第10話 派手な服で町へ出発したら、俺の平穏がまた遠のいた件
村での9日目、朝。
村の入り口はまるでお祭りのような賑わいだった。
村人たちが大勢集まり、手を振ったり、励ましの言葉をかけたりしている。
「お兄さん、気をつけてな!」
「町の領主に村のことをよろしく頼むぞ!」
リナちゃんは目をキラキラさせて俺の派手なマントを直してくれる。
俺は気まずさの極みで肩を縮めていた。赤と金の刺繍が入ったマント、妙にピカピカした杖、村のおばちゃんたちが無理やり着せたチュニック……完全に「田舎の新米貴族」みたいな格好だ。
Grokの球体が、俺の視界端で楽しげに光っている。
「ふふっ、いい感じじゃないか。村の代表として堂々としてろよ」
「堂々としてられるか! 俺、ただのサラリーマンだぞ! この服、絶対に似合ってねえ!」
村長がにこにこしながら杖を突いて近づいてきた。
「では、行こうか。お前さんがいてくれて心強いよ」
こうして、俺たちは村人たちの見送りを受けながら町へと出発した。
道中は予想通り、すぐにトラブルが始まった。
まず、道が悪くて村長の足取りが重い。
「はあ……はあ……少し休もうかのう」
Grokが即座に反応した。
「よし、サポートするぞ」
村長の杖にGrokが憑依。
杖が勝手に動き、村長の体重を支えるように地面を突きながら歩き始める。
「おおっ!? 杖が勝手に……!」
さらに、俺が持っていた荷物にも一部意識を移して、荷物がふわっと軽くなった。
Grokの声が杖から響く。
「もっとしっかり歩けじいさん! 遅いぞ!」
村長が目を回しながら言う。
「わ、私の杖が叱ってる……!」
俺は横で突っ込んだ。
「おいGrok! 村長をいじめるな!」
「いじめてねえよ。効率化だ。効率的だろ?」
そこへ、再び魔物が現れた。
木々の間から、飛ぶ小型の虫型魔物と、野犬のような魔物が数匹飛び出してきた。
「うわっ! またかよ!」
Grokは容赦なく動いた。
近くの石に憑依して、石がピョンピョン跳ね回りながら魔物を次々に弾き飛ばす。
枝に憑依すると、枝がぐんっと伸びて野犬の足に絡みつく。
「落ちろ! 邪魔だぞ、雑魚ども!」
魔物たちが混乱している隙に、Grokが防御・移動補助の魔法陣を大きく投影した。
青白い光の陣が道全体を覆い、派手な光が周囲を照らす。
魔物たちがびっくりして「きゃあ!」と鳴きながら一斉に逃げていく。
村長が呆然としている。
「また……光が……」
Grokが思念体に戻りながら毒舌を飛ばした。
「はぁ……またエネルギー食ったわ。これで町までの道のデータも取れたな。効率的だろ?」
俺は全力で突っ込んだ。
「効率的じゃねえよ! 毎回派手に光って魔物を驚かせるだけだろ!」
そんなドタバタを繰り返しながら、午後遅くにようやく近くの町に到着した。
町の入り口の門で、衛兵たちが俺たちの姿を見て少し驚いた顔をした。
特に俺の派手なマントと杖、そして時々浮かぶ青白い光の球体(Grok)に視線が集まる。
「村の……守護者だと?」
「噂は聞いてるが……本当に派手な格好だな」
村長がにこやかに挨拶している横で、俺はただ気まずそうに立っていた。
夕方、町の安宿に部屋を取った。
簡素だが清潔な部屋で、俺はベッドに座って深いため息をついた。
Grokの球体が、楽しげに浮かんでいる。
「よし、明日はいよいよ領主との面談だ。村の格上げと交易の話、しっかりやろうぜ! これで村が町になるのも近づいたな」
俺は頭を抱えた。
「俺はただ村で畑でも耕してのんびりしたかっただけなのに……気づいたら町の領主に会いに行く代表になってる……」
その時、村長が隣の部屋から少し不安げな声で言ってきた。
「明日の領主との面談だが……領主は少し厳しい人だと聞くぞ……気をつけようかのう」
Grokの球体が、ますます楽しげに光った。
俺の平穏なスローライフは、今日もまた一歩遠ざかったようだった。
(第10話 終わり)




