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Fantastic Life Online  作者: ようほう
本格的冒険と謎のお宝
19/28

Scene2-7

 次に気付いた時、僕の視界に入ったのは石畳で、聞こえてきたのは水の流れる音ではなく大勢の人の話し声だった。身体を起こして周りを見ると、どうやら【ビギニア】に戻ってきたので間違い無さそうだ。

 後ろに噴水があるって事は、中央通りの北側が最初期のセーブポイントになっているみたい。


(そういえば、なんだかんだで一回も死んだ事は無かったんだよね。)


 β時代は常にジョーとリィーナの2人と行動していたので、瀕死に陥ったり死にかけた事はあっても完全に死んだことは無かった。その前に誰かが回復するか、皆で逃げることに成功していたからである。


「うー、それを思い出したらなんだか凄く悔しくなってきた・・・。」


 ポーチの中に入れたアイテムを思い浮かべるが、アレでは戦闘中に逃げ出す事は出来なかった。


「はあ、買っておくべきだったかなあ。【転移結晶】。」


 この気持ちを忘れる為にも今すべき事を考えよう。頭を片手で抑えつつ、考えをまとめる。

 まずデスペナに関してだけど、これは別に無視してかまわない。さっき相手にも言ったけど、僕の装備は初期にもらえるものばかりだ。リッカさんから貰ったつるはしがあるけど、アレは殺される時にはインベントリにしまってあった。なのでドロップ判定には適用されておらず、落とす事は無い。武器に関しても初期装備の短剣なので割愛。いざとなれば今日掘った【鉄鉱石】をインゴットにして作れば良いや。

 

 「あ、そうだ。町に戻ったんだし、リッカさんに連絡しておこう。」


 死ぬ前に確認した段階では、まだあの石の正体がわからなかったんだよね。時間が有るのならリッカさんに<鑑定>をお願いしようかな。


≪急にすみません、今時間大丈夫ですか?≫

≪ん、お客さん居ないしオッケーよ?どったの?≫

≪さっき南の洞窟に採掘に行ったんですが、<鑑定>出来ないものが掘れまして。≫

≪なるなる、お姉さんに見て欲しいのね?今北広場か、直ぐに行くから待っててねー。≫

≪すみません、お願いします。≫


 これで良し。後はリッカさんがここに来るまでのんびり待っていればいい。その後はまた採って来た【アノネナイト】から【魔力水】を抽出しなくちゃいけないな。

 リベンジとかそんな事は考えない、戦闘スキルメインじゃないからね。僕が考えるのは、次に遭遇した時に上手に逃げる為に必要な道具。


「ねえ、おねえさん。」


 受けてわかったけど、やっぱり麻痺による行動不能って言うのは致命的だ。これを防ぐ防具かアクセサリーが必要になってくる。まあこれはいずれ必要になっていただろうものを、早めに用意しようとするだけだし問題ない。後はこっちも麻痺武器を用意する?その為には材料の麻痺毒をもつモンスターを探さないといけない。どこかにいたっけ?


「おねえさん!」

「うわっ!?」


 耳元で叫ばれて驚くと同時に来る瞬間的な頭痛に顔をゆがめる。考え事に集中していて気付かなかったが、僕のすぐ傍に小さな女の子が立っていた。このゲーム、小学生は出来ないのだからこの子は住民(NPC)なのだろうと予想をつける。


「ごめんね、考え事をしていたから。それで、僕に何か用?」


 なんだろう?と思いつつも、いつまでもここに座ってたら邪魔だよね、と考えて立ち上がろうとした。


「おねえさん、お金ないの?」


 ・・・なんだろう、僕はこの子にどんな風に思われているのだろう。お金ならまだあるよ?しばらくは宿屋生活が出来るくらいには、貯蓄は残ってるよ?

 あと僕はおねえさんじゃないから。


「えっと、どうしてそんな事を?そんな風に見える?」

「だって、おねえさん上何も着てないもん。」


――ほんの一瞬、思考が停止した。


「・・・え?」

「おねえさん、ほとんど裸だよ?」


 反射的に視線が下に動く。視界に映ったのは、前に宿のお風呂で見た自分の上半身――。

 そこまで確認した瞬間、(何故か)胸を隠すように腕を交差させ、立つのを止めて座り込んだ。え?何で?デスペナでドロップした?そう考えログを遡ってみるが、着ていた服を落としたと言うメッセージは残っていない。じゃあなんで!?


「他に、他に何か原因があるはず。一体何が――。」


 そういえば――あの男、僕を殺す前に何回かわざと剣を外していた。まさか、まさかと思い更にログを遡る。そして、見つけた。


「あ、あいつ・・・っ。わざとスカしてたのはこの為だったのか・・・っ!」


 怒りにふるえるが、今はそれどころではない。さっきからチラチラとこっちを見ている視線はこれだったのか。心なしさっきまでより人が増えている気がする。そして見ないで、唾を飲むな、僕は男だよ。男が男の裸を見て何で頬を染めてるのさ。だからって数人居る似たような表情の女の人も安心できないんですけど!!

 リッカさん、早く来て――!


「ごめんねー、何か人が多くて――どったの、それ?」

「うぅぅ、リッカさぁぁん。」


 人ごみを掻き分けてこちらに歩いてきたリッカの目に映ったもの。それは北広場で下のインナー(スパッツ)と靴に手袋だけを装備し、その目に涙を浮かべ、恥ずかしそうにこちらを見つめるほぼ裸のカナタの姿だった。


「えっと・・・こんなのしかないんだけど、使う?」

「うっ、ぐ、こ、この格好じゃなくなるなら、もう何でも良いです・・・。」


 もはや半泣きのカナタに大き目のタオルをかけ身体を隠し、服を渡すリッカ。その優しさにカナタは笑みを取り戻すが、受け取った服を見て再びその目に涙を流すのだった。




「えっと・・・確かに、たしかに!僕はあの時、あ、あんな格好から逃げられるなら何でも良いと言いましたけど!」

「いや、おねえさん言ったよ?こんなのしか無いけどって。大体私、そんなに代えの服って持ってないし?」

「う、うぅ~~っ!!」


 【囁きの洞窟】でプレイヤーキラーに着ていた服を壊されたカナタは、色々失った末にリッカさんから受け取った服に着替えていた。ただ――。


「なんでメイド衣装(こんな服)は持っていて、普通の服は無いんですか!!」


 問題があるとすれば、今着ている服がメイド衣装だと言う事に尽きるだろう。それもクラシカルなものではなく、コスプレ衣装に使われているようなスカート丈の短いタイプのものだ。


「お店を持った時に、NPCに渡す為に持ってた奴だからねー。私が着る訳じゃないし?」

「着せる人の事を考えてください!」

「着ても大丈夫な人しか雇う気無かったから、大丈夫。」

「良いんですか、そんな決め方で!?」


 現在、僕はリッカさんの露店で売り子をしている。まだリッカさんはお店を持っていないので、僕が頼んだ<鑑定>や買取査定をしている間は客対応が出来ない。そこで本来ならお金かアイテムを対価として頂くところを、僕が接客することでどうか?とリッカさんに相談されたのだ。

 そんな事で良いのならと言う考えと、はやくさっきの事件を忘れたい気持ちから深く考えずに受けちゃったけど。


「なんか、さっきより人に見られてる気がするんですが。」


 ここはプレイヤー間での通称が露店通りなだけあって人の往来も多く、お店の対応をしていない時にもかなりの視線を感じている。見られてる、何か凄く見られている。


「だってかなたん、普段でも可愛い子がメイド服を着てるんだよ?そりゃあ嫌でも注目しちゃうでしょ?」

「納得いきません!僕は男なんですよ?男がメイド服着てるのを見て喜ぶなんて、どんな変態ですか!」

「かなたん、可愛いに性別は関係ないんだよ。」


 そんな真理を聞きたくは無かった。と思ったけど、ジョーも似たようなことを前に言っていた記憶が。もしかして似たような感性持ち?

 リッカさんと言い合いをしている間もお客さんは来ているし、こちらを見つめる視線も増えている。


「や、そんな見ないで・・・。」


 無理、これ無理だって!顔が熱い、たぶん今僕の顔は恥ずかしくて真っ赤になっている筈だ。女性ものの服でファッションショーとか無理やりやらされていたし、耐性は少しはあると考えていた自分を殴りたい。あれはあくまで身内だから耐えられたのであって、こんな知らない沢山の人に見られるとか無理!


「それよりほら、ちゃっちゃと働く。お客さん待ってるよー?」

「っ~~もう!」


 接客の手が止まっていることをリッカさんに指摘され、半ば意地でお客さんを回してく。時々、いや3人に1人位の多さで「素敵なスマイルを下さい」とか「私の付き人になってください」とか変な人が混じっている。そういった人には笑顔で「サポート対象外です」「戯言は受け付けていません」と適当にスルー。

 たぶんこの間ずっと僕の顔は羞恥で赤いままだったと思う。お客さんを全部捌ききった頃には夕日がまぶしく、リッカさんのお店に商品はほとんど残っていなかった。


「いやあ、ありがとうかなたん!私のお店でこんなに早く在庫が無くなったのは久しぶりだよー。」

「良かった、色々投げ捨てた甲斐がありました。あの、それで・・・普通の服、ないんですか?」

「むしろ、なんでお姉さんが普通の服を持っていると思ったの?」


 なんでそんな、「変な事を聞くね?」って顔してるんですか!?


「さ、それじゃ取引のお話――だけど、そのままじゃあ嫌だよね。場所もちょっと変えようか?」


 リッカさんはまだメイド服の僕を連れて露店通りを歩いていく。もう視線を浴びるのも慣れてきたから多少は平気だけど、気持ち悪い目で見てくる人は苦手だなあ。ハランスメント警告出てますけど。そんな僕を無視してか、気を使ったのか、少し急ぎ足で進んでいくリッカさん。


「あ、あの。どこへ向かってるんですか?」

「んー、お姉さんの類友のところだよー。」


 ちょっと、行きたくないと思ってしまった僕は正しいと思う。ちょっと失礼だろうけど。

 もうしばらく歩いていたけど、やがてリッカさんが目的の人物を見つけたのか、そちらへと手を振り駆け寄っていく。その先には綺麗な水色の髪をした女性がいた。

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