Scene2-3
累計PV5万を超えていました、ありがとうございます。
今日の更新はこの1話のみです。
広場の隅に存在した水辺は小さな池位の大きさのようで、陸地――こちら側に近いところに女の子が浮かんでいる。うつぶせで。微動だにしない・・・え、死体?でも死んだら最後にログインした場所まで戻る筈だよね?
「って、考えてる場合じゃないよ!」
バケツを放り投げて池に飛び込む。けっこう冷たいけど、流石に放置は出来るほどの心は持っていない。気を失っているのか死んでいるのか判らないけど、抵抗が無いからすんなりと陸に引き上げることが出来た。
「えっと、人工呼吸、はゲームだし必要ないか。HPは・・・まだ残ってる。気絶でもしてるのかな。」
サイドポニーの小さい女の人だ。自分も、男性にしては背が低いと自負しているけども、そんな自分と同じくらいの背の高さだと思う。着ている服はジョーと同じローブ系だけど、マントじゃなくてケーブを羽織っている。魔術師志望かな?
カナタが観察していると、少女の眉が少し動くのと同時、呻き声が漏れた。うっすらと目を開く少女。
「う、あ・・・れ?町じゃ、無いの?」
どうも記憶が混乱しているようだけど、やっぱり死に掛けてたんだ。溺死とか苦しさが凄いんだけどなあ、別のゲームで体験して以来水場には可能な限り気をつけることにしている。
「大丈夫?そこの池に浮いていたんだけど。」
「うー、あ。だ、大丈夫です、思い出してきましたから。ええと・・・。」
「あ、名前が見えないんだっけ。僕はカナタ。」
「うぅ、カナタ。ちょっとお願いを聞いてくれない?」
まだ苦しそうな表情で言葉を紡ぐ少女。助けた手前、そんな事を言われると放っておけない。
「出来る範囲でなら、だけど。」
「それなら、きっと大丈夫。だから――」
僕は聞き逃さないようにと、耳に意識を集中する。少女の口から出た言葉、それは。
「ご、ご飯を・・・ください。」
「いやー、ありあとうございまふ。ほんなにたふはんひただひてしまふて。」
「後で良いから、今は好きなだけ食べていってよ。」
「はい!!」
溺れていた少女は僕の目の前で大量の焼き魚を食している。ここに来るまでにたまっていたとびうおの尻尾に、塩コショウをふりかけ鉄板で焼いた簡単なものだ。
「ごめんね?魚ばかりで。」
「ん、くっ・・・ぅん。いえ、食べ物をもらえただけでも十分ですよ!」
「お肉ばっかりだったし、たまには魚尽くしでも良いよねー。」
「うーん、生ものはなあ。冷凍保存が出来ないもんか。」
塩焼きと僅かに手に入っていた生魚を使ったアクアパッツァが今日のお昼ご飯。お供にはフランスパンとラスクを。
僕たちはご飯を食べながら、この女の子にいきさつを聞いてみた。
「自己紹介がまだでしたね。<錬金術師>のサラって言います。」
サラはソロで<錬金術>のスキルを上げる為にここまでやってきたらしい。なぜかと言うと、ここの鉱石が<錬金術>のレシピに必要で、敵もそんなに強くない。実際に戦うまではわからなかったけれど、予想以上に一人で戦えたものだから「これならもっと奥まで行けるのでは?」と欲に駆られた、と。
ただ奥まで進んだところで敵の沸きが多くなり、MPも切れて逃げてきた・・・ところでお腹が空いていたことに気付く。魚でもいないかな?と池を覗き込んだところで――。
「腕に力が入らなくなり、池に落ちた、と。」
「そうなんですよー。食事のペナルティがこんなに強いとは思ってもいなかったので。」
空腹度がどの位まで減っていたのかは判らないけど、腕に力が入らないって相当じゃ。身体も思うように動かせず・・・ああ、それで全然動かなかったんだ。
「いやー、溺れるのって苦しいんですね。」
「そうだね、コレに懲りたらちゃんと食事を―。」
「次からは水中でも息ができる装備を忘れません。」
「食べ物を持っていこうよ!?」
サラは何言ってるの?と言う感じの顔で一言。
「そんなもので枠を埋める位なら持って行きたくないです。」
「さっきあんな目にあって置いて、考え変わらないの!?」
「いや、だから呼吸できるものを。」
「装備しないのなら枠1つ使うのは一緒だし!それなら1枠で沢山ストック出来る食べ物の方が効率良いよ!!」
「・・・・・・おぉ!?」
え、その顔気付いてなかったの!?その「手があったか!」みたいな表情しないで!
「あー、それでサラだっけ?素材は必要な数集まったのか?」
ジョーが空気を呼んで質問をぶつけてくれた。ありがとうございます、突っ込み疲れとか息が苦しくて。
「少しでも早く逃げるようにと、逃げながらばら撒いちゃいました。」
「本当に何しに来たのさ!!?」
意味無いじゃん!危険だって判っていておくに進んで、素材捨てるって!
「その件でですね、助けてくれたお優しい人たちにお願いなんですけどー。」
面倒ごとに巻き込まれる未来が、机に突っ伏した僕の脳裏に鮮明に思い浮かんだ。
結果を報告すると、何もありませんでした。サラが僕たちにお願いしたのは採掘中の護衛であり、僕たちの目的と同じだったのだ。危険を冒してまで経験値稼ぎに来たわけではないので、来た道を戻りながらサラの採掘を手伝っていく。
途中ジョーが<探索球>に妙な反応があるのを見つけ、そこを調べたところ隠れポイントと言うべきかな?【アマゾナイト】が普段より出やすい採掘ポイントを発見する。これには僕たちも大喜びで、インベントリには70個超えの【アマゾナイト】を掘り出すことが出来たのだ。
「まさか捨てた量より沢山の素材が手に入るとは思っていませんでした!」
「良かったな、それはカナタがお前を助けたおかげなんだぞ?」
「はい!これからは毎日3回、カナタさんにお祈りメッセージを飛ばそうと思います。」
「嫌がらせだよソレ、しなくていいですよ!」
ここで死なれたりしたら寝覚めが悪いので、結局僕たちで町まで送り届けることになった。町に着いたら付いたで、サラはFL登録だけしてさっさと何処かへ行っちゃうし。
「子供の相手って疲れますね・・・。」
「おお、珍しくカナタの息が上がってるな。」
採掘だけかと思えば敵を倒して欲しいといってくるし、帰り道では少し目を放したら敵に気付かず採取しようとするし・・・うん、子供だ。それもすごく手のかかるタイプの子。
ものが作れたら連絡しますって言ってたけど、そういえば何をつくろうとしていたのか聞き忘れちゃったなあ。いや、あれ以上疲れたくなかったから聞かなくて正解かも。
「疲れました・・・一度宿に戻ってもいいですか?掃除もしないといけないので、少しログアウトしたいです。」
「いかん、本気で疲れてら。それなら気にすんな、俺は俺で調べたいこととかもあるしな。」
「私も気にしないで良いよー?βの時の友達と近況報告したいからね。」
今日はもう別行動で、と言う意見でまとまったので一度解散することに。僕はさっきも言ったとおり、いい時間だったので掃除をしたい。宿へ戻り、鍵ルミーレさんから受け取ってログアウト、っと。
意識が現実に戻り、時間は午後2時過ぎ。よしっ、気分転換もかねてぱぱっと掃除を終わらせてしまおう!
気が付くと3時過ぎ。掃除も終わったし中途半端な時間だし・・・あ、まだ取ってきた鉱石も渡してないや。それに試してみたい<調合>もあるし、うん、もう一度ログインしようかな。
晩御飯は軽いもので、丼物にしよう。




