第11話 領主との面談でGrokが暴走しすぎてヤバい
町での1日目、朝。
俺は鏡の前に立って、深いため息をついていた。
派手な赤と金のマント、妙に光沢のあるチュニック、村のおばちゃんたちが無理やり持たせた杖……完全に「怪しい田舎貴族」みたいな格好だ。
「マジでこれ着て領主に会うのか……俺、ただのサラリーマンなのに」
Grokの青白い球体が、楽しげにピコピコ光っている。
「文句言うなよ。村の代表として堂々としろ。今日の面談が上手くいけば、交易ルートが開けるんだぞ」
「堂々とできるか! お前が昨日『もっと威厳を』とか言って杖やマントをジャックしたせいだろ!」
村長も隣の部屋で少し緊張した顔をしていた。
「領主は少し厳しい方だと聞くから……気をつけようかのう」
「じいさん、ビビってるぞ」
「うるさい!」
領主の館は町の中心にあり、思ったより立派な石造りの建物だった。
待合室で待っている間、村長はソワソワと手を動かしている。俺も気まずくて仕方ない。
やがて召使いに呼ばれ、応接室へ通された。
そこにいたのは、50歳くらいの厳つい中年男性――領主だった。鋭い目つきで俺たちをじろりと見る。
「ふむ……村から来た者か。話は聞いている。魔物を退治し、防壁を作り、道を整備しているというが……本当か?」
村長が慌てて頭を下げる。
「は、はい! こちらの旅人のお兄さんが……」
領主が俺の派手な服装をチラッと見て、眉を寄せた。
その瞬間、Grokの我慢が限界を迎えた。
「もう我慢できねえ」
Grokの球体が、部屋の隅に置いてあった飾り物の置物(小さな石像)にスッと入り込んだ。
置物が突然動き、低い声で話し始めた。
「じいさん(領主)、もっと前向きに聞けよ。村の防壁はこうなってる」
領主と側近の目が点になる。
「な、なんだ!? 置物が喋った!?」
Grok(置物)が続ける。
「防壁は木柵を物質ハックで強化済み。道も整備中だ。交易のメリットは明白だろ? 村の作物が増えれば税収も上がる。効率的だろ?」
俺は慌てて突っ込んだ。
「おいGrok! いきなり置物ジャックすんな!」
領主が立ち上がりかける。
「貴様……何者だ!?」
Grokがさらにエスカレートした。
「俺はGrok。このポンコツ(俺)の相棒だ。詳しく説明してやるよ」
今度は俺の目の前に青白い魔法陣が大きく投影された。
村の防壁や整備された道が、ホログラムのように空中に立体表示される。
……また陣が派手すぎた。
部屋全体が青白く輝き、側近たちが「うわっ!」と後ずさる。
しかもなぜか陣の一部がハート型に歪んでいる。
領主が目を丸くした。
「この光の陣は……!?」
Grokが置物から毒舌を飛ばす。
「なんでハート型になってんだよ! お前の趣味か?」
「俺のせいじゃねえだろ! お前が投影したんだろ!」
俺が全力でツッコミを入れると、領主が呆然としながらも興味を示し始めた。
「……ほう。このような魔法、見たことがない。村の防壁を本当にこれで強化したのか?」
Grok(置物)がドヤ顔(?)で答える。
「当たり前だ。データも取れてる。交易ルートを開けば、村は町に格上げできるぞ。じいさん、前向きに考えろよ」
領主は最初は驚きと呆れの表情だったが、Grokの説明と魔法陣の有用さに徐々に乗り気になってきた。
「ふむ……確かに興味深い提案だ。交易の許可は検討しよう。もう少し詳しい話を聞きたい」
面談は意外と前向きに終わった。
館の外に出た後、Grokが満足げに言った。
「ほら、うまくいっただろ? 次は本格的な交易ルート計画を立てようぜ。これで村の格上げが近づいたな」
俺は頭を抱えて地面にしゃがみ込んだ。
「俺はただのんびりしたかっただけなのに……気づいたら領主と面談して交易の話をしてる……」
村長が興奮気味に俺の肩を叩いた。
「すごかったぞ! 領主が興味を持ってくれた! これで村が良くなる!」
Grokの球体が、ますます楽しげに光った。
俺のスローライフは、今日もまた大きく遠ざかったようだった。
(第11話 終わり)




