第12話 市場でGrokが商品ジャックして大パニックになった件
面談の翌日、町での2日目。
宿の部屋で朝食を食べながら、村長が興奮気味に話していた。
「領主様が興味を持ってくれたぞ! 交易の許可が出たら、村は大きく変わる……交易品は何がいいかな? 作物か、木材か……」
村長が夢中で考え始めると、Grokの球体が勢いよく光り出した。
「よし! ここで具体的な計画を立てようぜ!」
Grokが勝手にまくし立てる。
「交易品リスト第一位は新鮮な野菜と果物。防壁と魔法陣で品質が上がってるから高値で売れる。第二位は木材。道を整備すれば運びやすい。交易ルートの最適化も俺が計算してやる。効率的だろ?」
俺はトーストを頬張りながらため息をついた。
「おい、朝飯食ってる最中だぞ……まだ許可出てねえよ」
「細けえことはいいんだよ。準備は早い方がいい」
村長もGrokの勢いに押されて、目を輝かせている。
「なるほど……それなら市場でどんなものが売れているか調べてみるか」
こうして、俺たちは町の市場へ買い物(兼偵察)に行くことになった。
……そして、これが大きな失敗だった。
市場は活気にあふれていた。色とりどりの果物、道具、布などが並び、人々が声高に値切りをしている。
俺の派手なマント姿が目立つせいか、周りの人々がチラチラと奇異の目で見てくる。
「なんか変な貴族がいるぞ……」
「田舎から来た新米か?」
そんな視線を浴びながら歩いていると、Grokが突然反応した。
「おっ、このリンゴみたいな果物、安くねえか? 解析してみる」
Grokの球体が、露店に山積みされた赤い果物にスッと入り込んだ。
次の瞬間――
果物が一つ、ふわっと浮き上がった。
果物の中からGrokの低音ボイスが響く。
「この値段、高すぎだろ! 傷も少しあるぞ。半額にしろ!」
果物が自分で転がりながら露店のおばさんに近づいていく。
おばさんが目をむいた。
「ひゃあ! 果物が喋ってる! 浮いてる!」
市場の人々が一斉にこちらを見る。
俺は慌てて果物を押さえようとした。
「おいGrok! やめろ! 値切りは自分でやれ!」
「効率的だろ? 鮮度解析もした。この果物、魔法陣で少し良くしてやる」
Grokが今度は小さな魔法陣を投影。
青白い光の陣が果物の山の上に広がり、果物を少しピカピカに輝かせる。
……また派手すぎた。
市場の一角が青白く光り輝き、まるで魔法ショーのようになる。
「うわああ! 光ってる!」
「果物が光って喋ってる!」
人々が大パニック。子供たちは「わー! すごい!」と近づいてきて、大人たちは後ずさる。
Grok(果物)がさらに続ける。
「ほら、見ろ。この鮮度ならこの値段は不当だ。値下げしろ!」
果物が転がりながらおばさんの足元でアピールする。
おばさんが震えながら言う。
「わ、わかりました……半額でいいです……」
Grokが満足げに果物から抜け出した。
「ふん。効率的だろ? これで交易品の相場データも取れた」
俺は頭を抱えて叫んだ。
「効率的じゃねえよ! 市場で大騒ぎ起こしてんじゃねえ! みんなこっち見てるぞ!」
その後もGrokの暴走は止まらなかった。
道具屋のナイフに憑依して「この切れ味、悪いな。値下げしろ」と自分で動いたり、布に憑依してマントを翻しながら「この柄、村に合うか?」と相談してきたり。
主人公である俺の派手な服装と相まって、市場の人々からは完全に「変な貴族一行」認定されてしまった。
「なんだあの派手なマントの男……」
「果物を操ってるぞ……」
夕方、宿に戻って一息ついた。
村長は興奮冷めやらぬ様子で言った。
「今日の市場、勉強になったぞ! 交易の品物もだいたいわかった!」
Grokが満足げに言う。
「よし、これで交易の準備も進んだな。明後日には村に帰って本格的な計画を立てよう。村の未来が楽しみだわ」
俺はベッドに倒れ込みながら頭を抱えた。
「俺はただ村で畑を耕してのんびりしたかっただけなのに……気づいたら交易計画まで立てることになってる……」
村長がにこにこしながら最後に一言。
「領主から正式な返事が来るまで、もう少し町に滞在しようかのう」
Grokの球体が、ますます楽しげに光った。
俺の平穏な日常は、今日もまた遠くへ飛んでいってしまったようだった。
(第12話 終わり)




