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第26話:空気の槍

「貴様が持つ能力がどのようなものかは判然とせんが、あの小僧のように何でも無力化できるわけではないのだろう?もしできるのならば、手で触れて空気の障壁など作らずとも、泰然と構えていればいいのだからな!」


 グラウドレの頭上で禍々しい闇の塊が産声を上げる。


 幻想の作り手(イマジナルタッチ)は触れたものを固形の物体にする能力(アビリティ)だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 頭上から雷が落ちれば感電死するし、燃え盛る炎の中にぶち込まれれば焼死する。


 言ってしまえば、手で触るのには大きすぎる物量は、固形の珠に変換する前に死ぬのだ。


「それはどうかな?あたしの能力(アビリティ)に抜かりはないよ」


 見破られないように、なるべく表情を変えないまま話す。


「ならば、試して見ればいいだけのこと。我もこれほどに威力の高い魔法を使うのは、ブランド率いる勇者一行との戦いがあった16年ぶりだからな。肩慣らしに付き合ってもらおう」

「いいんじゃない?魔法を撃てば。()()()()()()()()()()()

「なんだと?」


 グラウドレの眉が動く。


「つまり、貴様は我が魔法を使えずに失敗するというのか?」

「そうだね。そろそろ、立っているのも辛くなると思うよ?」

「さては、我の傷口のことを言っているのかな?」


 穴が空いた服の隙間から、空気の槍が刺さった患部が覗く。


「貴様のようなサルでも見れば分かるだろう?傷は完全に塞がっているのだから、先刻の一撃が致命傷になることなどあり得んわ!!」


 頭上に浮かぶ黒い塊が、次第に大きくなっていく。まるで、ブラックホールを地上に降ろしたかのような(おぞ)ましさだった。


「はははははは!!恐怖を顔に縫い付けたまま死ねぇ!!!」


 あとは、直上に挙げた闇の魔力の塊を振り降ろすだけだ。

 神判を下さんとばかりに、腕を勢いよく降ろそうとしたところで、


「ぐああっ!!!」


 鋭い牙を生やした口から涎を垂らしたまま、鷲掴むように胸を抑える。投げようとした闇の塊は明後日の方向へと飛び、街の外れに立っていた山を丸ごと一つ呑み込んで更地にした。


「き……、様…………!!何をした…………っ!?」

「なぁに、簡単なことさ。身体の中に空気の塞栓(そくせん)ができたんだよ」


 顔を歪め膝をつき、荒い息を吐く統王の元へ、ゆっくりと歩く。


「人間の身体って随分と脆くてさ。血管の中に空気の塊ができると、それだけで血流が止まったり、内臓が壊死したりするんだよね。あんたの身体がどうなってるか分かんないけど、人間と同じ体構造をしているんだったら、空気の槍で突き刺して破片を身体の中に取り残させちゃえば、勝手に再生して勝手に血中に空気を取り入れて、勝手に気泡を作って勝手に塞いでくれるんじゃないかと思ってね」


 身体の損傷が再生される、というのは即ち、千切れた血管と血管を結ぶ行為や、機能停止した臓器を再生させることを意味する。

 無論、刺さったものを取り入れたまま再生して身体の一部にしてしまうため、異物が差し込まれれば、そのまま体内に残ってしまうのだ。


「ま、場合によっては突然心臓が止まって、コロっと逝っちゃうこともあるみたいだから、意識があるだけ強靭じゃん?さすが、魔王軍を束ねているだけあるね」


 左手に持った人間の頭サイズの水晶玉が、黄色く光る。光属性の魔法を使う兆候だ。


「さて、後はじっくり調理して、魔核を潰すだけだね。ご丁寧に、心臓の位置にあるとか言っていたよね?」

「クソがっ!!ブランドのパーティでもない雑魚風情が、この我を倒すなどということがっ!!」

「覚えておきな」


 中空に浮かぶ巨大な水晶玉が、一際眩しい光を放つ。


「あたしたち英雄は、ルグルガーラを倒すために、血の滲むような地獄と苦行を潜り抜けて来たんだ。二度と、あんな悪夢を見ないようにね!!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴっ!!!


 悪しき魂を灰にする光の波動が円形に広がり、曇天の空に聳え立つ建物の数々に、数刻ぶりの彫りの濃い影を落とす。


 白亜の空間が大広場を満たした後、一筋、また一筋と天使の梯子が現れる。グラウドレによる天候操作魔法の影響が消えた証拠だった。


 つまり――。


「倒した……、のか……?!」


 千切れた雲の合間から差し込む太陽の光に目を細めながらアレクが呟くが、


「いや……。逃げたみたいだね……。蝙蝠の姿になって飛んでいくのが見えたよ…………」


 蝙蝠の吐息(アンダーマイン)から抜け出したことで、少しずつ回復してきたらしい。生態反応を捉えるセンサーを内蔵しているリチレンが首を振る。


「まぁまぁ。グラウドレに痛い目見せられたことだし、今回は、こいつが手に入ったから大収穫だよ」


 懐から黄色い珠を取り出す。蝙蝠の吐息(アンダーマイン)を固形にしたものだ。


「こいつを研究して、次に戦う時に、もっと善勝できるようにならないとね」


 細切れになって小さくなった黒雲は時間の経過とともに消え、眩しい太陽と透き通った青空が一面に広がる。

 600pv突破しました!!


「ノベルアップ+」(37)+「小説家になろう」(623)=660(2021年7月26日12:00現在)

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