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神様の慈悲  作者: 河藤
第三章 地位向上
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第37話 任命式

孤児院の件が終わって翌日の朝、いつもよりは多少早めに起きた。

今日は陛下に呼ばれているからだ。

要件は魔獣の行進(モンスターパレード)で出た素材やらなんやらの事だろう。


昨日は子供達を起こしてから全員同時に家の前に【瞬間移動テレポート】した。

先にサラとレヴィには服を買ってきてほしい、と金を渡していたから風呂に入れたあとはそれを着させた。

最年少で3歳、年長者はリアンとオスカーの2人だがそれでも14歳だった。

テーブルや椅子、ベッドが足りていなかったのでそれは【創造クリエイト】で急遽作った。

子供達はすぐに俺やレヴィ、サラ、コーラスに懐いてくれた。

風呂から上がったあとは食事になったが食べ終わると同時にほとんどが寝てしまった。

一日でこんなに多くの事があったんだ。

疲れるのも当たり前だろう。


まだ子供達は眠っている。

今日のうちに新しく孤児院を建て直してしまってもいいかもしれない。

どっちにしてもまず王城だな。

着替えてから朝食を取って準備をした。


「今日はどこかへ行かれるのですか?」


「あぁ、陛下に呼ばれてね。行ってくるよ。子供達のことはよろしく。」


「わかりました、行ってらっしゃいませ。」


家を出て王城前に【瞬間移動テレポート】するといつもの門番のおじさんがいた。

しばらく雑談してから中に入ると、見回りの騎士から前にいた部屋で少し待つように言われた。

部屋に向かっていると向こうから寝癖で髪がボサボサになったアメリアが部屋から出てきた。


「おはよう、アメリア。寝起き?」


「ん〜〜…あれ?シドさん…………!」


瞬間、顔を真っ赤にしてアメリアが部屋に引っ込んだ。

…無視された?

部屋の前まで行って声をかけた。


「えっと…俺何かした?」


「え⁉︎あ、えっと、いや、シドさんは何もしてませんよっ⁉︎な、なんでもないですから!気にしなくていいですから!」


「あ、はい、わかりました。」


気にしなくていいなら大丈夫だろう。


部屋に入ってしばらくすると先ほどの騎士に王室まで案内された。

ノックすると中から返事が返ってきたのでそのまま入った。


「失礼します。」


「悪かったな、少しこいつを片付けてたんだ。」


そう言って机の上にあった書類を指差した。

昨日の一件についてのものだろう。

テーブルを挟んでソファに向かい合って座るとすぐにお茶が運ばれてきた。

一口すすって早速本題に移ろう。


「で、話したい事というのは何ですか?」


「二つあってな。一つは先日の魔獣の行進(モンスターパレード)で出た素材について、もう一つはシド殿の今後の地位についてだ。」


地位?どういう事?


「まぁ素材の方は大丈夫だろう。あとで城を出る前に受け取ってほしい。今のうちに全て運び出しているはずだ。管理の方は安心してもらって構わない。」


「ありがとうございます。それで、もう一つの方、「地位」というのは?」


「それなんだが、魔獣の行進(モンスターパレード)の後に貴族達から提案されてきたんだ。「あの狐の面を被った者を宮廷魔導士として迎え入れてはどうか?」とな。」


宮廷魔導士?

あれか?王城に仕える専属の魔導士みたいなやつか?


『その認識で間違っておりません。』


何で?

確かに魔獣の行進(モンスターパレード)の時はやっちゃったけど反対する貴族だっていた筈だ。


「もちろん反対する貴族もいた。しかし昨日の夜の一件を片付けたシド殿と狐面の者が同じと言うと皆一様に賛成したのだ。」


それ言っちゃったのか…。


「こんなこと言うのは失礼かもしれないんですが…面倒臭いです。俺は今まで通り冒険者業やりながらのんびり暮らしたいんです。」


「まぁ続きを聞いてほしい。別に毎日仕事をしてほしいとは言わない。肩書きだけでいいのだ。何か異変が起こった時には対処を、行き詰まっている時には助言をしてほしいぐらいなのだが、その分利点もある。」


「肩書きだけと言うのはわかりました。利点と言うのは何ですか?」


「シド殿は本を何冊程所有している?」


「えっと…わかりませんね。数えた事がありません。」


まだ手もつけていない。

そもそもこの世界には活版技術がないため本自体の価値がかなり高い。

魔導書ともなれば目玉が飛び出そうな金額がつけられている。

それほど高価で重要な物が貰った屋敷には多くある。

元の家主はどんな人だったんだろう?


余談だが砂糖・胡椒はどこでも、海から離れた地区では海産物も同じく高価な物に分類される。

が、砂糖も胡椒も屋敷にはそこそこあった。

いざとなれば自分で作れると思う。

海産物が高価なのは内陸の市場に出回るまでに鮮度が落ちるからだが、【亜空間収納インベントリ】持ちの俺には関係ない。


「シド殿の事だからかなりの数は持っているだろう。しかし中には知れない事もあるだろう。宮廷魔導士となればこの国のほぼ全ての施設に入る事ができる。禁書棚も例外なく、だ。その他にもシド殿専用の研究室も用意する。どうだろうか?」


そもそも禁書がある事自体知らなかったし、リーヴがいるから別にいい。

研究室も屋敷に【空間魔法】で異空間を作ってそこで実験だろうがなんだろうがすればいいわけだ。

全部自分で解決出来るんだよな…どうしよう。


『受けておいて損は無いと思われます。全ての施設に入れると言うことは地位もそれなりに高くなります。こちらの利点の方が大きいです。』


リーヴがそう言うのなら受けておこうか。


「わかりました、その話、受けさせてもらいます。」


そう言うと陛下の顔が一気に明るくなった。


「助かる。ありがとう、シド殿。これで貴族達に色々言われなくて済む。」


色々言われてるのか。

王様も大変だな。


「さて、決まったことだし今日中に任命式をしてしまおう。貴族にも収集をかければすぐに来るだろう。」


「え、今からですか?」


「なに、そんなに時間はとらせぬ。任命式はせいぜい5分ほどで終わる。なにせ1人に紋章を渡すだけだからな。緊張しなくていいぞ。」


「はぁ…わかりました。」


▽▽▽▽▽


「この場にて、グランテストの救世主、シド・テンペスト・シリウスを宮廷魔導士として任命する。異論のある者はその場で挙手せよ。」


もちろん手は上がらない。

こんな大々的に救世主とか言われると小っ恥ずかしい。

今この場にいるのは王族と貴族、騎士隊長達、現宮廷魔導士が数人それぐらいだ。


「異論は無いな。ではこの場で、シド・テンペスト・シリウスをグランテスト大国の宮廷魔導士とする。シド殿、前へ。」


陛下の前へ行くとアメリアがクスクス笑っていた。

緊張していたのだろうか。


「これより、汝を宮廷魔導士と任命する。魔術の真理を解き明かすべく日々尽力するのだ。」


「承知いたしました。」


これで俺のセリフは終わり。

このタイミングでこう言えと言われていた。


その後は金色のバッジのような物を渡された。

中央に双頭の獅子が杖に巻きついているような紋章が彫られていた。

これどういう事?


『グランテスト大国の王族の紋章は双頭の獅子です。騎士隊長に任命されたものには剣に、宮廷魔導士に任命されたものには杖に双頭の獅子が巻きついた紋章が授与されます。』


なるほど。

じゃあこれを持ち歩いておいて必要な時は取り出せばいいのか。

渡された後はすぐに任命式は終わった。


と思ったらこれからが一番大変だった。

現宮廷魔導士が、騎士隊長が、貴族が来るわ来るわ。

どんどん来る。グイグイ来る。ガンガン来る。

どうやらこの歳(16歳)で宮廷魔導士として任命を受けるのは建国以来初めての事だそうだ。

現宮廷魔導士はどのような魔法が使えてどれほどの実力なのか、騎士隊長はどのようにしてここまで来て手合わせ願いたいだとか言っていた。

貴族に関しては自分の娘はどうだろうかと言ってきた。

その話題には本当に驚いた。

陛下達の方を向くと陛下は笑っていたがアメリアは何故か怒っていた。

カリーナはアメリアを見て笑っている。

…似てる。コーラスを見て笑っていたカトルに似ている。

そんな事を思っているとアメリアが近づいてきた。


「シドさん、お父様から少しお話があるようです。一緒に来ていただいてもよろしいですか?」


「え?あぁ、もちろん、陛下のお呼びとあれば。」


当の陛下本人は「へ?」と言うような顔をしている。

アメリアに手を引かれてなんとか塊から脱出出来た。


「アメリア、ありがとう。」


「いいえ、大丈夫ですよ。このまま違う部屋に行きましょう。」


陛下と目を合わせると苦笑しながら出口へと向かってくれた。

はぁ…なんとか助かった。

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