第11話 列車の邪気
駅の付近で珍しい路面電車に出会い、多くの人々が集まる。
物珍しさに惹かれた人々は突如として現れた列車の邪気に殺戮されてしまった。
ゲクトは血の轍を追う。
かなりの速さでレールの上を移動しているその邪気は通りすがる車でさえもガラスを割り、車中の人を襲う。
道中では誇張すぎる引きつった笑顔のその邪気は一切その笑顔を絶やすことなく無差別に針のような指を突き刺し、引き裂く。
その後方でゲクトが静止を試みる。
腸を伸ばし、列車の邪気に巻きつける。
引きずられて靴底がすり減り、地面に跡が残る。
それでも邪気の進行は止まらず、鋭い指で腸を断ち切られてしまった。
「イテェな、おい!」
列車の邪気は俺をおいて先頭を走っていた珍しい電車に手を伸ばす。
その瞬間、列車の邪気の手は弾かれる。
驚いた列車の邪気は一度だけ顔から笑顔が消えた。
その手を妨げたのは黒性だった。
しかし列車の邪気は長い針を伸ばし、黒い鳥の頭部へ串刺した。
黒性は道路脇へ荒々しく落ちる。
その内に列車の邪気は珍しい電車に目掛けて再び走り出した。
今度はゲクトが妨げた。
「人殺しといて目的は電車かよ!?ア゛?!」
俺は再生した腸で建物と列車の邪気を一直線に繋いだ。
腸はピンと張り、千切れそうだったが気合いで持ち堪えた。
そして列車の邪気の勢いを殺すことに成功した。
列車の邪気はレールから外れ、の邪気は道路の道端に転げ出た。
「どうだ!脱線だぜ!これでもう何も出来ねぇな!」
列車の邪気は滑る車輪でなんとか立ちあがろうとするが、車のように地面を進める車輪ではなかった。
その邪気は子鹿のように四脚を震わしながら、言った。
「脱線はまた別の線路。」
列車の邪気の足元には線路が敷かれ始めた。
「そんなことできんの?!」
四脚を順に線路へ揃えると、先へ進んでいった目的の電車の方向へ走った。
作り出される線路は左右に曲がるだけじゃなく上下にも伸び、追いつくことができなかった。
建物の裏へ逃げたり、複雑な場所に隠れたり姑息に旋回されて、見失ってしまった。
結局、路面電車のレールを辿って電車に着いた。
しかし列車の邪気はとうに電車を襲っていて、電車の中の人々はミキサーの中のように無秩序だった。
そして列車の邪気はその電車の外側から引き剥がし、電車だった鉄屑を無くなるまでむさぼる。
列車の邪気は目標を達成に喜び、周囲の建物の中まで聞こえる声で笑った。
笑顔は狂気の顔に変わっていた。
笑いが終わると次に俺を振り返った。さっきまでの復讐でたぎっている。
俺は高い建物を伝い、高い所から様子を伺う。
すると列車の邪気の背後から近づく黒性の黒い鳥の姿が見えた。
同時に攻撃、あるいは俺が囮になって背後から邪気を倒すために、邪気へ接近した。
俺は腸を構えて、邪気の注意をひきつけた。
これなら黒性の攻撃が通ると思っていた。
「下へ参ります。」
邪気の足元の線路が落ち、俺と黒性の攻撃を避けられた。
さらには、俺は流れてきた黒性の翼に下半身が切断されてしまった。
黒性は同様している。
苦痛にもがく上半身だけの俺を列車の邪気が摘み、顔の前へ持ち運ぶ。
黒性は俺を取り返すために体を動かすが、力が抜けたように制御ができない。
「まさか、後ろにいるとは思わなかったよ。
偶然に勝ってしまったねェ。ごめんよ食の邪気?」
抗えない俺は口に運ばれる。
最後の口の中から見えた景色は、黒い鳥だった。
第10話 邪気の存在 を一部修正しました。
第6話 噛み合わない歯車 の後ろに「暴走の邪気」のイラストを追加しました。
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