十日目と、何も②
只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ
今はまだ第1部1章で、まだ物語の序章ですので大きな変化が見られるのをこうご期待!!
現在は、第4部終盤の執筆に取り掛かっております!
残すは5、6、7部。
先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)
皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!
空が白みはじめた。
リュカは石垣の前にしゃがんだ。
昨日は雨が降った。夜のうちに上がって、土が湿っている。
――今日は出る。
指で掘る。爪の間に土が入る。冷たい。
掘るのは指だけだ。道具を使うと、掴む感触が分からなくなる。
雨の翌日は出やすい。雨が土を洗って、重いものが下に残るからだ。
理屈は分かっていない。だがそうだと知っている。
三つ出た。
一つは石英。透ける。よくある。
二つ目は砂利。角が残っている。割れて間もない。
三つ目で、指が止まった。
青みのある小さな粒だった。角が取れている。長く水に洗われた形だ。
水筒の水を少し垂らす。今日は荷が三つしかない。惜しむ理由がない。
土が黒くなり、粒が濡れた。
光にかざす。
透けない。
斜めにすると、内側の一点だけが光った。
――これだ。
二十七回、同じことを思ってきた。
二十七回とも外れた。
それでも「これだ」と思う。思わなければ、試す気にならない。
――期待しないと決めてるのにな。
決めていても、掘り出した瞬間だけは思ってしまう。
彼は石を布で拭いて、懐に入れた。
次に試す石が決まった。
だがその前に、今日の分を終わらせなければならない。
---
杭を片づけていると、子供が二人来た。
昨日は誰も来なかった。一昨日は四人いた。
「兄ちゃん」
「なに」
「これ、見て」
一人が手を開いた。
小さな粒が一つ乗っている。灰色で、表面がざらついている。
リュカは受け取って、光にかざした。
透けない。
――似てる。
自分が十日間試していた石に、よく似ていた。
「どこで拾った」
「水路の脇」
「いつ」
「昨日」
彼は石を返した。
「持っとけ」
「当たり?」
「分からない」
「なんだよ」
子供は不満そうな顔をした。
「兄ちゃん、いつも分からないって言う」
「分からないからだ」
「じゃあ誰が分かるんだよ」
リュカは答えられなかった。
鑑定所なら分かる。だがこの街に鑑定所はない。上にはある。行くには四百シャルド要る。
――誰も分からないんだ。
この街では、誰も分からない。
十日試して、何も起きなければ外れ。それが唯一の方法だった。
「十日持て」
「十日?」
「肌に当てて、十日」
「長いよ」
「長い」
彼は杭の袋を担いだ。
「でも、それしかない」
子供たちは石を握って、走っていった。
---
日が昇りきる少し前に、リナンが来た。
乳鉢を抱えている。薬房の使いの前に寄ったらしい。
「おはようございます」
「うん」
「今日、早いですね」
「うん」
彼女は空き地の隅を見た。子供はまだ来ていない。ルフは石垣の下で丸くなっている。
「何かあるんですか」
リュカは手を止めた。
「なんで」
「顔が」
リナンは自分の顔を指した。
「いつもと違います」
「そうか」
「はい」
彼は少し考えた。
言う必要はない。言っても何も変わらない。
だが訊かれた。
「今日、十日目だ」
「十日目」
「石を試して」
リナンは目を見開いた。
それから、乳鉢を抱え直した。
「じゃあ、今日……」
「外れる」
言い切った。
「まだ分からないですよ」
「分かる」
「なんでですか」
「九日間、何も起きてない」
彼は袋の紐を締めた。
「十日目に起きたことはない」
「一度も?」
「一度も」
リナンは何か言いかけて、やめた。
それから、別のことを訊いた。
「外れたら、どうするんですか」
「袋に入れる」
「捨てないんですか」
「捨てない」
「……そうですよね」
彼女は自分で頷いた。
初めて袋を見せた日に、同じ話をしている。置いて、二歩歩いて、戻って、拾う。毎回そうなる、と言った。
「あの」
「うん」
「見ててもいいですか」
「何を」
「外れるところを」
リュカは彼女を見た。
「見て面白いもんじゃない」
「面白いかどうかは、見てから決めます」
二度目だった。
初めて会った日にも、同じことを言われた。
---
仕事に行った。
荷は三つ。上に二つ、下に一つ。
積み方はいつも通りにした。
重いものを下、軽いものを上。三つなら縄は一本でいい。
籠が上がりはじめる。
綱が鳴った。低い音だった。
リュカは顔を上げた。
――低い。
昨日、油を差した。差した直後は低くなる。油が繊維に染みて、重くなるからだ。
三日ほどで抜けて、また高くなる。
だから低いのは正常だ。
――切れる前も低い。
ドランはそう言った。繊維が緩むと、重い音になる。
油を差した直後の低さと、緩んだ低さは違う。
違うはずだ。
だが彼には区別がつかなかった。
三年聞いていて、まだ分からないことがある。
――訊けばいい。
帰ったら訊こうと思った。
籠の中で、彼は石を出さなかった。
いつもなら袋を開けて、形を確かめる。今日はやらなかった。
やれば、十日目を意識していることになる。
――意識してる。
分かっていた。
だが形だけでも、いつも通りにしておきたかった。
アステル区で荷を下ろした。灯柱が点いている。昼でも消えない。
白い衣の男が、通りの向こうを歩いていた。灯柱に触れながら。
リュカは見ていた。
触れると光が強くなる。毎回そうだ。
――あの人は、外れたことがあるんだろうか。
継いだ側だ、とあの男は言わなかった。だが親も、そのまた親も同じことをしていたと言った。
継いだなら、外れはない。
石が来て、宿って、それで終わりだ。十日数える必要がない。
――羨ましいか。
考えてみた。
答えが出なかった。
受け渡しの男が、日付の印を押した。
今日の日付だ。替え忘れていない。
――今日で十日。
数えていたわけではない。
だが日付を見て、そう思った。
「兄ちゃん」
男が言った。
「はい」
「今日、静かだな」
「そうですか」
「いつもは三回くらい何か言う」
「三回」
「数えてないが、そのくらいだ」
リュカは自分が何を言っているか、数えたことがなかった。
三回。
「……すみません」
「謝ることじゃない」
男は木札をよこした。
「静かなのは、たいてい何かある日だ」
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地上層で一つ下ろした。
バルがいた。
「一つ、確かに」
「はい」
「リュカ」
名前で呼ばれた。三日目だ。まだ慣れない。
「はい」
「今日は市に寄らんのか」
「寄りません」
「そうか」
男は印を押しながら言った。
「石屋のじいさんが、お前を待ってたぞ」
「待ってた?」
「先週の話の続きがあるとか言ってた」
リュカは籠のほうを見た。次の便まで、小半時ある。
行けば聞ける。
だが今日は行きたくなかった。
――なんでだ。
自分でも分からない。だが行きたくなかった。
「今度にします」
「そうか」
バルはそれ以上言わなかった。
リュカは空の籠で戻った。
読んで頂きありがとうございます。
引き続き1話ずつ毎日更新していきます。
現在4部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。
基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!
少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!
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