四人と、ひとつの街 ③
只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ
今はまだ第1部1章で、まだ物語の序章ですので大きな変化が見られるのをこうご期待!!
現在は、第4部終盤の執筆に取り掛かっております!
残すは5、6、7部。
先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)
皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!
ルフは半刻ほどで動くようになった。
最初は首だけ。次に前肢。それから身体を起こして、周りを見た。
台の上で一度、伸びをした。前肢を伸ばして、背中を反らせて、尻尾の先まで伸ばす。それから身震いした。
鱗が擦れて、細かい音がした。
そしてリュカのほうへ歩いてきて、布から出て、彼の腕に前肢をかけた。
リュカは腹を見た。
「さっきの、貸してください」
ミラが糸を渡した。
彼は同じように垂らして、指で揺らした。錘が振れる。
一往復のあいだに、腹が二回上下した。
「二回です」
「朝は?」
「三回でした」
「じゃあ、遅くなったのね」
ミラが手を止めて、こちらを見た。
「……ちゃんと同じやり方で数えたのね」
「言われたので」
「言われてもやらない人のほうが多いわよ」
彼女は手を洗いながら言った。
「じゃあ、大丈夫」
「よかったですね」
リナンが言った。歌はもう止めている。
「うん」
「歌、効いたのかな」
「効いてた」
「本当ですか」
「止まった」
リュカはそれ以上言わなかった。
言うべきことがあった気もするが、うまく言葉にならなかった。
彼女の喉には石がある。三年、何も出ない石が。
だが、あの音は出た。
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「いくらですか」
リュカが訊いた。
ミラは手を拭きながら、少し考えた。
「薬は使ってない。飲ませる前に出たから」
「でも」
「道具はトトのだし」
「俺のじゃねえよ、鍛冶場のだよ」
「同じでしょ」
彼女は前掛けで手を拭き終えて、それから言った。
「いいわよ、今回は」
「よくないです」
「じゃあ何か持ってきなさい。物でいい」
「物」
「うちは金より物のほうが助かるの。薬草でも、布でも、何でも」
ミラは棚を見た。
薬草を干す棚だ。だが半分以上が空いている。
リュカは初めてそれに気づいた。
入ってきたとき、棚がびっしり埋まっているように見えた。だが上のほうだけだ。下の段は空で、干し場も半分しか使われていない。
「地上層から仕入れるんだけど、運賃が乗るから高くてね」
「いくらくらい」
「一束で十五。地上層なら八って聞くけど」
「倍近い」
「倍じゃないけど、まあ、そんなもんよ」
ミラは肩をすくめた。
「昇降機に乗せると、それだけで七シャルド乗るの。一束につき。運ぶ人がいないから」
リュカは黙った。
運んでいる。三年、毎日。
だが薬草は運んだことがない。荷札に「薬」と書かれた箱を運んだことはあるが、中身は見ない。誰に届くのかも知らない。
「……分かりました」
「期待してないから、気楽にね」
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外に出ると、日が高くなっていた。
トトが先に出て、井戸端で手を洗っていた。煤が落ちて、水が黒くなる。
「おい」
「なに」
「さっきは悪かった」
リュカは足を止めた。
「うわ、って言ったやつ」
「ああ」
「怖かったんじゃなくて、驚いただけだ」
「同じだろ」
「違う」
トトは水を止めて、手を振った。
「怖いのは、その、逃げるだろ。俺は逃げてない」
リュカは少し黙った。
二日前、街の子供に同じことを言った。逃げるのは戻ってこない。あれは戻ってくると。
「……そうだな」
「だろ」
「うん」
「じゃあいい」
トトは腰を伸ばした。
「あれ、名前あるのか」
「ルフ」
「誰がつけた」
「あの子が」
リュカが顎で示すと、リナンが薬房から出てきたところだった。布を畳んでいる。
「へえ」
トトはしばらく彼女を見て、それからリュカに向き直った。
「お前、あの子と一緒にいるの?」
「一緒にいない」
「毎朝、空き地にいるって聞いたぞ」
「……井戸端か」
「井戸端だ」
トトは笑った。
「この街、狭いからな」
トトは井戸の縁に腰かけた。
「お前、鍛冶場来ないよな」
「用がない」
「杭、直さないのか」
「自分で直してる」
「へえ」
彼は片眉を上げた。
「見せてみろよ」
リュカは袋から一本出した。木の軸に鉄芯が入っている。芯の周りを、細い紐で巻いて補強してある。
トトはそれを受け取って、光にかざした。
「……巻きが甘い」
「刺さる」
「刺さるけど、三十本に一本は折れるだろ」
「折れる」
「な」
彼は杭を返した。
「うちに来い。巻き直してやる」
「金が」
「四十本まとめて十シャルドだ」
「十」
「一本あたり四分の一シャルドだろ。**新品なら一本五シャルドだぞ**」
リュカは計算した。
四十本を十シャルドで巻き直せば、折れる本数が減る。今は月に六本ほど折れている。三十シャルドぶんだ。
巻き直して半分に減れば、十五シャルド浮く。差し引き五シャルドの得になる。
「……行く」
「おう」
トトは立ち上がって、前掛けの煤を払った。
「あと、あれな。竜のやつ」
「ルフ」
「そう。あれの爪、削ったほうがいいぞ」
「なんで」
「石を削ってるだろ。あれ、爪が減るんだ。減ると割れる」
「分かるのか」
「鍛冶と同じだ。削るもんは、削られる」
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その日の午後、リュカは詰所へ戻った。
ドランは籠の上にいた。滑車の点検をしている。
「終わったか」
「終わりました」
「治ったか」
「治りました」
「そうか」
男はそれ以上訊かなかった。
「荷は三往復ぶん残ってる。全部持ってけ」
「三往復」
「昼の分と、午後の分だ。遅れたぶん、まとめてある」
リュカは籠を見た。積み上げてある木箱が、いつもの倍近い。
「日当は」
「いつも通り四十だ」
「三往復なのに」
「一日は一日だろ。何往復しようが、日当は日当だ」
ドランは滑車から降りた。
「文句があるなら上に言え。俺が決めてるんじゃねえ」
「言いません」
「そうか」
男は工具箱を足で引き寄せた。
「まあ、休んだぶんが引かれてねえだけ、ましだと思え」
ドランは滑車から降りた。
「上の連中は、届いた数しか見ねえ。何時に届いたかは見ない」
「……ありがとうございます」
「礼を言うな。荷が減ってねえだけだ」
帰りに、地上層の市を回った。
この市は何度も通っている。だが立ち止まったことはなかった。荷を受け渡して、木札をもらって、次の籠を待つ。それだけだ。
今日は歩いた。
野菜が並んでいる。上層では見ない大きさの根菜が、山になって置いてある。値札が一シャルド。上層なら四シャルドはする。
肉を吊るしている店もあった。乾いた匂いがする。
薬草を売っている店は、市の端にあった。
束になったものが並んでいて、値札がついている。乾燥した葉が一束で八シャルド。根のついたものが十二シャルド。
――高い。
いや、と思い直す。ミラは十五だと言っていた。ここでは八だ。
**運賃の七シャルドが、そのまま差になっている。**
リュカは店先にしゃがんだ。
束を一つ手に取る。葉が乾いていて、指で押すと崩れそうだった。匂いを嗅ぐと、薬房と同じ匂いがした。苦い匂い。
「兄ちゃん、薬師かい」
店の女が声をかけてきた。
「違います」
「じゃあ誰に」
「知り合いに」
「病人かい」
「……いえ」
説明が面倒になって、そう答えた。
女は束をもう一つ出して、並べた。
「これとこれは、両方使うんだよ。片方だけじゃ効きが悪い」
「両方」
「葉が八、枝が二。合わせて十でどうだい」
リュカは懐の金を数えた。
四十シャルド。いつも通りだ。
十を出せば、三十しか残らない。杭の補充に三シャルド、パンが三、火種石が二。残りは二十二。
――足りる。
足りるが、貯まらない。
「……ください」
布に包んで、懐に入れた。
読んで頂きありがとうございます。
引き続き1話ずつ毎日更新していきます。
現在4部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。
基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!
少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!
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