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星降譚―STELLA NOMINA―  作者: うめこまち
第一部 十日目には何も

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28/161

十日目と、何も①

只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ


今はまだ第1部1章で、まだ物語の序章ですので大きな変化が見られるのをこうご期待!!


現在は、第4部終盤の執筆に取り掛かっております!

残すは5、6、7部。

先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)


皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!

 十日目の朝は、いつもより早く目が覚めた。


 まだ暗い。屋根の裏の板の隙間から、光は入っていない。


 リュカはしばらく天井を見ていた。


 シャツの内側に手を当てる。


 灰白色の石がある。十日前から、そこにある。


 ――今日で終わりだ。


 何も起きていない。九日間、一度も。


 だが十日目に何かが起きる可能性は、理屈の上では残っている。


 起きたことはない。二十七回、一度も。


 それでも十日待つのは、そう決めているからだ。


 誰が決めたわけでもない。十二歳のとき、市の売り子が客に「十日だ」と答えているのを横で聞いた。それだけだ。


 本当に十日なのかは知らない。十一日目に宿る石があるかもしれない。九日で分かる石があるかもしれない。


 だが十日と聞いたので、十日にした。


 二十七回、十日を数えた。


 二百七十日。三年のうちの、およそ四分の一。


 ――考えたことなかったな。


 昨日までは考えたことがなかった。


 今朝は考えた。十日目の朝だからだ。


---


 彼は起き上がらなかった。


 寝床の中で、石を指で押さえた。


 温かい。肌の温度になっている。半日身につけていれば、必ずそうなる。


 ――昨日と同じだ。


 昨日も一昨日も、同じだった。


 三日目に少し熱い気がしたことがある。四日目には元に戻っていた。気のせいだった。


 三年、そういう気のせいを何十回も味わってきた。


 だから期待しない。


 期待しないと決めているのに、十日目の朝は必ず早く目が覚める。


---


 梯子を降りた。


 三段目が鳴る。緩んでいる。彼が来たときから、ずっとそうだ。


 土間に灯りがあった。ヴェスナが湯を沸かしている。


「坊主」


「うん」


「早いね」


「うん」


 それだけだった。


 彼女は「今日も早いね」とは言わなかった。


 いつもと少し違う。だが理由は訊かなかった。


 訊けば答えるかもしれない。だが訊く用がない。


 ――用がない、か。


 昨日、上の受け渡し場で同じことを考えた。名前を訊こうとして、訊けなかった。


 結局、向こうから訊かれた。


 こちらから訊くのは、まだできない。


 リュカは水瓶から柄杓一杯だけ飲んだ。


 冷たい。夜のうちに冷える。


 戸口を出るとき、ヴェスナが背中に言った。


「坊主」


「うん」


「戸は閉めていくんだよ」


「うん」


 いつもの小言だった。


 リュカは戸を閉めて、外に出た。


---


 路地はまだ暗い。


 鍛冶場だけ煙が上がっている。ザヴのところは夜中も誰かが見ている。


 空き地まで五十歩。


 数えて歩いた。


 着いてから、彼は立ったまま空を見た。


 摩天楼の腹に塞がれて、星は見えない。いつも通りだ。


 だが今朝は、雲の切れ目から空の端が見えた。


 東のほう、屋根と屋根の隙間。細い帯のような空。


 まだ暗い。紺色に近い。


 そこに、星が一つ見えた。


 リュカは足を止めた。


 この街から星が見えたことは、ほとんどない。三年で三度か四度。全部、雨上がりの朝だった。


 ――昨日、雨が降ったからだ。


 空気が澄んでいる。だから見える。


 一つだけ。


 しばらく見ていた。


 やがて空が白みはじめて、見えなくなった。


 消えたのではない。明るくなって見えなくなっただけだ。


 あそこに、まだある。


 ――降ってくるのか。


 あの星が降るわけではない。星降りで落ちるのは、もっと小さいものだ。


 だが、どこから来るのかは同じはずだ。


 空の上。摩天楼のさらに上。


 見たことがない。行ったこともない。


 ――ドランさんは見たのか。


 訊いていないことを思い出した。訊く機会はいくらでもあったのに。


 ――何も起きない。


 分かっている。


 彼は杭の袋を下ろした。


---


 練習は普段通りにやった。


 四十本を三巡。二十歩、三十五歩、五十歩の順で撃って、走って拾う。


 十日目だからといって、何も変えない。


 変えれば、変えたせいで何かが起きたと思ってしまう。あるいは起きなかったと思ってしまう。


 どちらも困る。


 だから普段通りにやる。


 一巡目、四十本全部刺さった。


 これは珍しい。三年で何度あったか覚えていないが、月に一度あるかどうかだ。


 ――風がないからだ。


 朝のうちは路地から風が吹き上がる。今日は吹いていない。雨の翌日は風が弱い。


 二巡目、一本落とした。三十五歩で腕の振りが早すぎた。


 落ちた杭を拾いに行きながら、彼は自分の腕を見た。


 振りが早くなるのは、急いでいるときだ。


 ――急いでる。


 何を急いでいるのかは分からない。今日は荷が三つしかない。時間はある。


 だが早かった。


 三巡目は意識して遅くした。


 また全部刺さった。


 ――今日はいい。


 だが「今日はいい」と思うこと自体が、十日目を意識している証拠だった。


 彼は杭を袋に戻した。

読んで頂きありがとうございます。

引き続き1話ずつ毎日更新していきます。

現在4部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。


基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!


少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!


ブクマやお気に入り登録していただけますと今後の執筆の励みになります(´∀`*)

よろしければ是非応援頂けますと幸いです。

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