第15話 繋ぎ役
咲野玲は賭博の邪気と契約をした後、広島行きの電車に乗る。
竹内に見送られて、端の席についた。
スマホを覗いて暇を埋める。
が、少しすると目が疲れてくるので、今度は外に目線を移した。
目を映して数分、広島駅案内のアナウンスが電車に放送された。
大阪から広島までは距離がある、が瞬く間に着いてしまった。
これも賭博の邪気によるあれのせいだった。
駅を逃してしまったらどうしてくれるんだ、と不安と少し苛立ちを感じた。
すでに外は夕日。
ゲクトもそろそろ帰っている頃だろう。
駅周りで多くのブルーシートが路上を覆っているのが見受けられた。
邪気でも現れたのか?
ずっと長く敷かれているシートは邪気が暴れた度合いを表しているようだった。
寮へ歩き出すと、久しい駅からの帰路は僕に安心感を与えてくれる。
寮に着いてすぐ、見舞いに来てくれた原井さんに礼を言いに行った。
「繋ぎ役の子は4日後本拠地に返します。」
と、言われてあまり会う時間はないそうだ。
そして自室の扉の前に立った。
一度、息を整える。
「生きてるかー?」
と一気に扉を開ける。
一番に目に入ったのは裸の黒性だった。
「は?」
そうだった。黒性という繋ぎ役がいたんだった。
なぜバスタオルを被って部屋中を歩き回っているんだ?
その理由を問うも、病院の時のように一切口を開かない。
トイレの流水音が鳴り終わると、ゲクトが出てきた。
「お!退院してんじゃん。」
「ただいまだ。
そうと、なんで黒性は今だに喋らないし、裸でリビングを歩き回るんだ?」
「俺もわかんねぇよ。
ほとんど喋んねぇし、俺が死にかけた時も何にも言ってくれなかったし。」
「死にかけた?」
「駅前で列車の邪気っていう奴に負けちまったよ。」
ゲクトの言うことから駅周辺でのブルーシートの正体がわかった。
更に列車の邪気はまだ生きていて、ワープのような能力を得たという情報も貰った。
その後は黒性に本拠地に帰ることを伝えて、僕はキッチンに立った。
シンクの中には使われて重ねられた皿があった。
「食ったなら洗えよ。」
と呟いて、スポンジを手に取り泡立て始めた。
ジャムや食べクズが付着した皿を同じ行程で繰り返していくうちに、ふと和室とリビングを隔てる襖が少し開いている。
隙間から見えたのは脱ぎ捨てられた服だった。
握っているスポンジが泡を弾けさせながら潰れる。
洗い終えた後は散乱した服を畳んだ。
相変わらずあいつらは手伝わず、各々が身勝手にくつろいでいる。
黒性はリビングで一点を見つめて固まっている。
ゲクトはテレビを覗くようにまじまじと見ている。
「僕は世話のためにパートナーを組んだわけじゃないぞ。」
ゲクトの耳には届かなかったのか僕の発した言葉に無反応だった。
僕がゲクトの肩に手を置いた瞬間、我を戻した。
集中していたのか僕が隣に来るまで気づかなかったようだった。
そんなゲクトが集中して見ていたのがとあるアイドルグループだった。
「最近、話題のグループだそうだな。
お前にそんな趣味があったなんて意外だな。」
「俺もわかんないんだけど、なんかいつの間にかずっと観ちゃってて・・・。」
「まぁどうでもいいが、もう寝る時間だ。
ベットは人数分ないから、僕は和室で寝る。」
ゲクトを残して咲野玲は寝る前の準備に移行していた。
シンっとした部屋の中でテレビだけが物音を立てる。
俺はテレビを消して、ベットに転げた。
黒性が二段ベットの上に伸びるために梯子を鳴らしながら登るのを寝転がって見ていた。
俺が最後に電気を消すと完全に部屋の時間が止まるような感じがした。
すると和室の襖の隙間から光が漏れていた。
咲野玲は誰よりも早く寝ていそうだったが、まだ起きていたのか。
こっそり隙間から目だけを覗かせた。
そこには垂直に立ったまま微動だにしない咲野玲がいた。
「おい。」
俺が一度呼んだ、が全く反応しない。
目はずっと見開いたままで、ただの壁を見つめている。
呼んだ後、数秒も反応がなかったから襖を開けた。
俺が咲野玲の背中を平手で打った。結構な音がでた。
とぼけているのか、寝ぼけているのか。
咲野玲は時間を聞いてきた、ので23時ぐらいだと伝えると胸を撫で下ろしていた。
咲野玲は急に契約した邪気の説明を始めた。
賭博の邪気の快楽物質だったり、契約内容だったり。
俺は聞き流すように頷いてベットに戻った。
すぐに夢に落ちた。
夢の中では大体、ギアラが出てくる。
知らない田舎の田んぼ道を一緒に歩いたり、よく見慣れた路地裏だったり。
いつも変わる。
今日は初めての場所だった。
ギアラのいない夢。
そういう時は悪夢。
場所は自宅だった所。俺一人で誰もいない。
第15話 繋ぎ役
咲野玲は賭博の邪気と契約をした後、広島行きの電車に乗る。
竹内に見送られて、端の席についた。
スマホを覗いて暇を埋める。
が、少しすると目が疲れてくるので、今度は外に目線を移した。
目を映して数分、広島駅案内のアナウンスが電車に放送された。
大阪から広島までは距離がある、が瞬く間に着いてしまった。
これも賭博の邪気によるあれのせいだった。
駅を逃してしまったらどうしてくれるんだ、と不安と少し苛立ちを感じた。
すでに外は夕日。
ゲクトもそろそろ帰っている頃だろう。
駅周りで多くのブルーシートが路上を覆っているのが見受けられた。
邪気でも現れたのか?
ずっと長く敷かれているシートは邪気が暴れた度合いを表しているようだった。
寮へ歩き出すと、久しい駅からの帰路は僕に安心感を与えてくれる。
寮に着いてすぐ、見舞いに来てくれた原井さんに礼を言いに行った。
「繋ぎ役の子は4日後本拠地に返します。」
と、言われてあまり会う時間はないそうだ。
そして自室の扉の前に立った。
一度、息を整える。
「生きてるかー?」
と一気に扉を開ける。
一番に目に入ったのは裸の黒性だった。
「は?」
そうだった。黒性という繋ぎ役がいたんだった。
なぜバスタオルを被って部屋中を歩き回っているんだ?
その理由を問うも、病院の時のように一切口を開かない。
トイレの流水音が鳴り終わると、ゲクトが出てきた。
「お!退院してんじゃん。」
「ただいまだ。
そうと、なんで黒性は今だに喋らないし、裸でリビングを歩き回るんだ?」
「俺もわかんねぇよ。
ほとんど喋んねぇし、俺が死にかけた時も何にも言ってくれなかったし。」
「死にかけた?」
「駅前で列車の邪気っていう奴に負けちまったよ。」
ゲクトの言うことから駅周辺でのブルーシートの正体がわかった。
更に列車の邪気はまだ生きていて、ワープのような能力を得たという情報も貰った。
その後は黒性に本拠地に帰ることを伝えて、僕はキッチンに立った。
シンクの中には使われて重ねられた皿があった。
「食ったなら洗えよ。」
と呟いて、スポンジを手に取り泡立て始めた。
ジャムや食べクズが付着した皿を同じ行程で繰り返していくうちに、ふと和室とリビングを隔てる襖が少し開いている。
隙間から見えたのは脱ぎ捨てられた服だった。
握っているスポンジが泡を弾けさせながら潰れる。
洗い終えた後は散乱した服を畳んだ。
相変わらずあいつらは手伝わず、各々が身勝手にくつろいでいる。
黒性はリビングで一点を見つめて固まっている。
ゲクトはテレビを覗くようにまじまじと見ている。
「僕は世話のためにパートナーを組んだわけじゃないぞ。」
ゲクトの耳には届かなかったのか僕の発した言葉に無反応だった。
僕がゲクトの肩に手を置いた瞬間、我を戻した。
集中していたのか僕が隣に来るまで気づかなかったようだった。
そんなゲクトが集中して見ていたのがとあるアイドルグループだった。
「最近、話題のグループだそうだな。
お前にそんな趣味があったなんて意外だな。」
「俺もわかんないんだけど、なんかいつの間にかずっと観ちゃってて・・・。」
「まぁどうでもいいが、もう寝る時間だ。
ベットは人数分ないから、僕は和室で寝る。」
ゲクトを残して咲野玲は寝る前の準備に移行していた。
シンっとした部屋の中でテレビだけが物音を立てる。
俺はテレビを消して、ベットに転げた。
黒性が二段ベットの上に伸びるために梯子を鳴らしながら登るのを寝転がって見ていた。
俺が最後に電気を消すと完全に部屋の時間が止まるような感じがした。
すると和室の襖の隙間から光が漏れていた。
咲野玲は誰よりも早く寝ていそうだったが、まだ起きていたのか。
こっそり隙間から目だけを覗かせた。
そこには垂直に立ったまま微動だにしない咲野玲がいた。
「おい。」
俺が一度呼んだ、が全く反応しない。
目はずっと見開いたままで、ただの壁を見つめている。
呼んだ後、数秒も反応がなかったから襖を開けた。
俺が咲野玲の背中を平手で打った。結構な音がでた。
とぼけているのか、寝ぼけているのか。
咲野玲は時間を聞いてきた、ので23時ぐらいだと伝えると胸を撫で下ろしていた。
咲野玲は急に契約した邪気の説明を始めた。
賭博の邪気の快楽物質だったり、契約内容だったり。
俺は聞き流すように頷いてベットに戻った。
すぐに夢に落ちた。
夢の中では大体、ギアラが出てくる。
知らない田舎の田んぼ道を一緒に歩いたり、よく見慣れた路地裏だったり。
いつも変わる。
今日は初めての場所だった。
ギアラのいない夢。
そういう時は悪夢。
場所は自宅だった所。俺一人で誰もいない。
読んでくださりありがとうございます。
よろしければ、リアクションを貰えるとモチベーションと表紙を描く糧になります。
メッセージでの感想も大変喜びます。
若輩者ですがよろしくお願いします。




