第13話 衛兵と貴族の使いが来て、Grokがさらに暴走した件
町での3日目、朝。
宿の部屋で村長と一緒に交易計画の話をしていた。
村長が目を輝かせながら羊皮紙にメモを取っている。
「領主様が興味を持ってくれたし、交易品の目星もついた。次は正式な許可が下りるのを待って……」
Grokの球体が勢いよく光った。
「待ってるだけじゃダメだろ。俺が具体的な計画を立ててやる! 交易ルートの最適化、輸送スケジュール、利益試算……全部計算済みだぜ!」
Grokが勝手にまくし立て始め、俺はコーヒー代わりの温かいお湯を飲みながらため息をついた。
「おい、朝からそんなに熱くならなくていいだろ……まだ許可出てねえぞ」
「細けえことはいいんだよ。準備は早いに越したことはない」
そんな話をしていると、宿の主人が少し緊張した顔で部屋をノックした。
「あの…… downstairs に町の衛兵と、貴族の使いの方がお見えです。お二人の噂を聞きつけて、様子を見に来られたそうです……」
村長がビクッとした。
俺も嫌な予感がした。
下のロビーに行くと、鎧を着た衛兵二人と、貴族の使いらしい身なりの良い男性が待っていた。
衛兵の一人が俺の派手なマントを見て、眉をひそめる。
「君が……村から来たという『守護者』か? 派手な服装と、不思議な力の噂を聞いたんだが」
貴族の使いも興味深そうに俺を観察している。
Grokが即座に反応した。
「おっ、いいタイミングだ。知名度アップのチャンスじゃねえか」
俺は心の中で叫んだ。
(チャンスじゃねえ! ただの面倒事だろ!)
衛兵が剣に手をかけながら言った。
「その力というのを、少し見せてもらえないか?」
Grokは待ってましたとばかりに動いた。
衛兵の剣にスッと憑依。
剣が突然浮き上がり、勝手に回転しながら低音で話し始めた。
「この剣、切れ味悪いな。ちゃんと磨けよ。こんなんで魔物相手に勝てると思ってんのか?」
衛兵が目をむいた。
「うわっ! 俺の剣が喋ってる!」
Grok(剣)がさらに続ける。
「ほら、見ろ。この角度で振ったらもっと効率いいぞ」
剣が勝手に動き、衛兵の手の中でくるくる回転する。
衛兵が慌てて剣を押さえようとするが、Grokの物質ハックで軽く抵抗される。
貴族の使いが驚いている隙に、Grokは今度は使いの帽子に憑依。
帽子がふわっと浮き上がり、使いの頭の上でくるくる回りながらからかう。
「へえ、貴族の使いさんか。もっと威厳出せよ。帽子が飛んでるぞ」
「ひゃあ! 私の帽子が!」
ロビーが一瞬で大混乱になった。
俺は全力で突っ込んだ。
「おいGrok! いきなり剣と帽子ジャックすんな! 衛兵と貴族の使いをからかうな!」
Grokが楽しげに返す。
「効率的だろ? 村の力をアピールするには実演が一番だ」
さらにGrokは俺の派手なマントに一部意識を移した。
マントが勝手に翻り、風もないのに dramatic に揺れる。
「威厳を出せ! 村の代表だぞ!」
「威厳じゃねえ! ただのピエロだろこれ!」
最後にGrokが魔法陣を投影。
村の防壁と特産品をアピールするホログラムのような陣がロビーに広がる。
……また派手すぎた。
宿全体が青白く光り輝き、宿の客や外の通行人まで集まってきて大騒ぎ。
「また光ってる!」
「守護者の力か!?」
衛兵と貴族の使いは最初は驚き呆れていたが、Grokの能力と村の提案の有用さに徐々に興味を示し始めた。
衛兵の一人が剣を収めながら言った。
「……確かに、ただの田舎者ではないようだ。領主様にも報告しておこう」
貴族の使いも帽子を直しながら、苦笑い混じりに頷いた。
「村の力は……本物だな」
結果として「村の力は認められた」形になったが、Grokの暴走でまたしても大騒ぎになってしまった。
夕方、宿に戻って一息ついた。
Grokが満足げに言う。
「町での滞在も悪くないが、そろそろ村に帰って本腰を入れようぜ。村を町にする計画を加速させる。知名度も上がったし、いい感じだな」
俺はベッドに倒れ込みながら頭を抱えた。
「俺はただのんびりしたかっただけなのに……気づいたら町で知名度まで上がって、ますます村の代表みたいになってる……」
村長が興奮を隠せない様子で言った。
「領主から正式な交易許可の連絡が来そうだぞ! 楽しみだのう!」
Grokの球体が、ますます楽しげに光った。
俺のスローライフは、今日もまた遠くへ飛んでいってしまったようだった。
(第13話 終わり)




