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第22話:人造人間の決断

「我々魔王軍とともにしないか。人造人間(ホムンクルス)の小僧よ」


 まるで、英雄譚でも歌うかのように、人間とは色も形も違う手を差し出す。


「我から頼んで、貴様の素性を頂能王(ちょうのうおう)マッサドに調べさせてやろう。400年以上の年月を生きているマッサドならば、貴様の素性を知っていることだろうし、自分が何者かが分かった以上、ヒーローごっこをする必要もあるまい」

「リチレン、これ以上話を聞くな!!」

「貴様らは黙ってろ!」


 グラウドレがパチンと指を鳴らすと、五体満足の死体が起き上がり、アレクとロレンを羽交い絞めにする。


「くっ!!」

「余計なことを口走ったら、そいつらに貴様らの喉笛を掻き切らせるぞ?そこで黙って見ておれ」


 邪魔者に一喝してから視線を戻す。


「どうだ小僧。我らの軍門に下る気はないか?」


 これが死神の手だ。と言われれば信じてしまいそうなほどに、生気の感じられない白い手を再び伸ばす。


「ボクは…………」


 この手を取れば、自分が何のために作られたのか、そして、自分を作ったのが誰なのかが分かる。


 人間と同じ見た目なのに人間ではないことに、コンプレックスを抱く必要がなくなる。


 外野から聴こえてくる叫び声に耳を傾けることなく、その白い手の上に硬質で無機質な手指を重ねる。


「いい子だ。では行こ――」


 グラウドレが言い掛けた時、ぼとり、という音がした、

 それは――、



「お前たちについていくような真似はしない!!」



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……小僧、死に急ぎたいようだな。これが貴様の出した答えか?」


 手首から先がなくなった右手を気にする様子もなく、吸血鬼は眼前の男を睨む。


「確かに、ボクは自分が何者かを探るために、長い期間・長い年月旅をしてきた。途中、自分が人間なのか、機械なのか、それすらも分からなくなって、何処かに消えてしまいたい、って思う時もあった」


 果たして、自分は何のために作られたのか。


 強きを挫き、弱きを守るためなのか。

 それとも、弱者を蹂躙するためなのか。


 肘に刻まれた※※※‐TYPE3が、それを教えてくれることはない。


「だけど――」


 リチレンの指先は、小銃になるだけではなく、刃の出し入れも可能になっている。生々しい血が(したた)るブレードを払う。



「私利私欲のために他人を傷つけるような愚行を、ボクを作った研究者は望んでいないはずだ!!」



 これだけは。

 与えられた力の使い方だけは、絶対に誤ってはいけない。


 それだけを信条にして、今まで生きてきたのだ。

 今さら、簡単に変えられるものではない。


 ()()()()とは、そういう生き物なのだ。


「なるほど。実に残念だ」


 魔核による再生力の強さと、人間の生き血を啜ることで何百年もの寿命を持つ生命力を兼ね揃えた吸血鬼だ。負傷した肉体の再生速度は尋常ではなく、話をしているうちに、斬り落とした手の形が元に戻っていた。


「いい研究材料(おもちゃ)になると思ったのに、ここで塵芥(ちりあくた)の鉄の塊になってしまうのが、実に残念だよ!!」


 交渉は決裂した。


 爛々と輝く赤黒い瞳で睨みながら、身体から火花を散らす。


「お前たち人間が作ったキカイとやらは、電気を浴びると止まったり、おかしな動きをするらしいな」


 バチッ!

 バチバチッ!!


 空気を焼くような音が激しくなり、グラウドレの身体がプラズマの色に仄明(ほのあか)るく照らされる。


「我の電気を受けて、傀儡(くぐつ)のように狂い踊るがいい!!」


 リチレンが指を向け、何度も何度も発砲する。

 しかし、一発一発の威力がそれほど高くないと分かったからか、グラウドは一切の回避をすることなく攻撃を肉体で受け止め、腕や肩に穴を空けながらも、右手に電力を集中させる。


 そして、


「ディザストマイズ!!」


 容赦なく。

 躊躇なく。


 人間一人を飲み込むほどの電気の塊を、人造人間(ホムンクルス)に向かって放つ。


「くうっ!!」


 考え方が甘かった。

 相手を怯ませようと躍起になるあまり、回避行動が遅れた。


 左右に避けようにも間に合わず、近距離で放たれた特大火力の魔法を()なす手立てもない。


 これほどの電気を浴びると、リチレンの身体の中の回路は、どうなってしまうのか。

 視界いっぱいに電気の塊が広がり、全身を飲み込もうとした転舜(てんしゅん)


幽幻斬(ゆうげんぎ)り!!」


 刃のない剣を持った少年が間に割り込んで袈裟状に一閃。リチレンとアレクを避けるように後方へと飛んで行った電気の塊は、石造りの建物に衝突。巨人族(ジャイアント)が正面から殴ったかのようなクレーターを形成しながら、瓦礫と粉塵、そして爆発音を周囲に撒き散らす。


「我の邪魔をするなと言ったはずだが?小童(こわっぱ)よ」


 背後を一瞥すると、拘束していた屍たちは地に伏していた。操っていた死体たちは吸血鬼ではなく、闇属性の魔法を使って操っていただけだったため、いとも簡単に逃れられたのだろう。


「あぁ、そうだな。でも、決闘の邪魔をするなとは、あんた一言も言ってないよな?」

「分かった。ではまずは貴様から(なぶ)り殺してやろう。雑魚の分際で猪口才(ちょこざい)な真似をしたことを後悔させてやる」


 グラウドレの周囲に赤黒い火球が五つ浮かび上がると、


「業火よ。焼き尽くせ」


 周りの空気を取り込んで激しく燃え、アレクに向かって一直線に飛来する。


「アレク!!」


 超科学の合金は物理には滅法強い反面、魔法に対しては無力だ。己の弱点を噛み締めながら隔靴掻痒(かっかそうよう)としているリチレンの虚しい叫びが街に木霊する。


 一方のアレクは、魔法だと分かっている以上、恐れる必要はない。己を燃やそうと殺到する死の塊を袈裟・逆袈裟・一文字(いちもんじ)に切断すると、何事もなかったかのように業火は霧散する。


「貴様、随分と珍妙な技を持っているな?見たところ魔法を使える素質がないところからすると、能力(アビリティ)によるものだな?」

「さすが、魔王軍を指揮しているだけあって、他人の力量を見破る能力が凄いな」

「褒めたところで何も出んぞ?」


 腰に佩いたレイピアを抜きながら、肩を揺らしてくつくつと笑う統王。


「では、これならどうかな?」


 一閃。


 まるで、羽虫とすれ違ったかのような素早い一閃が身体を掠め、破れた(ブリオー)の破片が宙を泳ぐ。


「その剣の振り回し方、まるで素人ではないか。()()()()()()()()()()()()我の剣術に、貴様は勝てるかな?」


 グラウドレの急所を狙った猛攻が幕を開ける。


「……っ!!」

「ふははは!!先ほどまでの威勢はどうした?その様子だと、我の攻撃を防ぐのが手一杯で、反撃に転じられないようだが?」


 心臓を狙った突きを無刃の剣の横腹で受け止めた直後に、次は腹を狙った一撃。その次は、肩の付け根を狙った素早い攻撃。

 グラウドレの攻撃は止む気配を見せず、勢いが止まらないままに、踏ん張った足が少しずつ後ろに押されていく。


「茶番は終わりだ」

「しまっ!!」


 顔面を狙った一撃を防いだ時にできた刹那の死角、無刃剣フセツを構えた右手に激痛が走り、思わず手を開く。剣は石でできた床の上に落下すると、(かまびす)しい音を立てて滑るように転がる。


 痛みの正体は、すぐに判明した。


 アレクの右手に、レイピアが突き刺さったのだ。


 チェインメイルを買ったものの、動きやすさを重視したアレクは、籠手や脛当てを購入しなかった。その怠慢が祟って、手に致命的な一撃を許す結果へと帰結したのだ。


「さて、剣が使えない以上、貴様の能力(アビリティ)は使えないな?我の能力(アビリティ)は、貴様の持つそれとは、相性が悪くてな」

能力(アビリティ)……だって…………!?」


 衝撃の告白に目を見開くアレクの眼前で、グラウドレが首を傾げながら言い放つ。


「おい小僧……。()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()それとも、ムスターハには、そうやって教えられてきたのか?」

 閲覧数500突破しました!!


「ノベルアップ+」(30)+「小説家になろう」(489)=519


 とある情報筋によると、閲覧数が500程度の作品は、良くも悪くも普通の作品なのだそうです。

 ここまで皆さんに応援していただいたことは勿論嬉しいですし、『普通の作品』から抜け出すために、これからも精進していきたい所存です!!

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