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第12話 陽気な邪人

挿絵(By みてみん)

 ゲクトは下半身を切断され、列車の邪気に食われた。

 人工的な機械の体とは裏腹に、口内は生物のようだった。


 喉奥を通る瞬間、俺ごと揺れる強い衝撃が発生した。

 その衝撃で俺は外へ吐き戻される。


「お!やっぱり食ってんじゃん。」


 と、平気そうに列車の邪気を蹴っていたのは邪気課の誰かだった。


 その人は邪気課、邪人の足利(あしかが)という先輩だった。

 右腕が欠損していて、背丈は高め。


「守っといて。俺こっちやるから。」


 足利は黒性に動けない俺を覆うように指示をする。


 そして足利は列車の邪気を独特な掛け声と一緒に蹴り倒す。


「レスト・イン・ピース!」


 の三拍子に合わせて体勢を崩した邪気の顔を往復に蹴り、突然の劣勢に列車の邪気は困惑している。


 身体の損傷が増え、逃げ腰になってきた邪気は足利から逃げるように線路を作った。


 かなりの速さで逃げる邪気だが足利は妙に足が速くすぐに追いつき、背中を蹴り飛ばした。


 再び脱線した邪気は空中に線路を円形に作ると、円の内側にできた空間に飛び込み、消えていった。



「ふぅ!落着。」


 邪気を窮地まで追い詰め、追い払った足利は俺と黒性に歩んできた。

 足利は列車の邪気に殺された人の血を俺の口に注ぐ。


 満たされる血が全身に流れる感覚と共に、下半身が復活する。

 同時に意識も戻った。


「お、生き返った。生き返った。

 恩1なー。」

「お前は?」

「一応先輩だぜ俺。まぁなんでもいいけど。

 俺は足利。足の邪気と契約している。よろしくな。」


 俺に左手を差し伸べ、体を起こす。


 足利は足の邪気と契約する際に右腕を引き換えに契約したそうだ。

 そのため、右腕をなくしている。

 

「いやぁー。

 今日がこの駅100周年記念日でこっそり来てみたが、この有様か。

 あっ、あと、サボりにきたわけじゃないからな。

 齋さんにはなんとかしといてー。

 それと無線使えよ。応援に行けないだろ?」


 最後に足利は俺達の名前を聞いてどこかへ走り去った。


「黒性、無線かして。」


 俺は無線で列車の邪気の接触と大量殺人の現状を伝えた。


 すると足利はすぐに応援に来た。




 色々と処理を終えた上で寮に戻ってきたゲクトと黒性の二人は原井と松村に会議室へ呼ばれた。


 俺が話したことを松村が整理した。


「列車の邪気は例の路面電車を取り込み、逃走したのか。

 さらには食の邪気が娯楽の邪気の臭いを列車の邪気から感じたと。

 確かに邪気はたまに人だけでなく、物も食べる事例があった。

 しかも物を食べるどの邪気も娯楽の邪気の体液を持っている。」


 現在までで食べられた世界の物の状況は


 集団の邪気が旧約聖書“サムエル記”を所持か捕食

 承認の邪気が壁画の最後の晩餐の一部を破壊し、所持か捕食

 クジラの邪気がヨナ書“本体”の2章から後半を捕食。


「そういやー、列車の邪気が電車を食った後にワープみてぇなことしてたぜ。」

「列車の邪気は本来はそんなことはできない。

 物を食べることで強くなる・・・?」


 原井は頭を悩ませる。


「原井。その仮説なら、クジラの邪気がヨナ書本体を食べた理由にはなりにくい。

 列車の邪気と電車は近い存在だが、クジラとヨナ書との関係がわからないな。」


 結局、進展は水平線で終わった。


「娯楽の邪気が関係しているのか。

 契約者の意図か。まだわからない。

 だから事実がわかるようにゲクトと黒性。

 俺が列車の邪気以上を倒せるように特訓してやる。」

「えー、特訓?」



 列車の邪気との戦闘を境に松村から骨が折れるほどの特訓が始まる。



 コーヒーの臭いが漂う松村の車に入れられ、夜に連れ出された場所は山奥の開けた場所だった。


 暗闇から大声で駆け寄ってきたのは足利だった。


「松村先輩。なんで俺走らされたんすか?」

「持ち場を離れていたらしいな。

 古河(ふるかわ)を恨めよ。

 お前のためにわざわざレポートを捏造したんだからな、と泥酔中に居酒屋で吐いた。

 というわけでお前はこいつらの特訓に付き合え。」


 そんなわけで足利も巻き込まれた。


 この場所は松村が邪気課に入り、齋さんに指導された場所だそうだ。

 元ヤクザの松村が、この場所で齋さんの理想の思想に矯正された過去がある。

 邪気課に相応しい思想を。


「今からお前ら二人を殺す。」

「やってみろよ。

 1体2で自信満々だな?俺と黒性ならヨユーだぜ。」

「俺は特訓させにきたんだ。弱者はソッチだ。」


 足利の合図で始まる殺し合い。

 血飛沫の上がる夜空の下で地面に血塗れのゲクトと黒性。


「背骨はまだ折れてないぞ。立ち上がれ!

 傷ついたのはお前の心だけー!」


 と足利は応援する。


「・・・ム・・・ムリ。」

「足利、二人に血飲ませろ。」

「先輩、俺強いじゃないんで血すぐに止まらないっす。

 包帯ください。」


 足利は包帯を松村から投げ渡されると、素直に腕の血を飲ませた。

 そして二人の体は元に戻る。


「これから3週間する。いや、俺を超えるまで終わらせない。

 今日はこれまでだ。足利、お前は走って帰れ。」

読んでくださりありがとうございます。

よろしければ、リアクションを貰えるとモチベーションと表紙を描く糧になります。

メッセージでの感想も大変喜びます。

若輩者ですがよろしくお願いします。

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