第40話 初使用
短いです
「やっと出来たーー!」
俺の周りには粉砕された木のかけらや根元から上の多くの木が横倒しに散乱している。
絶望の森の木を相手に力加減の練習をする事数日、やっと木を折らずに殴ったり蹴ったりする事が出来た。
ここまで大変だった。
初日はまず本気で攻撃したらどうなるのかを検証してみた。
恐ろしい結果となった。
正拳突きをすれば風圧で木は粉砕され、地面が抉れた。
蹴りを放てば衝撃波でこちらも同じような結果となった。
蹴りの直後、
『蹴りによって音速の壁を破りました。これによって、スキル【蹴撃破】を会得しました。』
なんて声も聞こえた。
音速の壁を破るって何?
理解が追いついてないんだけど?
それから数日、人に向けて放ってもクラウン・キメラや魔族のように吹っ飛ばないように手加減をする練習をしていた。
本当に難しかった。
木が粉々になったり、遥か彼方へ吹っ飛んでいったり、地面が抉れて陥没しかけたりなどなど、多くの被害を超えてやっと手加減を覚えることが出来た。
前世ではしっかり手加減できていたのに、やはり体が変わるとそう上手くいかないようだ。
ちなみに、クラウン・キメラの素材やらは既にライナーが仕分けてくれていたようで、俺は自分の分を貰って帰るだけで良かった。
周りに倒れている木を【分解】で片付けていると、
『【分解】の使用量が一定数に到達、また、所有者のレベルが特異点へと到達しました。よって、スキル【分解】は固有スキル【風前塵同】へと進化しました。
固有スキル【風前塵同】は2つのレベルに分類されます。
Lv.1では【分解】と同じ効果、Lv.2では使用後の体の一部の破損を代償に手を触れずとも対象を塵にする事が可能です。』
お化けスキルの説明が聞こえてきた。
相手に触らなくても塵にする事が出来るなんてえげつな過ぎる。
その代わりと言っては何だが体の一部の破損があるらしい。
でも特異点とはなんぞや?
『特異点とは、ある基準の下においてその基準が適用できない「点」の事です。
この場合の特異点とは、この世界に生きる生物のレベルを基準としたものです。マスターのレベルはその特異点を既に超えています。特異点を超え、所有しているスキルの条件を満たすと、元のスキルは固有スキルへと進化します。』
なるほど、分からん。
とりあえず分かることはとんでもないって事だけだ。
もしかしてまだ固有スキルになるスキルってあったりする?
『可能性のあるスキルは多くあります。特異点は全てのスキルに共通しています。しかしどのような条件で固有スキルへと進化するのかは不明です。』
じゃあなんとなくでやっていくしかないわけだ。
ふとした時に進化するのを待っていよう。
そんな事を考えていると一度新しくなった【風前塵同】を試してみたくなった。
実戦で使うとしてもどれほどの体の破損が現れるのか確かめておきたい。
少し離れている木に向かって手をかざし【風前塵同】を発動させた。
一瞬何かに触れた気がした後、狙っていた木がサラサラと塵になっていった。
数秒後、胸元からパン!と音がして口から血が溢れてきた。
血が気管を上ってくるせいで呼吸ができなくとても苦しい。
破損って何が起こった⁉︎
『固有スキル【風前塵同】の代償により肺が破裂しました。すぐさま、スキル【超再生】により再生を開始します。』
肺が破裂したらしい。
大きな痛みが無かったのは【痛覚軽減】のおかげだろう。
リーヴが【超再生】を始めると言ったから肺は大丈夫だろうが呼吸は相変わらず出来ない。
血が喉で溜まっているのだろうか、指の先が白くなり始めた。
酸素濃度が低くなってきている証拠だ。
視界がクラクラしている。
なんとか手を動かして【創造】で小さなナイフを創った。
握りしめて自分の喉を切り裂くとすごい量の血が出てきたがすぐに傷は塞がった。
呼吸は出来るようになったが出来ればもうこんな事は二度としたくない。
まだ息はしにくい。
肺の再生が終わっていないからだ。
喉の傷よりも再生が遅いのはなんでだ?
『スキル【超再生】は通常の物理・魔法攻撃による損傷はすぐに再生されます。しかし、契約・スキルによる代償による損傷の再生には多少の時間がかかります。』
つまり代償はそう簡単には治らないってわけだ。
木一本でこの代償だ。
戦闘中には使わない方がいいか。
再生しているとレヴィから通信がきた。
今日は朝から自分の部屋で何やらしているようでゴポゴポと怪しい音もした。
実験でもしているのだろう。
『ちょっといい?今王城から人が来て宮廷魔導士として一度来て欲しいって言ってるんだけど。行けるんだったら返事しとくけどどう?』
宮廷魔導士として、という事は陛下の研究室がどうとか言っていた件だろうか。
別にこの後の用も無かったのでレヴィには行くと返事してもらい、再生と止まっていた片付けを終わらせた。




