話も聞いた」
「一羽落としました」
バルが顔を上げた。
「お前がか」
「杭で」
バルはリュカの肩の袋を見た。投槍器の柄が袋の口から出ている。
「前に話したな。鎌翼の話」
「聞きました」
「翼の縁が鎌みたいだって」
「そのとおりでした」
バルはそれ以上は何も言わなかった。
次の荷の確認に戻った。
リュカは木箱に縄を掛け直して、背負い紐を肩に回した。
十一貫。重いが担げない重さではない。
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籠は昼までに戻ればいい。
日の高さを受け渡し場の入り口から見上げた。地上層の空は、摩天楼の足元のほうだけ広く開けている。
まだ朝だった。
昼までには時間がある。
リュカは、荷を受け渡し場の隅に置かせてもらって外へ出た。
市は受け渡し場から坂を少し下った先にある。
杭の値段を確かめておきたかった。
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地上層の市は広かった。
三番街の路地が十本は入る広場に屋根を張った台が何十と並んでいる。食べ物の台。布の台。石の台。金物の台。
焼ける前と同じだった。
上の街が焼けても、下の市は何も変わっていなかった。
それが少し変な感じがした。
台の前で人が値を言い合っている。子供が走り回っている。焼いた肉の匂いがする。麦のパンが台の上に山になって積んである。
パンの台の板に数字が書いてあった。
三。
上では七だった。
焼ける前は上でも三だった。
焼けてから上へパンを運ぶ者が減った。籠の回数も減った。減ったぶんだけ上のパンは高くなった。
リュカはパンの山から目を離した。
六枚でここなら、パンが二つ買える。上なら一つも買えない。
懐に入れて籠に乗れば、運賃はかからない。運賃は荷にかかる。荷運びの懐の中身にはかからない。
二つ買えば今夜と明日の鍋にパンが入る。
だが、二つ買えば杭は買えない。
金物の台は市のいちばん奥にあった。
鉄の釘。鉄の輪。鍋の蓋。細い鉄の棒が束になって立ててある。
その束の中に見慣れた形があった。
細い鉄芯に木を巻いた指二本分の太さの棒。
杭だった。
台の脇に板が一枚立てかけてある。数字が書いてある。
五。
――五シャルド。
焼ける前と同じ値段だった。
懐には六枚ある。
杭なら一本。パンなら二つ。
どちらかしか買えない。
杭を買ったら一枚になる。パンは一つも買えない。
リュカは杭の束を見ていた。
台の奥の男がちらりとリュカを見た。
買うのか買わないのかという目だった。
リュカは杭から目を離した。
――荷を上げて日当が出てから。
日当が出るかどうかは、ドランは言っていなかった。
出なかったら、どちらを先に買ったかで明日が変わる。
決められなかった。
決められないまま、リュカはどちらも買わずに、台の前を離れた。
来るときに通ったパンの台のほうも、振り返らなかった。
読んで頂きありがとうございます。
引き続き1話ずつ毎日更新していきます。
現在4部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。
基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!
少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!
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