第2話 食べ物
第2話 食べ物
ゲクトが訪れたのは街の薄暗い裏通り。
目的場所は焼肉屋。今いる場所はまだまだそこから遠い場所だった。
足音は響き、たまに水溜りを踏む。
ダクトから生暖かい風が吹いている。
「食の邪気って名前長くね?
別のでいい?」
「好きにしろ。」
俺は左上を見上げながらあだ名を考えていた。
すると吐息交じりの囁きがどこから降り注いできた。
不快だった。
「どしたん?迷子ちゃーん?」
ペタペタと来た道から鳴り響く。
振り返ると、惑の邪気が半透明な長細い体をゆっくり壁伝いに4つの手で高い壁を移動していた。
「こんなところに来るのが悪い。
じゃぁ、食うね。」
惑の邪気は手を伸ばして掴んでくるので、不意打ちで腕ごと食いちぎった。
邪気は千切られた腕を止まってまじまじと見つめる。
「食の・・・邪気・・・・・・?
まずいな。」
惑の邪気は方向を変えて上へと上昇した。
俺は腸を使って建物の屋上へ上がる。
邪気はすでに逃げ腰で風に乗るように空を流れて逃げ始めた。
「逃げんな!わざわざ不味い物食ったのに!」
邪気の尾を腸で掴んで、一緒に空を飛んだ。
「お前が勝手に食っただけだろ?!
このまま叩き落としてやる!!」
邪気は降下を始め、広めの交差点に激突した。
その交差点は人通りも多く、俺が落ちた場所そばには呆気にとられた会社員がいた。
「やはり邪人は不自由だな。」
俺の死を最後まで見届けたかった惑の邪気に舞った砂埃から腸が飛び出し、邪気の身柄を捉えた。
「へ?は?
おかしい!おかしいィ!」
惑の邪気は砂埃の中に引き込まれて、ガムを食べるような咀嚼音を立てた。
砂埃が落ち着き、俺の姿を見る。
「へへっ。腰痛ぇな。」
俺が腰を伸ばす動作をすると、度肝を抜かれて一目散に人々が逃げ出した。
「君、目立ちすぎ。
夕食を見つけたら帰ろう。」
交差点の近くに目的の焼肉屋が好都合にもあったので焼肉屋の裏に回った。
「やっぱここだよなー。
匂いがたまらねぇ。」
俺はゴミ箱の蓋を開けて、手を突っ込む。
取り出したのはゴミ袋に溜まった汁と肉片だった。
「君、本気?」
「邪気が引くなよ、邪気だろ?
意外といけるよ。」
今日の晩飯を調達できたので、夕暮れの帰り道を辿る。
「あっ、そういえばあだ名考えたぜ。
これ見てくれ。」
俺は邪気に向かって焼肉屋のゴミ袋を突き出した。
「ゴミがなに?」
「これ、牛のギアラ。
だからお前の名前はギアラだ。」
「そうかい。私はギアラ・・・・・・。
君、ちっとも捻ってないな。」
「へへっ。」
夕日は落ち、まだ電気の通っている家に到着した。
相変わらずリビングの窓は割れたままだが、どうでもいい。
俺はゴミ袋からギアラと原型のない肉達と汁を取り出して、紙皿に盛った。
白飯はまだ残っていたので、それに肉を乗っけることにした。
「ギアラ。飯できたけど食う?」
「私は邪気の方が好きだし、人は強くなるために食ってるまでだ。
牛や鳥の肉を食うつもりはない。
・・・まぁ、食ってやらんでもない。」
ギアラは一口だけギアラを摘んで2階に上がって行ってしまった。
俺は一人で残りの肉をいっぱいに頬張った。
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