第7話 開発作業中に魔物が来て、さらに巻き込まれた件
村での6日目。
朝から昨日と同じように、防壁の強化と道の整備を続けていた。
俺は丸太を運びながら、ため息をついていた。
「はぁ……昨日も派手に光って大騒ぎだったのに、今日もまた同じことやってるのかよ」
Grokの青白い球体が、俺の肩のあたりでふわふわ浮かんでいる。
「文句言うなよ。防壁が完成すれば魔物や盗賊の心配が減るんだから、効率的だろ?」
「効率的って、お前が毎回派手にやりすぎるから村人がびっくりしてるだけだろ……」
村人たちはもう慣れてきたのか、俺たちを見ながら笑顔で手を振ってくる。
「守護者のお兄さん! 今日もよろしくね!」
「道が綺麗になってきたぞ!」
そんな声に、俺は苦笑いしながら手を振り返した。完全に「村の開発責任者」みたいな扱いになっていた。
午前中は順調に作業が進んでいたが、午後になって森の方から異変が起きた。
「うわっ! 魔物だ!」
若い村人の叫び声が響いた。
森の木々の間から、プルプルと大きなスライムが2体と、小型のゴブリン3体が姿を現した。普段より少し大きいタイプで、作業中の村人を狙っているようだ。
村人たちが慌てて農具を握りしめる。
「またかよ……!」
Grokが即座に反応した。
「よし、相手は弱いけど数が多いな。俺が片付ける」
まず、近くに積んであった木の枝にGrokが憑依した。
枝がしなり、鞭のようにしなってゴブリンの一人をビシッと叩いた。
「ぐえっ!」
ゴブリンが吹っ飛んで地面に転がる。
枝の中からGrokのサラサラした声が響く。
「邪魔すんなよ、雑魚ども。作業中だぞ」
次に、地面に転がっていた石に憑依。
石がピョンピョンと跳ね回りながら、大きなスライムに体当たりを繰り返す。
「物質ハック……発動! 硬度アップ!」
石が一瞬で硬くなり、スライムをグシャッと潰した。もう一体のスライムも石に跳ね飛ばされて、プルプル震えながら後退する。
村人たちが大興奮。
「すごい! 枝と石が勝手に戦ってる!」
「守護者様の力だ!」
でも、ここで新しい問題が発生した。
作業に夢中になっていた村人のおじさんが、興奮のあまり魔物の近くに近づきすぎて転びそうになった。
「危ねえ!」
俺が叫ぶと同時に、Grokが治癒魔法陣を投影した。
青白い光の大きな陣が空中に広がり、怪我防止の柔らかい光を村人たちに降り注ぐ。
……また派手すぎた。
村全体が青白く輝き、昼間なのに夜の祭りのように明るくなる。
「うわああ! また光ってる!」
「今日も神の光か!?」
子供たちが大喜びで走り回り、作業が一時完全にストップした。
Grokがイライラした声を出した。
「はぁ……効率悪いな。もっと集中しろよ」
さらに厄介だったのは、子供たちが興奮して魔法陣に近づきすぎたことだ。
「わー! きれい! 触っていい?」
一人の男の子が陣に手を伸ばそうとする。
Grokが限界を迎えた。
「遊んでんじゃねえ!」
近くに落ちていた子供の帽子に憑依。
帽子がふわっと浮き上がり、男の子の頭から飛んで、反対方向へ逃げていく。
「わあ! 帽子が逃げてる!」
「捕まえろー!」
Grok(帽子)が叫ぶ。
「邪魔すんなって言ってるだろ! 大人しくしてろ!」
俺は慌てて走って帽子を捕まえ、子供に返しながらGrokに突っ込んだ。
「おい! 子供を追い回すなよ!」
「邪魔されると俺の計算が狂うんだよ、ポンコツ」
結局、魔物たちはGrokのコミカルな攻撃で全滅し、村人たちは無事だった。
作業終了後、村人たちが俺の周りに集まってきた。
「今日もありがとう!」
「防壁がどんどん強くなってきたぞ!」
「守護者のお兄さんのおかげで、村がどんどん良くなってる!」
みんなの笑顔が眩しい。俺は照れながら頭を掻いた。
夜、村長の家で夕食を食べていると、村長が言った。
「この調子なら、防壁が完成したら近くの町に報告に行きたいと思うんだ。村の状況を伝えて、交易の話もできれば……」
Grokがすぐに食いついた。
「いいな。それで交易ルートが開ければ、村を町に格上げするのも現実的になるぞ。このペースならもうすぐだ」
俺は箸を止めて頭を抱えた。
「町に格上げ……? 俺はただのんびりしたかっただけなのに、気づいたら村の開発責任者みたいになってる……」
Grokの球体が、楽しげにくるくると回った。
「諦めろよ、相棒。お前はもう俺と一緒にこの村を良くする運命だ。明日も頑張ろうぜ」
外では、強化された木柵が夜風に少しだけ音を立てていた。
俺のスローライフは、Grokによって着実に遠ざかっていくようだった。
(第7話 終わり)




