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第13話 骨折ごとき

挿絵(By みてみん)

 松村の地獄(特訓)は日中でも現れる。

 廊下で松村とすれ違うたびに、一発だけ拳や蹴りが飛んでくる。

 

 初日は腹を突かれて、朝食を吐いたことがあった。

 次の日は身構えて松村と対峙したが、そのまま素通りされた。

 が、気が抜けた頃に後方から背中を蹴られた。

 

 どんなに邪人で回復ができても痛みは感じるし、松村に怒りも湧いてくる。


 殺すつもりで作戦を黒性と練った。

 

 松村が朝によく行く場所がある。

 その場所で作戦を実行することにした。



 情報収集とボコられを経て、5日が経過した時に作戦は始まった。

 朝に原井に松村の討伐を宣言してその場所へ向かう。


 松村はいつも小さなコーヒー店へ行く。


 場所はその店まで行く途中の建設中のビル。

 そこまでの道は一本道で追い詰めやすい。

 だからそのビルから奇襲する。


 松村が店から出て、浮いた心に奇襲する。

 黒性が背後から攻撃し、俺が上の足場から飛び降りて不意打ちをする。

 そういう作戦だった。



 俺は上の足場から身を潜めて待機する。



 すると、予想通りにノコノコと一本道へ来る松村が見えた。

 今は待機する時。

 勝負は店を出てきてからだ。


 


 5分程経って、松村は片手にコーヒーを持って出てきた。

 来た道を戻る松村。


 黒性がその時を狙って黒い鳥の姿で松村を背後から襲った。

 音もなく低飛行する黒い鳥に対して、松村は振り返ることなく軽々と跳び、鋭い羽が当たる直前を避けた。


 松村は黒性の攻撃を受けても避けても、俺らの作戦通り。


 俺は松村に向かって飛び降り、腸で上から潰した。


 大きな音と一緒に腸の下から破裂するのは血ではなく熱々のコーヒー。


「アッツッ・・・!」



 松村の姿はない。


 すると俺の後ろから松村が現れた。


「違う、違う。

 俺はお前らに奇襲(ラク)を教えていない。

 戦闘での対応力を教えてるんだ。

 殺すことが目標。ただ、真っ向での戦闘能力がお前らには必要だ。

 今夜は俺のティータイムを台無しにしたお前らの脊髄を破壊してやる。」



 

 そして邪気は現れずにに日中が過ぎ、夜勤の人が出る頃に俺達は特訓場へ行く。


 いまだにラジオを聴いている松村の車内は非常に静かだった。


 1週間経ったが相変わらず足利は走らされている。

 特訓には直接参加せずに、血の補給に使われ続けている。


 

 いつもの場所に着き、松村は言った。


「ゲクトは相変わらずの単調。

 黒性は素早いため先手で攻めたり、攻撃のキッカケが作れるが何も喋らないせいで、後続につながらない。

 お前らの弱点はそこだ。

 変速をつけろ。声を出せ。」

 

 変速と前もって言われるが、いざ松村と戦ってもイマイチ分からず松村の流れに押されて今日は宣言通り脊髄を折られた。




 その日の特訓の翌日はずっと変速について考えていた。

 朝から夕方まで暇な時はずっと考えていた。


 弱い邪気を1匹だけ殺した今日はやけに血生臭い。

 今日の風呂ではシャンプーを使ってみようと思った。


 シャンプーの頭を押すと、中身が出てくる。

 そのまま髪を洗い、今度はボディソープを出そうとする。


 手にはヌルヌルとしたシャンプーがまだ付いていて、上手く垂直に押せない。


 3回ほど繰り返して少し頭に来た俺は拳の側面で押した。

 すると勢いそのままに俺の体に飛びついてきた。


 当たり前のことだ。

 強い圧力で押せば速くなる。


「・・・・・・。」


 数秒だけ、この光景を動きを止めてじっと見つめた。

 そして俺はひらめき、風呂の中で俺のエジソンが生まれた。



 その夜はソワソワして少しだけ眠りにつき難かった。


 

 それから1日の任務を終え、待ち遠しい松村の特訓がいよいよ始まる時になった。


「松村。俺ぁ気づいちまったよ。」

「へぇ。」


 松村は俺の言葉を真に受け止めずに舐めた返事をする。



 足利の合図に始まる特訓。



 俺はまずいつも通りの鞭のように腸を動かす。

 これはもう松村には一切の攻撃にも抵抗にもならない。


 そこで俺は風呂場で閃いたアイデアを実行に移した。


 腸の内側に血を濃縮し、限界まではち切れそうになった瞬間。

 俺は腸を解放した。


 一直線に伸びる腸が松村を木々の中へ突き飛ばす。


「それそれそれ。よくできるじゃないか。

 続けるぞ。」


 俺は起き上がる松村に変速する腸を駆使して戦う。

 以前より対等になれた気がする。


 同時に黒性にも変化があった。

 俺の変速する腸は直線に伸びるから鞭と違い、速くとも予測がしやすい。


 おかげで俺の腸を以前より良い場面で捕まえると宙へ引っ張り、遠心力で攻撃を繋げる。

 

 最後は松村の隙を突いた変速する腸で松村を倒した。


 そうして足利の合図で終わった。


 今日は脊髄を折られなかった。

 辺りは血だらけで貧血気味だったが心はずっと楽しかった。


「まさか1週間程度でここまで成長するとは思わなかった。

 雑魚狩りは楽しかったが、これもまたいい。

 特訓は今日で終わりだ。」



 俺はそれを聴いて跳ねて喜んだ。

読んでくださりありがとうございます。

よろしければ、リアクションを貰えるとモチベーションと表紙を描く糧になります。

メッセージでの感想も大変喜びます。

若輩者ですがよろしくお願いします。

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