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Fantastic Life Online  作者: ようほう
本格的冒険と謎のお宝
16/28

Scene2-4

 FLOにinすると、こっちの世界は夜が明けたところだった。丁度いい時間なので、今日の予定を考えながら1階に降りる。と美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる。


「おはようございます、カナタさん。朝ご飯食べていきますか?」

「出来立てみたいですね。ありがたくいただきます。」


 80belをルミーレさんに支払い席に着く。そして目の前に置かれたのはパイに見える何か。僕が困惑していると、ルミーレさんが笑いながら切り分けて小皿においてくれる。その断面を見て、僕はそれがパイじゃないことに気付いた。


「キッシュでしたか。中々見る料理じゃないからわかりませんでしたよ。」

「そうなんですか?結構腹持ちも良いので、こちらでは冒険者の方が良く頼まれるんですよー。」


 一緒に出されたミルクティーを飲みながら、改めて今日の予定を確認する。ジョーは調べものだかわからないけど別行動。リィーナはβテストの時の知り合いと近況報告。久しぶりの一人での行動かもしれない。そうなると、今のうちにやっておきたいのは例の素材を使った<錬金術>か。<鍛冶>でインゴットだけ作っておくのもありかもしれない。

 出されたキッシュは美味しく、お腹にたまるのだがしつこさは感じられない。普段は小食の僕だけど、半ホール分は食べきっていた、


「今日は町で1日過ごそうと思います。主に作業場の方ですね。」

「そういえば<調合>や<錬金>出来るんですよねー。でしたら、こちらの依頼を―「やりませんよ?」―でしょうねー。」


 例のポーション納品の依頼書を出されたので、被せ気味で断った。断っても笑顔なのを見ると、ルミーレさんもめんどくさいと思っているんじゃないだろうか。


「残りのキッシュはお昼ご飯にでもしちゃってください。今切り分けて詰めて来ますからー。」

「良いんですか?ありがとうございます。」


 これでお昼を買いに、一度作業場から離れなくて済む。箱詰めされたキッシュを受け取り、僕は作業場の方へと足を向けた。



「さて、と。」


 利用料金を少し多めに払っておき、まずは錬金術の工房へ。場所は前回と違い、個室が利用できる1個上の階だ。実験ってあまり人に見られたくないし。<魔導機>関係となると、更に誰かに見られるわけには行かない。僕は目立ちたくないからね。


 まずは薬草10個を使い、ポーションを作成。今日はこのポーションに採って来たものを入れて、その反応を確認する。まずは本命の【癒療花】からだが、このアイテムの説明を見るに必要なのは花弁だけだと思う。まずは1枚千切ってポーションへ。しばらく金属棒を使ってかき混ぜていると反応がおこり、液体の色が赤色から薄桃色へと変わっていく。


「さて、変化は・・?」


 さっそく出来上がったポーションの能力を<鑑定>してみる。


――――――――――

【HPポーション・壱分】

 回復量:45

 レア度:3 製作者:カナタ

 説明:回復効能を強化した薄桃色のポーション。

――――――――――


 市販のポーションの回復量は30なので、花弁1枚で15上乗せされたことになる。それを確認する為に、こんどは残っている花弁の内2枚を千切って別のポーションへ入れ、反応を待つ。

 出来上がったのは先ほどよりもわずかに色の濃くなった薄桃色のポーション。


――――――――――

【HPポーション・弐分】

 回復量:60

 レア度:3 製作者:カナタ

 説明:回復効能を強化した薄桃色のポーション。

――――――――――


 うん、予想通り15増えた。それじゃあ今度は全部入れてみよう。【癒療花】の花弁の数は4枚なので増える量は60、回復が90になる筈。


――――――――――

【HPポーション・肆分】

 回復量:90

 レア度:3 製作者:カナタ

 説明:回復効能を強化した薄桃色のポーション。

――――――――――


 予想通り。まだ確定ではないが、【癒療花】の花弁は回復効果の向上と見ていいと思う。それとは別に気になっていることが一つ。


「・・・肆分ね。」


 花びら一枚で壱分、4枚で肆分なので入れた花弁の枚数で間違いは無い。【癒療花】の花弁は4枚、しかし花弁の形は現実でいうところの桜に酷似している。と言うことは――。


「八分咲きも、あるよね。きっと。」


 しかし問題は、何枚入れればいいのだろうか。普通に考えるなら8枚だけど・・・何枚まで効果が出るのかな。

 それでも、材料はまだ2つしか使い終えていない。


「――まずは8枚と10枚かな。」


 インベントリから新しく【癒療花】を4つ取り出し、2つのポーションにそれぞれ8枚と10枚の花弁をいれ、反応が起こるのを待つ。

 8枚入れたほうが先ほどの3つと同じくらいの時間で反応が起きたが、10枚投入したポーションは未だに反応を起こしていない。あれ?失敗かな?とカナタが考えていると、少し強めの光を放ちポーションが反応を起こした。


「失敗、って訳じゃないみたいだね。量が2桁になると反応にかかる時間が遅くなるのかな?」


そして出来た2つのポーションは次のような性能だった。


――――――――――

【HPポーション・蜂分】

 回復量:150

 レア度:3 製作者:カナタ

 説明:回復効能を強化した薄桃色のポーション。

――――――――――

――――――――――

【HPポーション・満開】

 回復量:200

 レア度:4 製作者:カナタ

 説明:回復効能を強化した薄桃色のポーション。液体の中を、桃色の粒子が舞い散る花びらのように踊っている。

――――――――――


「うーん、満開の方の回復量が規則より若干多い。これはボーナスか何かかなあ。でも費用対効果はどうなんだろう?」


 序盤のポーションとしては十分のものが出来たと思う。市販のポーションの回復量は30で、これはパーセンテージではなく固定値だ。FLOのHPはレベルを主とし、補助的に該当ステータス・スキルによって増減する。今のところ判明しているのは<体力><腕力><防御>の3つ。それぞれ近接戦闘をする人にとっては上がりやすい部類のものだ。


「んー、リィーナに聞いてみよっか。」


 僕は回避型(そもそも生産技能がメイン)なので1発貰ったら終了が多い、HPはそんなに高くないのだ。ジョーも同じく後衛なのでHP補正は低くなっている。

 僕たち3人組みの中で前衛と呼べるのはリィーナだけだ。それでも回避型なのでHPがそこまで高くは無いと思うけど、参考の一つにはなる筈だよね。ログインはしているようなので、さっそくwisを飛ばして聞いてみることにした。


≪ごめんリィーナ、今大丈夫ですか?≫

≪あや、大丈夫だよー。どったの?≫

≪少し参考にしたいのですけど、リィーナのHPって今どの位あります?≫

≪えーっとねえ、740だよー。≫


 僕のHPが400だから結構差があるね。


≪ありがとう、リィーナのHPってやっぱり低い方に入るのかな?≫

≪そうなると思うよ?今タンク型っぽい人が居るから聞いてみようか?≫

≪失礼でなければお願いします。≫


 例の友達だろうか?と言うか、電話と違って向こうの音が聞こえないから何も言わないけど、まさか戦闘中とかじゃないよね。ありそう、でも死にそうにない位リィーナの声には余裕がある。


≪教えてくれたよー。やっぱり<防御>も取ってると一気にHP上がるみたい。その人は1100はあるってさ。≫


 おう、4桁がこんなに早く。と言うことはあまり前衛には必要ないけど、後衛や僕たちみたいな斥候・生産プレイヤーには丁度いいくらいかもしれない。でも1つ作るのに花3つか。あんまり多く取れないんだけどなあ。


≪急にどうしたの?≫

≪ちょっとポーションの研究をしてたので。≫

≪ああ、そっか、そうだね。がんばって良いポーションを作ってね!私が怪我しても大丈夫なくらい凄いやつ!≫

≪高くなりそうだね、それ。≫


 お礼を言ってwisを切る。大まかにだけどHP量と、ソレに対する効果の予想はついた。本当はもっと調べるべきかもしれないけど、僕の知り合いって全然いないし。

 そして、その数少ない知り合いには別の事を聞くしね。


≪えーっと、リッカさん。カナタです。≫


 と、wisした後に気付く。リッカさんは<鍛冶>を上げている人だ、今も依頼が殺到しているんじゃないか?邪魔したら悪いし、後にしよう、と発言する前に返事が帰ってきた。


≪おおー、かなたんナイスタイミング!≫

≪はい?≫

≪もお聞いてよ!これにはお姉さんもプンプンだよ?≫


 リッカさんが言うには、今も尚ポーションの買占め、転売は続いておりついには初期回復量のポーションなのに単価300が最低ラインになっているらしい。流石にこれはマズイ、と思ったリッカさんは知り合いの生産プレイヤーに声をかけ、値段が釣りあがらないように転売はさせない事を徹底させようとしたんだと。β時代の知り合いも危ないとは思っていたらしく、リッカさんの言うことには賛同してくれた。ただ他のプレイヤーはそうでもなく、儲けられればいいのが大半だったらしい。


≪既にポーション買えない人が沢山出てるのに、更に締め出してどうするのさ!人が一気に減ったら自分の儲けも減るのにね!!≫


 いつも以上に語尾があらぶっている。そうとう怒ってるんだな、まだサービス開始間もないのにこの迷惑行為はねえ。


≪流石にそろそろきついと思いますけど・・・そもそも、依頼は皆さん受けているんですよね?それでも薬屋さんの販売が追いつかないんですか?≫

≪あー、それ聞いちゃう?≫

≪え?何かあった――んですよね、そう言う返しが来るってことは。≫

≪んふふ、賢い子は贔屓しちゃうよー。実はあの依頼ね、ここ数日――現実で数時間かな?――ぱったりと受けてる人が居ないのよ。≫


 リッカさんもお客に聞いた話だが、理由の一つには自分でポーションを売った方が儲かると言う人たちが露店やトレードで売買しているのがある。他には自分から転売している人に商品を持ちかけているとか、売るほうも売るほうだけど買う転売屋もなんだかなあ、良いの?

 そしてもう1つの理由が、薬草がとれなくなったから。っていやいやいや。


≪え、薬草取れますよね?東や北にある森エリアに沢山ありますよ?それにそれ以外のエリアだって、探せばあるものですし。≫

≪あー、根本から違うのよ。ムカつく話なんだけどね?≫


 なんでも、一部のプレイヤーが外のMAPに出なくても薬草が取れる場所がある。と言っていたそうだ。着いて行ったプレイヤーが案内してもらったのは、町の南側にある耕作地帯。


≪・・・もしかして。≫

≪そ、一部のバカが町で育ててる薬草を全部収穫しちゃったのよ。≫

≪それだけじゃないですよね?薬草の成長は早いので、2~3日あれば使える大きさまで育つ筈です。≫

≪んふー、かなたん私のところで働いて欲しい位賢いね。≫


 不思議に思った住民(NPC)が畑に監視を置いたらしい。そして監視がいるのに気付かず畑に来たバカ共があっさりと捕獲され、牢屋行きになったそうだ。自業自得じゃん。

 その件以降、畑エリアに兵士が配置され、さらに巡回も数組いる為に薬草がとれなくなる。そして、町の外から薬草を取っていた人たちはポーションにして自分で売るか高く買ってくれる人に売るため出回らず。


≪町長からの依頼は今もそのまま、薬屋さんが使える薬草の確保は出来たけど、生産は追いつかずこっちもそのまま。≫

≪うわあ。≫


 自分で自分達の首を絞めている。しかもわざわざ遠回りな方法を選んで。


≪それで、最低単価300の初期ポーションですか。≫

≪馬鹿らしくなるよねー。アハハハ、ハア。≫


 乾いた笑い声を上げながら語るリッカさん、何かもうお疲れ様です。

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