幕間 「拾いはじめた日」
只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ
今はまだ第1部1章で、まだ物語の序章ですので大きな変化が見られるのをこうご期待!!
現在は、第4部終盤の執筆に取り掛かっております!
残すは5、6、7部。
先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)
皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!
いつ拾いはじめたのかは、覚えていない。
最初の一つが袋のどれなのかも分からない。二十七個のうち、拾った日を覚えているのは五つか六つだ。残りは、気づいたら入っていた。
だが「拾おう」と思った日のことは、一つだけ覚えている。
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十二歳のときだった。
まだ荷運びをしていない。宿にもいない。
どこで寝ていたかは覚えている。三番街の東の外れに、屋根だけ残った建物があった。壁が半分崩れていて、誰も住んでいない。雨の日は隅に寄れば濡れなかった。
食い物は、市の裏で拾うか、人の使いをして分けてもらうかだった。桶を運ぶ、荷を押す、猫を捕まえる。子供にもできる用事は、この街にいくらでもある。
三年、そうしていた。
そのころ、彼は市の裏手をよく歩いていた。
捨てられたものが落ちているからだ。
壊れた道具、割れた皿、使えなくなった革。拾って直せば売れることがある。売れなくても、自分で使える。
その日も同じことをしていた。
そして、石を見つけた。
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青い石だった。
小指の先ほどで、透けていない。角が丸い。長く水に洗われた形だった。
側溝の縁に落ちていた。
誰かが捨てたのだ、とすぐ分かった。市で買って、試して、外れて、帰り道に捨てた。そういう石が市の裏手には落ちている。
珍しくもない。
彼はそれまで、何度も見たことがあった。見て、通り過ぎていた。
その日は、拾った。
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なぜ拾ったのかは、いまでも説明できない。
当たると思ったわけではない。市の裏に落ちている石が当たるなら、誰も金を出さない。
欲しかったわけでもない。持っていて何かの役に立つとも思わなかった。
ただ——
日が傾いていて、側溝に光が差していた。その中で、青が濃く見えた。
それだけだった。
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その晩、彼は石を握って寝た。
やり方は、シャルディアの市で聞いたことがあった。
下層の市は小さい。石を扱う店は一軒しかなく、台も一つきりだ。並んでいるのは、上で売れ残ったものが流れてきた分だと言われている。
その台の前で、石を買った客が売り子に訊いているのを横で聞いた。「いつ分かるんだ」と。売り子は「十日だ」と答えていた。肌に近いところに当てて、十日。それで何も起きなければ外れ。
誰に向けられた言葉でもなかった。
だが彼は覚えていた。
次の朝も持っていた。
三日目に、誰かに見せた。名前は覚えていない。同じように市の裏を歩いている子供だったと思う。
「それ、当たり?」
「分からない」
「宿ってないなら外れだろ」
「うん」
「捨てれば」
彼は捨てなかった。
その子は「変なやつ」と言って、どこかへ行った。
それきり会っていない。
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十日後、何も起きなかった。
外れだった。
彼は石を側溝に戻しに行った。元の場所に置いて、帰ろうとした。
二歩歩いて、戻った。
拾った。
――なんでだ。
自分でも分からなかった。置いたときには、もういいと思っていた。だが二歩歩いたところで、置いてきた場所が気になった。
あの石は、あそこで誰にも見られずに、また雨に流される。
それが嫌だった。
嫌だと思う理由も分からなかった。
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二つ目を拾ったのは、その一月後だった。
白っぽい石で、これは市の裏ではなく、水路の脇に落ちていた。誰かが落としたのかもしれないし、最初からそこにあったのかもしれない。
十日試して、外れた。
捨てなかった。
三つ目のとき、彼は袋を作った。布を縫い合わせただけの粗いものだ。縫い目が曲がっていて、一年で破れた。
二つ目は、拾った革の切れ端で作った。これは二年もった。
いま使っているのは三つ目だ。荷運びを始めてから、革の端切れを買って作った。八シャルド。
道具に金を使ったのは、杭と、これだけだ。
三つ入れると、音が鳴った。
からから、と。
その音が、少し気に入った。
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拾う場所は、少しずつ分かってきた。
雨の翌日の崩れた土。側溝の縁。市の裏手。水路の合流点。
どこに落ちやすいかを覚えると、見つかる数が増えた。
増えると、袋が重くなった。
重くなるのは悪くなかった。
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十四歳の終わりに、十七個。
十五歳の春に、二十一個。
一つも宿らなかった。
そのころには、何人かに言われるようになっていた。
「まだ拾ってるのか」
「そろそろ諦めたらどうだ」
「金がないなら、働けばいい」
最後のは正しかった。だから働いた。
だが拾うのはやめなかった。
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働きはじめて、一つ分かったことがある。
金が入ると、石が買える。
日当四十シャルド。市で一番安い未鑑定の石が、一ステラ——百シャルド。二日半働けば買える。
買えば、拾うより早い。
市の前で立ち止まるのは、癖になっていた。
台に並んだ石を見て、値札を見て、懐の金を数える。荷運びを始めてから、何十回とやった。
四十シャルド。足りない。
だが三日待てば足りる。
――三日。
毎回、その場を離れた。
なぜかは、これも説明できない。
買えば早い。早いほうがいいはずだ。だが買った石が宿っても、それは買った石だ。
地上層の市にも、石を売る店がある。そちらは大きい。台が三つあって、値札の桁も違う。
そこでも同じことをした。見て、値札を見て、離れる。
三年やっていると、店主に覚えられる。
拾った石ではない。
違いがあるのかどうか、彼には分からなかった。分からないが、違う気がした。
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ヴェスナに一度だけ、近いことを言われたことがある。
二年前だ。袋の中を見せたときに。
「坊主」
「うん」
「これ、全部拾ったのかい」
「うん」
「買ったのは」
「ない」
老婆はしばらく黙っていた。
それから、こう言った。
「買ったほうが早いよ」
「うん」
「知ってて拾ってるのかい」
「……うん」
「そうかい」
それだけだった。
叱られなかったし、褒められもしなかった。ただ「そうかい」と言って、箒を動かしはじめた。
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いま、袋には二十七個ある。
拾った日を覚えているのは五つか六つ。残りは、気づいたら入っていた。
最初の一つがどれなのかも、もう分からない。
青い石は三つある。どれが十二歳のときのものか、区別がつかない。
――同じに見える。
三年前に拾ったものも、先月拾ったものも、並べれば同じだ。
色も、大きさも、宿らなかったという事実も。
全部同じだった。
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だから、数えない。
数えると、順番が見える。順番が見えると、最初の一つを探したくなる。
探しても分からない。
分からないものを探すのは、彼の得意なことのはずだった。十日待って、外れて、また拾う。それを何年もやってきた。
だが袋の中だけは、探さない。
中に何が入っているかは、もう知っている。
二十七個。全部外れ。全部、捨てられなかったもの。
それで足りていた。
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夜、彼は袋を枕の下に押し込む。
からから、と鳴る。
三つのときと同じ音がする。数が増えても、音は変わらない。
その音を聞いてから、目を閉じる。
三年、毎晩そうしている。
いつからそうしているのかは、覚えていない。
読んで頂きありがとうございます。
引き続き1話ずつ毎日更新していきます。
現在4部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。
基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!
少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!
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