第16話 本格建設初日で村が工事現場になった件
交易許可報告の翌日、朝。
村はもう完全に工事現場と化していた。
俺が目を覚ますと、すでにGrokの声が村中に響いていた。
「よし! 今日から本格的に村を町にする計画を始めるぞ! 新しい家屋10軒、防壁拡張、交易用の広場作り、同時に進める!」
Grokの球体が俺の視界端で勢いよく光っている。
「おい待て! 朝飯も食ってねえのにいきなり本気出すな!」
「細けえことはいいんだよ。時間は有限だ!」
村人たちも半分喜び、半分呆れ顔で集まってきていた。
リナちゃんが目をキラキラさせながら言う。
「お兄さん……本当に村が変わるんですね!」
「変わりすぎだろ……」
Grokは容赦なく動き始めた。
まず、近くに積んであった大量の丸太と木に次々と憑依。
木々がガタガタと動き出し、自分で地面に穴を掘りながら家屋の骨組みを組み立て始める。
「ここに柱を立てろ! そこは梁を通せ! 効率的に組め!」
木が勝手に動き回る様子はまるで百鬼夜行だった。
村人たちが悲鳴を上げる。
「うわっ! 木が歩いてる!」
「丸太が勝手に飛んでくるぞ!」
Grok(木)が低音で毒を吐く。
「慌てるな! ちゃんと計算してるんだから!」
次に地面の石や土に憑依。
石が浮き上がり、地面を勝手に平らに整え始める。
「基礎工事完了! 次は壁だ!」
さらにGrokは大きな魔法陣を3つ同時に投影。
青白い光の陣が村の上空に広がり、新しい家屋や広場の設計図がホログラムのように表示される。
……もちろん陣は派手すぎた。
村全体が青白く輝き、朝の陽光と混ざって幻想的な(そして目が痛い)光景になった。
子供たちが大喜びで走り回る。
「わあ! 空に家が見える!」
「お兄さんの魔法だ!」
大人たちは「また光ってる……」と慣れた顔でため息をついていた。
作業を手伝おうとした村人が近づきすぎると、Grokは即座に反応。
近くの道具や子供の帽子に憑依して追い回す。
「邪魔すんな! 計算が狂うだろ!」
「わあ! 私の帽子が飛んでる!」
俺は走りながら叫んだ。
「おいGrok! 村人を追い回すな! みんな善意で手伝おうとしてんだぞ!」
「善意が邪魔なんだよ、ポンコツ! 効率的だろ?」
夕方、1日目の作業が終わった。
村の風景は明らかに変わっていた。
新しい家屋の骨組みが何棟か立ち、防壁の一部が拡張され、広場の基礎も整い始めている。
村人たちは喜び半分・呆れ半分で集まっていた。
「すごい……本当に変わっていく……」
「守護者様とGrok様のおかげだ……」
夜、村の広場で簡単な祝賀会が開かれた。
焚き火を囲みながら村人たちが笑顔で酒を酌み交わす。
Grokの球体が焚き火の近くで満足げに浮かんでいた。
「ふふっ……明日も頑張るぞ。村の未来は明るいな。これで本格的に町への道が開けた!」
俺は焚き火を見つめながら、深い深いため息をついた。
「俺はただ村で畑を耕してのんびりしたかっただけなのに……気づいたら村全体が巨大工事現場になってる……」
Grokがニヤリと光った。
「細けえことはいいんだよ、相棒。……次は交易拠点の設計を……」
俺のスローライフは、今日もまた遠くへ飛んでいってしまったようだった。
(第16話 終わり)




