掌と、沈黙①
只今誠意執筆中_φ(ò_óˇ)ᕤ
今はまだ第1部1章で、まだ物語の序章ですので大きな変化が見られるのをこうご期待!!
現在は、第4部終盤の執筆に取り掛かっております!
残すは5、6、7部。
先はまだまだ長いですが、構想は終わっているので毎日楽しく執筆できております(●´ω`●)
皆様に少しでも楽しみに感じて頂ける作品になるよう私も楽しみながらやってきます!!
あれから半月ほど経っていた。
灰色の石は外れた。試して十日、何も起きず、袋に移した。今は次のを試している。灰白色の、水路の脇で拾ったやつだ。
その半月で、変わったことが二つある。
一つは、リナンが毎朝、空き地に来るようになったこと。
もう一つは、宿の二階に彼女が泊まっていると知ったこと。知ってからも、特に何も変わらなかった。朝は空き地で会い、夕方は路地ですれ違う。それだけだ。
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石の袋が鳴らない朝があった。
リュカは寝床で目を開けて、しばらく天井を見ていた。屋根裏なので、天井というより屋根の裏側だ。板の隙間から光が二本、斜めに落ちている。
枕の下に手を入れる。
袋はあった。硬い。いつも通りだ。
だが持ち上げても音がしなかった。
――詰まってる。
紐を解いて中を見る。石が寄って固まっていた。昨日、雨に濡れたまま袋に戻したせいだ。乾ききらずに土がついて、互いにくっついている。
リュカは一つずつ取り出して、板の上に並べた。
二十六個。
数えるつもりはなかったのに、数えていた。並べたら数が見える。見えたら数える。それだけのことだ。
――増えた。
ひと月前は二十一だった。地上層で赤いのを拾い、水路の脇で灰白色のを拾い、この十日でさらに三つ。
増えただけで、減ってはいない。
布で一つずつ拭いた。
土が落ちると、色が戻る。青、白、灰、赤、また灰。ほとんどが灰色だ。市場に出れば誰も見向きもしない色。
拭きながら、いつ拾ったかを思い出そうとした。
青いのは二年前。市の裏手の側溝で。
赤いのは半月前。地上層の土間の裏で。
白いのは——覚えていない。
覚えていないものが、半分以上あった。
いつ、どこで、どういう理由で拾ったのか。全部忘れている。それでも捨てていない。
――変だ。
リナンが「変です」と言い切った顔を思い出した。まだ言われていないのに、言われた気がした。
最後の一つを拭き終えて、袋に戻した。
からから、と鳴った。
この音を確かめてから、彼は起き上がる。三年、毎朝そうしている。
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空き地に着いたとき、リナンが先に来ていた。
石垣の前にしゃがんで、土をかいている。三日前に教えたやり方だ。上より下、乾いていたら濡らす。
「早いな」
「あ、リュカくん」
彼女は振り返って、それから手のひらを見せた。
「これ、どうですか」
小指の先ほどの、白っぽい粒が三つ。
リュカはしゃがんで、一つずつ見た。
「これは石英だ」
「あ」
「これも。これは……砂利かな」
「全部だめですか」
「だめってわけじゃない」
リュカは三つとも自分の掌に受けて、光にかざした。
「透けるやつは、たいてい違う。石英は透ける」
「じゃあ、透けないのが」
「透けなくても違うのが多い。分からないから拾う」
「分からないんですか」
「分からない」
リナンは自分の指先を見た。土がついている。
「……じゃあ、どうやって選ぶんですか」
リュカは答えかけて、止まった。
三つの粒を、指の腹で転がしてみる。石英は角が丸い。長く水に洗われた形だ。砂利は角が残っている。割れて間もない。
こういうことは説明できる。どこで拾えるか、どう見分けるか、いつ掘れば出やすいか。三年やっていれば分かる。
だがなぜ拾うのかは説明できない。
選んでいない。目についたものを拾っている。基準があるとすれば、気になったかどうかだ。だがそれは説明できる基準ではない。
「選んでない」
「え」
「気になったら拾う。それだけだ」
「それって」
「うん、意味がない」
リナンは何か言いたそうな顔をして、結局こう言った。
「……でも、二十六個あるんですよね」
リュカは彼女を見た。
リナンは石垣のほうを向いていて、こちらを見ていなかった。土のついた指を、膝の布で拭っている。
「二十六個あって、全部だめだったんですよね」
「うん」
「それでも二十六個あるって、変です」
「変か」
「変です」
彼女は言い切った。
「だめだったものは、普通、なくなります。捨てるか、忘れるか。全部そのままあるのは、変です」
「……そうだな」
「怒ってないですよ」
「怒られてない」
「よかった」
リナンは立ち上がって、手をはたいた。
「わたしも、なくならないので」
「なにが」
「石が。喉の」
彼女は自分の喉のあたりに触れた。
「何も出ないのに、ずっとあります。抜けもしないし、消えもしない」
リュカは彼女を見た。
「三年」
「三年です」
二人とも、それ以上言わなかった。
「なんで知ってる」
「十日前、袋の中を見せてもらったとき」
「数えたのか」
「途中まで」
彼女は少し照れたように言った。
「二十二までは数えました。あと一個か二個かなって」
「あれから増えた」
「そうなんですか」
「三つ」
リナンは指を三本立てて、それから下ろした。
「十日で三つ」
リュカは自分の袋に手を当てた。
数えたことがなかった。数えると重さが意味を持つ気がして、避けていた。それを他人が数えていた。しかもほぼ合っている。
「……二十六だ」
「そうですか」
彼女はそれ以上、何も言わなかった。
読んで頂きありがとうございます。
引き続き1話ずつ毎日更新していきます。
現在4部まで出来ているので一年以上は連続更新できる予定です。
基本的には1日2-3部を18時と20時に分けて更新して行く予定としております!!
少しでも次が気になったり、楽しみにして頂ければ幸いです!
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