第4話 リベンジ
ゲクトが夕食を持ち帰っていたところにゴキブリの邪気が五体満足の状態で現れた。
下水道の時の姿とは異なり、体の一部が発光している。
夜の暗闇に奇怪な光が揺らめく。
「ジョークすら言えないこの屈辱・・・。
甲斐なき後悔にならないために殺す。
それ以外解なし。」
ゴキブリの邪気は不規則に走り出す。
纏う怪しい光が残像のように空中に留まり、距離感の取りにくい空間を周りに作った。
地下同様の対応でゴキブリの邪気の軌道を予測しようとするが、外では匂いが邪気の巻き上がる風で流されてしまう。
「やっぱり動かないと始まんねぇな。」
俺は腸を伸ばしながらゴキブリの邪気を追う。
「面白い。余の加速は車なんぞを凌駕する。」
邪気は羽を広げて家の屋根を渡り、翻弄させる光をうねらせる。
邪気の加速は追いつけないほど速くなり、ついには目視でも難しくなってきた。
激しい光と共に邪気が消えた瞬間だった。
気づかない内に俺の左腕は中に舞っていた。
「人は余の速度に反応できない。」
全く反応ができなかった。
また同じように口を構えて捕えることはできなさそうだ。
荒い刃物の刃が左腕を刺激する。
そしてまた右腕、同時に右脚も吹き飛ぶ。
俺は屋根の上で仰向けで倒れた。
手も足も出ない相手にとてつもない不快感を覚えた。
次に起こったのは心の中で渦巻く何かが、飢えを満たす為に飛び出してきた。
ギアラの邪気の体がみるみる大きくなっていく。
全身の力が吸われている。
視界は暗くなり、何が起きているのかわからない。
ギアラが呻き声を上げている。
ゴキブリの邪気と戦っているのだろうか。
少しして、意識が戻ってきた。
月の光が瞼の隙間から差し込む。
上半身を起こした。
両腕、右足が元の状態に戻っている。
隣にギアラがいた。
「やぁゲクト。気分は?」
「クラクラする・・・・・・。」
「貧血かな?血が必要だね。」
「あのゴキブリは?」
「逃げた。」
立ち上がって一度深呼吸をした。
すると、俺に呼びかけるような声が下から聞こえた。
きっちりとスーツを着た男女2人が鋭い目つきで屋根上を見上げている。
ギアラの声に寄ってきたのか。
「おい。いるんだろ?邪気。
3秒以内に顔を出せ!」
3秒のカウントダウンが始まり、残り一秒わずかのところで顔を出し、男と目が合った。
すると、男は背中から刀を取り出して何もない場所を切る動作をした。
威嚇かと思われたその動作の後の刀には血が付着していた。
「ア゛ギャァ・・・・・・。」
すぐそばでは、突然現れたゴキブリの邪気が真っ二つに倒れていた。
俺はそっと屋根から降りた。
「とりあえず邪気関係なく補導で、事情聴取といこう。
邪気課の松村だ。」
「私も同じく邪気課の原井。」
邪気課に出会ってしまった。
暗い紫髪の原井は情報を集めたりすることが仕事のようで質問してきた。
その間に松村は倒れたゴキブリの邪気を調べている。
原井は住所や、外に出た目的、なぜ屋根にいるのか聞いてきた。
聞き方は事務的なトーンで、表情も変わらず淡々とだった。
ゴキブリ戦での手足の欠損の時の血が服についているので、当然に怪しまれている。
血について聞かれた時、ギアラは邪人だと告白しろと俺だけに聞こえる声で言った。
何か計画があるのかは知らない。
とりあえず邪人だと言った。
「やっぱり邪人だったか。
契約の内容と邪気の名前を教えろ。」
松村はゴキブリの邪気を見るのをやめ、近づいてきた。
警戒しているのか手を刀に添えている。
「契約内容は人を救うこと。
名前は食の邪気。」
「随分と綺麗な契約だな。代償は?」
「邪気を食べる。」
「それだけか?
契約的にも強そうな邪気ではないな。
お前は邪人として邪気課に来るのか?親の許可が必要だが。」
「両親は邪気に殺された。
あと行く。」
「満点の回答だな。
そして邪気課の寮にお前を入れる。
あと、邪気を食えるならあの邪気をー・・・。」
松村が指差した先にはもうゴキブリの邪気の姿はなかった。
道路に血だけが溜まっているだけで、すでに気配は消えていた。
「まぁいい。
俺はあいつを探す。
原井、こいつを寮へ連れて行け。」
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