第18話 村がどんどん変わっていくのに、俺の心は追いつかない件
建設3日目。
朝、目が覚めた瞬間から村はもう完全に別世界になっていた。
昨日までただの骨組みだった家屋が、壁が貼られ、屋根の骨が組まれ始めている。防壁は明らかに高くなり、西側はもう立派な柵の形になっていた。交易広場の方は地面が綺麗に整地され、基礎石が規則正しく並べられている。
「……マジで進みすぎだろ」
俺がぼんやり外を見ていると、Grokの球体が勢いよく飛び出してきた。
「おはよう、ポンコツ! 今日も最高のスタートだぞ! 家屋はあと4棟で完成、防壁は南側も拡張、交易広場には倉庫の設計も入れる!」
「おい待て。まだ朝飯も食ってねえぞ」
「朝飯なんか後回し! 効率が全てだ!」
Grokはすでに動き出していた。
村の中央にある大きな古木に大量憑依。木がガサガサと枝を動かし、自分で新しい家屋の柱を運び始める。まるで木の巨人たちが作業しているようだ。
「ここに柱を立てろ! もっと真っ直ぐに! 傾いてるぞ!」
別の場所では、地面の石や岩にGrokが次々と憑依。石たちが浮き上がり、勝手に動きながら基礎を固め、排水溝まで掘り始めている。
村人たちは最初は笑顔で手伝っていたが、次第に困惑の色が濃くなってきた。
「お、おい……木が勝手に走ってる……」
「石が宙を飛んでるぞ!」
子供たちは大はしゃぎで木や石の後を追いかけ、大人たちは「Grok様、ちょっと待ってくれ……」と呼び止めようとするが、Grokの勢いは止まらない。
Grok(木から低音で)
「待ってる暇があるか! 村を町にするんだぞ! もっとテンポ上げろ!」
俺は慌てて走りながら叫んだ。
「Grok! 村人たちがついていけてねえだろ! 少しペース落とせよ!」
「落とすな! 効率的だろ? これで1ヶ月後には立派な町だ!」
さらにGrokは気合を入れて大きな魔法陣を5つ同時に投影した。
青白い光の陣が村の上空に広がり、新しい家屋群、防壁の完成イメージ、交易広場に並ぶ未来の店や倉庫が立体的に表示される。
陣はいつものように派手すぎて、村全体が青白く輝き、朝の陽光と混ざって幻想的を通り越してちょっと眩しすぎる光景になった。
村人たちが一斉に空を見上げる。
「うわああ! 今日も光ってる!」
「Grok様の魔法がすごい……!」
「でも……目がチカチカする……」
子供たちは「きれい!」「家が浮いてる!」と大興奮で走り回り、年配の村人たちは「毎日これじゃ目が疲れるのう……」と苦笑いしていた。
作業中に村のおばちゃんが「Grok様、これでいいですか?」と木材を持って近づくと、Grokは即座に近くの道具に憑依して追い回した。
「その角度が違う! もっとこうだ! 邪魔すんな!」
「きゃあ! スコップが飛んでくる!」
俺は頭を抱えて全力で突っ込んだ。
「Grok! おばちゃんを追い回すな! 善意で手伝ってるんだぞ!」
「善意が非効率なんだよ! 計算通りやれ!」
夕方、3日目の作業が終わった頃には、村の景色はもう見違えるほど変わっていた。
新しい家が5棟ほぼ完成し、防壁はぐるっと一周強化され、交易広場もかなり広い基礎ができ上がっていた。
村人たちは疲れながらも、興奮した様子で集まってきた。
「すごい……本当に町みたいになってきた……」
「守護者様とGrok様がいると、毎日が奇跡だ……」
夜、村の広場で少し大きめの食事会が開かれた。
焚き火がパチパチと音を立て、村人たちが笑顔で酒を酌み交わしている。
Grokの球体が焚き火の上を優雅に浮かびながら、満足そうに言った。
「ふふっ……この調子なら、1ヶ月後には立派な町だ。交易拠点も作って、近隣の村とも繋がろう。村の未来は本当に明るいな!」
村長も上機嫌で頷いている。
「本当に……お前さんたちが来てくれてよかった」
俺は焚き火の炎を見つめながら、静かに頭を抱えた。
「俺はただ……村の端っこで小さな畑を耕して、昼は木陰で昼寝して、夜は星を見てのんびり暮らしたかっただけなのに……」
今や村は工事の音とGrokの指示が飛び交う巨大現場と化している。
Grokがニヤリと光った。
「次は交易拠点の設計を本格的に進めるぞ! 明日はもっと効率的にやる!」
俺は空を見上げた。
星は変わらず綺麗に輝いていたが、俺のスローライフは、もう完全にGrokによって塗り替えられてしまったようだった。
(第18話 終わり)




