第3話 不快な者
ソファーで朝のテレビを見ていると、俺の住む場所の近くの交差点と現地アナウンサーの映像が流れた。
昨日、あの交差点で昼間から邪気が現れたという通報のあった場所だった。
そして名の知れない邪人が現れたという現地の住民の情報が流れていた。
その映像を俺とギアラは見ていた。
「これ、俺だよな。」
「この映像のせいで邪気が寄ってくるかもな。」
「よし!これで沢山食えるな、ってなんで寄ってくんの?」
「私を狙う邪気は多い。」
「美味しいの?」
「そんなところだ。」
昨日の服を着て俺とギアラは外へ飛び出した。
意気揚々に街へ向かい、昨日と同じように裏通りを徘徊していた。
が、昨日のようにそう上手くは出会えなかった。
仕方なく、日の当たる大きな公園に行った。
この公園は断続的に人が押し寄せたり、静かになったりする場所。
みんなスマホを片手に、たまに2丁スマホの人もいる。
そんな変わった場所で今日もまた人が大勢集まっていた。
話というわけではなく、ただひたすらにスマホを触っている。
ただ、人が多いだけで邪気は現れるものではない。
人目を盗んだ暗い場所で獲物を待ち構えるのがほとんど。
俺は一息ついて公園のベンチに座った。
邪気のギアラを連れ回すと人が騒ぐので俺の中にはいるものの、あの姿にはならないようにしている。
日は正午を回り、傾き始める。
ぼんやりと一点を見つめて座っていた。
マンホールから反射する光をどれだけ長く見ていられるのか試していた。
その反射光は誰かの足に遮られ、記録を邪魔されたなー、と思っていたところマンホールが開き、その足を引きずり込んだ。
周囲の人もその一瞬の出来事に固まっていた。
邪気だ。
このマンホールから離れた場所でまた別のマンホールに人が吸い込まれた。
この邪気は下水道を移動して人を襲っている。
「汚ねえ邪気だな。」
俺はギアラの姿になって下水道へ潜った。
予想通りの汚さと臭い。例の虫もいる。
下水道の中はずっと水の流れる音が鳴っている。
いつどこから邪気が現れるのかわからない。
ふと、背後で風が靡いた気がした。
後ろを振り返った瞬間、何かに体を持っていかれ吹き飛ばされた。
壁に激しく打ち付けられた。
全身が痺れる感じがする。
「心臓にロックオン♪戦闘にゾッコン♪尋常に続行♪信号にlet’s go!」
妙にノってしまうラップを口ずさみながら現れたのは「ゴキブリの邪気」。
下水道を素早く移動して攻撃を仕掛けてくる、厄介な邪気。
ゴキブリの邪気が持つ肉切り包丁の一撃でも貰えば胴体は無事ではいられなさそうだ。
「なんでゴキブリが歌ってんだよ?」
「余のビートはhabits(趣味)。
地下は寂しくてだね、こうやって仲間達に聞かせてやるのさ。」
ゴキブリの邪気の足元でわらわらしているゴキブリが仲間のようだ。
痺れて動けない俺に悠長に詰め寄ってくる。
ある程度近づいた時、俺は口を大きく開け、喰らった。
「流石に舐めすぎだ!
食の邪気ィ!」
ゴキブリの機動力で避け、別の下水道から俺の体を横切るように包丁を通した。
胸から溢れる血をゴキブリの邪気は切りつけた一瞬にひと舐め。
俺は胸を押さえて険しい顔で立ち上がる。
ゴキブリの邪気は下水道を高速で再び走り回る。
もしもう一度斬られるなら、ひとたまりもない。
腸を出し、ゴキブリを捕える準備をした。
「ゲクト、邪気は見るんじゃない。食べ物だ。」
食べ物・・・・・・?
到底ゴキブリを食べ物としては少ししか見ていないが、匂いを嗅ぐように想像した。
下水道の奥から微かに肉様香気が漂ってくる。
その匂いの方向へ口を大きく開いた。
口の中に何かが飛び込んでくるのを感じる。
苦いプラスチックを食べているような食感だった。
「アギャァッ・・・。」
ゴキブリの邪気は虫の息から絞り出すような声を残して食われた。
マンホールから出た後は、刑事課と邪気課が立入禁止区域を作っていた。
見つからないように人混みに流されるように現場を立ち去った。
「邪気課がもう来ていた。あのニュースはかなり広まっている。
捕まりでもしたら殺される。」
「夕飯取ったらすぐに帰ったほうがいいか。」
今日はパンと野菜の残り物をファストフード店から取り出した。
帰る頃には日は落ちていた。
残飯をいれたポリ袋を揺らしながら帰っていた。
「終わるはずなかろうが。余の生命が絶つはずなかろう。」
暗闇の中からあの声が聞こえる。
読んでくださりありがとうございます。
よろしければ、リアクションを貰えるとモチベーションと表紙を描く糧になります。
メッセージでの感想も大変喜びます。
若輩者ですがよろしくお願いします。




