第9話 不思議な少女
ゲクトと黒性は松村に喧嘩を売った。
そして二人は邪気の姿で松村に向かって攻撃を仕掛けた。
俺が腸を伸ばす。
松村は右へステップを出し、すぐに俺の腹を鉄のような拳で殴った。
人から出される力とは思えない強さに腹を抱える。
追撃に肘が入れられる前に黒性の鉤爪が阻止した。そして松村を突き飛ばした。
雨の下に投げ出された松村に黒い鳥の鋭いクチバシが襲う。
松村は簡単にそれを躱し、頭に跨り、鉄のような拳を黒い鳥の頭部に叩き込んだ。
苦しい声をあげるが、なんとか松村を振るい払う。
空中に投げ出された松村を捕まえて空へ共に上昇する。
松村は打ち落とされると危険を感じ、隠し持っていた銃の引き金を引き、一発の銃弾は黒い鳥の頭を下から撃ち抜いた。
高く上がらない内に落下し、松村は無事に着地する。
一方、黒い鳥は大きな音を立てて背から落下した。
雨に打たれていた青色のチューリップは右翼の下敷きになり、折れていた。
「発砲、敷地内での戦闘、同仕討ち、邪気の濫用、そして花壇への危害。
どういうつもりですか?松村さん。」
いつの間に若い白髪の女性が現れた。
その女性の言葉に松村は動きを止める。そして目線を花壇へ向ける。花が折れていることを確認する。
悟る松村。
「ルールは破るもんだろ。」
俺がそういうと松村は言葉に間髪入れずに「黙れ。」と言った。
そしてその白髪の女性は松村に向かって、雑に手招きをした。
「来なさい。松村。」
小さな声で返事をし、室内へ連れて行かれる。
地獄でも落とされるのかという顔を最後に、「アイツを連れ帰れ。」と俺に言い残した。
俺は黒い鳥から元の姿に戻っている黒性を抱えて屋根の下へ運ぶ。
彼女は銃弾で頭を貫通しているが、心臓は動いているが指先すら動かない。
しかし邪人だから死ぬことはないだろう。
動かない黒性を抱えて3階の自室へ運び入れた。
いまだに血が垂れているので、風呂のそばに置いた。
殺人現場が完成してしまっている。
黒性が起きるまで、俺は雨を眺めていた。
窓に張り付く雨粒を一つ一つ、目で追いかける。
そうして時計の針は午後10時を回った。
上の空に外を眺めていると、向かいの寮のカーテンが開いた。
そこには女性が缶を片手に立っていた。
彼女は俺に気が付くと手を小さく振った。
俺も呼応するように手のひらを一回往復させた。
雨と夜の暗さ、彼女の部屋からの光が彼女の顔を影で隠していて顔がわからなかった。
笑顔だったのか、無表情だったのか、はたまた頬を赤ていたのか彼女はカーテンを閉めた。
カーテンの閉まった窓をじっと見ていると、黒性が元通りに回復していた。
もう一度風呂に入る準備をする彼女に先に寝ると言い、床についた。
目を瞑って少しした頃。
洗濯機の稼働する音に意識が戻る。
電気は消え、部屋は真っ暗だった。
喉に潤いを届けるために、上半身を起こすと何かにぶつかった。
もちろん二段ベットの一階で寝ているから上にぶつかったのだろうと、初めは思った。
しかし妙に柔らかい。
その不思議を確かめるために目を開く。
すると黒性が俺の上で四つん這いになっていた。
黒性は俺が突然起きたことに驚いているのか、微動だにしない。
すると彼女は全身を俺に乗っけた。
「な、なんだ?!」
その答えに彼女は耳元で囁いた。
「寝たい。」
その一言だけだった。
困惑の次に、喉の渇きよりも高鳴る心臓の音と体温の上昇を感じられる。
密着した彼女はもう寝ている。
うかつに動けないので息を整えながら眠りに落ちた。
あの出来事から起きた俺はすぐに彼女を確認した。
しかし彼女は俺のベットにはおらず、彼女は元のベッドに戻っている。
夢だったのか・・・?
俺はそういうのを望んでいるのか?
身に覚えのない感情が唐突に現れる。
そんなはずないと首を横に振り、我を戻す。
寝ている彼女を目の端で一瞬だけ見て、すぐに目線を戻した。
次の日の飯がないなと思いながら、咲野玲から見て真似たトースターを使う。
適当にタイマーを回して待っていると、黒性が目を覚ました。
彼女を見るたびに思い出されるあの夢が脳内に再生される。
彼女はいつもと変わらない様子。
トーストにバターと苺ジャムを塗り、食べる。
食べている間に、黒性は何を食べるのか机から見ていた。
どうでもいいのに。いつの間にか彼女を見ている。
結局、彼女が選んだのはいつの間にか炊かれていた白米と卵だった。
俺が寝た後に炊飯器を稼働させていたのか。
俺と黒性は服を着替え、扉を開けた。
一方、入院している咲野玲の元に松村が現れた。
松村は疲弊している様子だった。
松村は近くの背もたれのない椅子に腰をかけた。
そして口を開いた。
「咲野玲、お前のパートナーは腐っているな。
どれほど邪気相手にぶっ飛んだ思考で戦っていようが、人道を守れない奴は俺は嫌いだ。
お前が回復する前に俺がアイツらを躾ける。」
「アイツら、とは?」
「ゲクトと黒性だ。
お前のパートナーだろ。回復したらお前からなんとか言え。」
咲野玲はこれからのことにため息を吐いた。
「わかりました。ルールは守らせます。」
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