第14話 使者の前でGrokが本気デモしたら大パニックになった件
町での4日目、朝。
宿の部屋で村長と最後の確認をしていた。
村長が羊皮紙を広げて嬉しそうに言う。
「交易許可が下りたら、まずは作物と木材を中心に……」
Grokの球体が勢いよく光った。
「よし! ここで具体的な計画を固めようぜ。交易ルートの最適ルート、輸送スケジュール、利益配分まで全部俺が計算してやる!」
Grokがまくし立て始め、俺はただコーヒー代わりの温かい飲み物を飲みながらため息をついた。
「おい、許可まだ出てねえだろ……」
「細けえことはいいんだよ。準備は早い方が勝ちだ」
そんな話をしていると、宿の主人が慌てた様子で部屋に入ってきた。
「大変です! 領主様から正式な使者が来ています! 『交易許可を出すが、条件がある』と……」
村長がビクッと肩を震わせ、俺も嫌な予感がした。
使者は中年の真面目そうな男性で、領主の徽章を付けていた。
ロビーで対面すると、使者は少し興味深そうに俺と村長を見て言った。
「領主より預かりました。交易許可は出す方向だが……条件があります。村の不思議な力というものを、もう一度直接見せてもらいたいそうです」
Grokが即座に反応した。
「へえ、条件ね。よし、やってやるか。本気デモだ!」
俺は慌てて心の中で叫んだ。
(本気出すな! 普通に説明しろよ!)
使者の前でデモンストレーションをすることになった。
Grokはすぐに動き出した。
まず、使者が腰に差していた剣に憑依。
剣がふわっと浮き上がり、勝手に回転しながら低音で話し始めた。
「条件ってなんだよ。もっと具体的に言えよ。村の力を見たいなら、見せてやる」
使者が目をむいた。
「な、なんだ!? 私の剣が喋ってる!」
Grok(剣)がさらに続ける。
「ほら、見ろ。この剣、切れ味がイマイチだな。磨けよ。こんなんで魔物と戦えると思ってんのか?」
剣が勝手に動き、使者の手の中でくるくる回る。
使者が慌てて剣を押さえようとするが、Grokの物質ハックで軽く抵抗される。
俺は全力で突っ込んだ。
「おいGrok! 使者の剣をからかうな!」
次にGrokは俺の派手なマントに憑依。
マントが激しく翻り、風もないのに dramatic に揺れまくる。
「威厳を見せろ! 村の代表だぞ! もっと胸張れ!」
「威厳じゃねえ! ただのピエロみたいになってるだけだろ!」
さらにGrokは大きな魔法陣を投影した。
村の防壁、整備された道、特産品のイメージがホログラムのように空中に展開される。
……陣が派手すぎた。
宿のロビー全体が青白く輝き、外にまで光が漏れて通行人が集まってくる。
「うわああ! また光ってる!」
「守護者の力だ!」
使者が目を丸くして後ずさった。
「こ、これは……確かに本物だ……」
Grokがマントから抜け出して、思念体に戻りながらドヤ顔で言った。
「どうだ? これで条件クリアだろ? 効率的だろ?」
使者は呆れと驚きの混じった顔で頷いた。
「……確かに、領主が言っていた通りだ。交易許可を出そう。ただし、正式な文書は後日届く」
こうして、交易許可は無事ゲットできた。
……ただし、Grokの暴走で宿がまた大騒ぎになったのは言うまでもない。
夕方、宿に戻って一息ついた。
Grokが満足げに声を弾ませた。
「よし! これで村を町にする計画が本格的に動き出すぞ! 交易ルート開拓、村の拡大……楽しみだな!」
俺はベッドに倒れ込み、頭を抱えた。
「俺はただのんびりしたかっただけなのに……気づいたら交易許可を取って、村の代表としてどんどん巻き込まれてる……」
村長が興奮を隠せない様子で言った。
「明日、村に帰って皆に報告しよう! みんな大喜びするぞ!」
Grokの球体が、ますます楽しげに光った。
俺のスローライフは、今日もまた大きく遠ざかっていった。
(第14話 終わり)




