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星降譚―STELLA NOMINA―  作者: うめこまち
第一部 声のない返事

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幕間 「最初の区画図」

只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ


どうストーリーが進んで行くか乞うご期待!!


現在は、第5部終盤の執筆に取り掛かっております!

残すは6、7部。

先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)


皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!

〔ミラの記録の束から。焼けてから六十八日目の夕方に書かれた一枚。鍛冶場の帳簿用の紙の余り。右の手で書かれ字が少し左に傾いている〕


  ニヒロ 区画の覚え

     (歩数はリュカが歩いて数えた。

      わたしは書いただけ)


  詰所  屋根と柱だけ。籠は動いている。

      柱の板「片道、四百」

      脇の石に坂の家の爺さん。昼のあいだ

  坂   二つ。坂の途中に爺さんの家

  石段  四十二段。途中に鍛冶場

  鍛冶場 炉はまだ焚けない。

      鞴の革が届いた(膠がない)

      焼けなかった石の箱に杭、二十三本。

      預かりもの

  広場  井戸。綱はイサ。日の出前はリュカ

  イサの家 奥にわたし(夜)

  宿   広場から四十歩。屋根は半分

      土間 ヴェスナ

      土間の西の隅 リナン

      屋根裏 リュカ

      梁 鳥(セイル)

  薬房  焼け跡。土台の石は使える。

      わたしは昼はここ

  空き地 薬房から八十二歩(リュカの足で)。

      縁の焼けた長屋の柱まで

      的が三つ。二十歩、三十五歩、五十歩

      三十歩には立てていない

     (リュカに訊いたら、立てなくていいと)

  市   台は半分

  路地  七本。屋根のあるのは二本


  竈の煙 五本

     (五十三日目に四本とリュカに聞いた)


---


 ミラは、薬房の焼け跡の土台の石に腰かけていた。


 紙を膝に載せて、炭の欠片を指で持っていた。


「次」


「……ここから空き地まで」


 リュカが言った。


 土台の石の前に立っていた。


「歩いて」


 リュカは歩いた。


 声に出さずに。


 ミラは紙を胸に抱えて、後ろからついてきた。


 小路の入り口まで戻って。宿の前を過ぎて。


 空き地の縁の焼けた長屋の最後に残った柱の前でリュカは止まった。


「八十二」


「八十二」


 ミラは柱に紙を当てて書いた。


「あんたの足で八十二ね。わたしの足だと、もう少し多い」


「……数え直すか」


「いい。あんたの足で書いておく」


 ミラはそう言って、炭の先を指で尖らせた。


「足が変わったら、そのとき書き直す」


 リュカは何も言わなかった。


 言わずに次の場所のほうを見た。


---


〔同じ束の次の一枚。名簿〕


  ニヒロ 住む者

  焼けてから六十八日目


  ヴェスナ(宿)

  リュカ(宿の屋根裏。荷運び)

  リナン(宿の土間の西の隅)

  トト(鍛冶場)

  ドラン(詰所)

  イサ(井戸)

  ミラ(イサの家の奥。昼は薬房の跡)

  カイの女房

  ネラ(粉屋)

  坂の家の爺さん(名をまだ訊いていない)

  柄杓の子


  名を書いていない者 二十


  計 三十一


 (焼けてから十一日目にリュカが数えた。四十九)

 (名を書かないのは知らないから。

  知らないまま書くと違う名になる)


---


「……二十も」


 リナンがミラの肩越しに紙を見ていた。


「名前知らない人が二十人も、いるんですか」


「いるわよ」


 ミラは言った。


「顔は知ってる。名は訊いたことがない。焼ける前は訊かなくても、困らなかったから」


「……訊きますか」


「訊く」


 ミラは炭を置いた。


「一人ずつ。会ったときに。訊いたらここに書く」


 リナンは少しだけ考えた。


「わたしの名前も」


「書いてあるわよ」


「うしろの名前もですか」


 ミラはリナンを見た。


「……訊いたら書く」


 リナンは少しだけ笑った。


「まだいいです」


「じゃあまだ書かない」


---


〔リュカの外套の内側の紙五枚のうち白かった一枚。字は一つもない。炭の線と数と印だけ。いちばん上に一語だけ別の手で書き込みがある〕


 紙の左の上の隅に四角が一つ。


 その中に字が一つ。少し左に傾いた字。ニヒロ。


 四角の下からまっすぐな線が一本下りている。線の脇に数。二十三。


 線の下の端に四角がもう一つ。中は空いている。


 そこから右へ長い線。脇に一万五千。


 線の先に丸。


 その先は線がぎざぎざになる。


 ぎざぎざの中ほどに平たい四角が一つ。その脇に小さな丸が五つ並んでいる。


 ぎざぎざが終わったところから紙の下の半分が薄く炭で擦ってある。


 擦ったところの脇に四万三千。


 擦ったところの向こうに縦の太い線。


 紙の下の端から上の端まで。


 太い線は一度短く引いて、あとから継ぎ足してある。継いだところで炭の濃さが違う。


 太い線の根元に四角。四角から右へ短い線。二百。その先に三角。上を向いている。


 四角のすぐ内側に小さな数。三十。その横に十三。七。


 太い線に沿って、横に短い線がいくつも刻んである。下から。


 五百。


 二十二。小さな丸が七つ。真ん中の一つに×。


 四百。千五百。


 二千八百。


 三千百。その横に小さく四千二百。


 それから、四角い口の印。三百十二。七百と少し。


 七。渦のような線。


 その上で太い線は細くなる。細くなった線に点が等しい間で打ってある。


 五十九。


 十七のところに横に小さな段。煤のように指で擦ってある。


 四十のところに結び目のような印が二つ。


 五十九の上に半月。その上に尖った形。


 尖った形のこちら側に小さな三角。


 三角は塗っていない。炭の線だけで上を向いている。


---


 紙の右の半分には何も描かれていない。


 左の上の四角から右へ線は一本も出ていない。


 太い線の左にも何もない。


 白い。


 五で買った紙だった。石の絵を描くつもりで買った紙だった。


 石は一つも描かれていない。


---


「これ何ですか」


 リナンが言った。


 屋根裏で。隙間の光の下で。


「……行ったところ」


 リュカは言った。


「数は」


「歩いた数。息の数。杭の数」


「字は一つだけですね」


「ミラが書いた。俺が頼んだ」


 リナンは、紙の右の白いところを指で押さえた。


「こっちは」


「行ってない」


「何もないんですか」


「ないかどうかは知らない。行ってないから描いてない」


 リナンは、白いところをしばらく押さえていた。


「……広いですね」


「広い」


「描くところいっぱい残ってますね」


 リュカは何も言わなかった。


 紙を四つに折った。


 ほかの四枚と重ねて、外套の内側に戻した。


 白い紙はもうなかった。


 五枚とも何かが書いてあった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

この話で1部完結となります!


引き続き1話ずつ毎日更新していきます。

現在5部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。


基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!


少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!


ブクマやお気に入り登録していただけますと今後の執筆の励みになります(´∀`*)

よろしければ是非応援頂けますと幸いです。

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