光と、油①
只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ
今はまだ第1部1章で、まだ物語の序章ですので大きな変化が見られるのをこうご期待!!
現在は、第4部終盤の執筆に取り掛かっております!
残すは5、6、7部。
先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)
皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!
朝の練習を終えてから、詰所へ行った。
四十本を三巡。百二十本。二十歩、三十五歩、五十歩の順で撃って、走って拾う。
子供は来なかった。昨日は四人いたが、今日は誰も。
石垣の上が空いていると、少し静かだった。
ルフは来ていた。
いつも通り、的の下に先回りしている。撃つ前に動くので、どこを狙うか分かっているらしい。
だが今日は途中で興味を失った。
二巡目の半ばで石垣の下に潜り込み、それきり出てこない。
覗くと、丸くなって寝ていた。
「先に帰ってろ」
通じない。だが起きなかった。
――点をつけられないな。
昨日、勝手に採点されたのを思い出した。中心なら三点、外れて刺さったら一点。三百二十点で「まあまあ」と言われた。
一度きりの遊びだ。子供が来なければ、それきりになる。
だが今日、数えようとしている自分に気づいた。
――数えなくていい。
三年、誰にも数えられずにやってきた。
杭を拾い終えてから、石垣の前にしゃがんだ。
いつもなら掘る。雨の翌日ならなおさらだ。
だが昨日は晴れていた。土が乾いている。乾いた土からは出ない。
濡らせば分かる。いつもはそうする。
だが今日は荷が五つある。地上層まで下りれば、戻るのは日が傾いてからだ。
水筒は一つきりだった。
――今日はなしだ。
手をはたいて立ち上がった。
リュカは杭を袋に戻した。
石垣の下を覗くと、まだ寝ていた。
――置いていくか。
今日は荷が多い。地上層まで下りるかもしれない。
軒下に戻る道は覚えている。来て一週間ほどだが、もう間違えない。
彼は坂を上がった。
---
その日は、荷が五つあった。
上に三つ、下に二つ。朝のうちに詰所へ行くと、ドランが籠の脇で綱を手繰っていた。
「五つだ」
「多いですね」
「星降りが近いからな。動かせるうちに動かす」
男は綱から手を離して、油のついた布を腰に挟んだ。
「上の連中は備蓄する。下の連中は売り急ぐ。両方が同時に来ると、こうなる」
リュカは木箱を数えた。五つ。大きさはばらばらだ。
「積み方」
「考えろ」
それだけ言って、ドランは籠の下へ潜った。
---
重いものを下、軽いものを上。これは基本だ。
だが今日は五つある。籠の底の面積では四つしか並ばない。一つは二段目になる。
リュカは箱を順に持ち上げて、重さを確かめた。
一つ目、重い。二つ目、もっと重い。三つ目と四つ目は同じくらい。五つ目が一番軽い。
――軽いのを上。
だが軽い箱は、揺れたときに動く。動けば下の箱の角に当たる。当たれば傷がつく。
彼は五つ目の箱を振ってみた。
中で音がした。硬い音。詰め物がない。
――割れ物ではない。
なら上でいい。
だが念のため、荷札を確かめた。
「アステル区第七通り」。番地がない。個人宛てだ。
個人宛ての荷は、たいてい小さくて軽い。だが中身が何かは書いていない。書けば責任が生じるからだ。
――「生」の字はない。
それだけ確かめて、彼は箱を上に乗せた。
積んで、縄を掛けた。二本を交差させ、上の箱だけ別に一本。片手で解ける結び方で締める。
最後に籠の四隅を見た。均等。
「行きます」
「おう」
籠が上がりはじめた。
---
上りは小半時。
リュカは箱の脇に膝をついて、長物の代わりに五つ目の箱を押さえた。
壁が流れていく。継ぎ接ぎの石積み。下水の樋。三番街を出て、二番街の裏を通り、中層へ入る。
中層は静かだ。
人が住んでいない層で、配管と支柱しかない。三番街の上、アステル区の下。どちらの街にも属さない厚み。
時々、保守の人間が足場を歩いているのが見える。彼らも荷運びと同じで、誰とも口をきかない。
一度、手を振られたことがある。三年で一度きりだ。
振り返したかどうかは覚えていない。たぶん、振り返さなかった。
――なんで振らなかった。
今になって思う。
その日は荷が重くて、片手が塞がっていた。それだけの理由だったかもしれない。
綱が鳴った。
高い音。乾いている。
――昨日差したのに。
油は三日ほどで抜ける。特に晴れが続くと早い。ドランは二月に一度と言うが、実際はもっと頻繁に差している。
リュカは音を数えた。
滑車が一回転するごとに、同じ間隔で鳴る。
一、二、三。
三十まで数えると、中層の半ばに来る。六十で抜ける。九十で光が入る。
三年乗っていれば覚える。時計を持っていなくても、音で分かる。
――百二十で着く。
実際に数えたことは一度しかない。二年前の冬、綱が凍って速さが落ちた日だ。あのときは百六十だった。
速さが変われば数も変わる。だから数は目安にしかならない。
それでも数える。
数えていないと、小半時が長い。
八十七で、光が入ってきた。
今日は速い。
---
アステル区の受け渡し場は、いつも通り明るかった。
灯柱が切れ目なく並んでいる。昼でも点いている。星の光で満ちるので、消える心配をしなくていい明かりだ。
リュカは荷を下ろして、台に並べた。
三つのうち二つは商会宛て。一つは個人宛てで、番地がない。
受け渡しの男が印を押した。
「三つ、確かに」
「はい」
それで終わりだ。
この男とも三年の付き合いになるが、名前を知らない。向こうも知らない。
――訊けばいいのか。
昨日、トトに「三年いて?」と呆れられたのを思い出した。
リュカは口を開きかけた。
「あの」
「なんだ」
「……いえ」
男は怪訝そうな顔をして、次の荷を確認しはじめた。
リュカは籠へ戻った。
訊けなかった。訊く用がないというより、訊き方が分からなかった。
だが台に並べた三つのうち、一つが残っていた。
番地のない個人宛ての箱だ。
「これは」
「そっちは持っていけ」
男が言った。
「第七通りだ。突き当たりの、扉が二つある家」
「届けるんですか」
「たまにある。受け取り手が取りに来ない荷は、運び屋が持っていく」
「運賃は」
「出ない」
男はあっさり言った。
「文句があるなら置いていけ。だが置いていった荷は、そのうち捨てられる」
リュカは箱を持ち上げた。軽い。
「行きます」
「そうか」
---
第七通りは、受け渡し場から二百歩ほどだった。
数えて歩いた。二百七歩。
突き当たりの家は、他と少し違っていた。
扉が二つある。片方は大きく、片方は小さい。小さいほうは人が屈まないと通れない高さだ。
リュカは大きいほうを叩いた。
返事がない。
もう一度叩く。やはりない。
小さいほうを見た。取っ手がない。押しても引いても動かなかった。
――留守か。
箱を置いていくか、持ち帰るか。
置いていけば、誰かが持っていくかもしれない。持ち帰れば、また運ぶことになる。
彼は箱を戸口の内側、雨の当たらない位置に置いた。
そして一歩下がって、もう一度見た。
――分かるだろうか。
置き場所を変えた。戸の正面、真ん中に。
これなら開けたときに必ず当たる。
彼は歩き出した。
二百七歩。数えて戻った。
読んで頂きありがとうございます。
引き続き1話ずつ毎日更新していきます。
現在4部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。
基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!
少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!
ブクマやお気に入り登録していただけますと今後の執筆の励みになります(´∀`*)
よろしければ是非応援頂けますと幸いです。




