第33話 ランクアップ
ラウルと一緒にいた冒険者は茶髪のヤンチャそうな男がコラッソ、淡い青色の長髪の女性がエタル、緑色の髪の少女がオザミというらしい。
ほぼ同時期に冒険者登録して、その頃からパーティーを組んでいるらしい。
全員Bランクなんだとか。
「意味がわからないわね。クラウン・キメラを殴り飛ばしたのがFランクって…。」
「その上瞬間移動かよ。Gランクって何?」
話が終わった後はラウル達4人を連れて【瞬間移動】を使ってグランテスト前に飛んだ。
4人ともかなり驚いていた。
でしょうね。
ギルドに入ってカウンターに報告するとすぐにライナーが出てきた。
今日はミナさんはいないのかな?
筋骨隆々のおっさんのお出迎えは嬉しくないな。
「おぉ、ラウル!もう帰ってきたのか!それで、クラウン・キメラはどうなった?」
「どうなったも何も僕たちはほぼ何もしてません。シドさんが殴って殺っちゃいました。」
「シドが?」
ライナーの顔が俺に向く。
こっちを見つめるな。
「…まぁお前ならありえるか。で、クラウン・キメラの損傷はどうなんだ?」
「顔面が凹んでいるだけであとはほぼ損傷無しね。今はこの人が収納してるらしいわ。ねぇ、ライナー、これでGランクってどういう事なの?」
そんな事言ってあげるな。
たくましいライナーの顔が歪んでいるだろう。
「そうは言われてもな…少し前に登録したばかりなんだぞ?…でもまぁ、クラウン・キメラを殴り殺したんだしこりゃランクアップだな。ほれ、ギルドカード貸せ。すぐに上げてきてやるから。」
「あ、はい。」
言われるがままに渡したけど早すぎないか?
「あんたスゲーな。ランクアップ早すぎねぇか?」
それは俺が一番思ってる。
言った通りすぐにライナーは帰ってきた。
手渡されたギルドカードは青色になっており、「G」とあった場所には「D」と書いてあった。
「こんなの初めてだけどな。異例の3ランクアップだ。これからも頑張れよ。さて、じゃあクラウン・キメラを拝みに行くぞ。」
異例なのかよ。
別に1つ上がるぐらいでも良かったのに。
ライナーについていくと解体所についた。
かなり広く、奥には解体用の刃物を持った人達が多くいた。
「おい、お前ら真ん中開けろ!今年一番の解体になるぞ!さぁ、出してくれ!」
解体用のテーブルが中心からズラされそこに【亜空間収納】からクラウン・キメラの死体を出した。
わらわら人が集まってきて驚きの声が上がっている。
「こいつらが狩ってきたクラウン・キメラだ!余す事なく材料にできるからくれぐれも慎重に解体してくれ!」
ライナーがそう言うとすぐに数人の解体人が作業に取り掛かった。
死んでも外皮は硬いようで刃の進みが悪い。
「次来るときまでには解体も終わってるさ。なにせ大物だからな。悪いが待ってくれ。」
そう言われて俺たちはギルドを後にした。
「シドさんはこの後どうしますか?」
「今日はとりあえず国をブラブラするよ。まだ見きれてないし。」
広いからまだまだ見足りない。
いろんな所も周りたいしね。
「わかった。じゃあまた会ったらその時はよろしく。」
「あんたぐらいならすぐにAランクぐらいまで上がれると思うぜ。そん時はよろしくな。」
「困ったら頼ってよね。オザミも私も力になれるなら協力するから。」
「ありがとう、じゃあ、またな。」
そう言ってラウル達とは別れた。
そういえばレヴィはどうしてるんだろう。
通信いれてみるか。
『レヴィ?俺だけど、今何してる?』
『うぉっ!びっくりした。驚かせないでよね。今は依頼が終わってギルドに向かっているところね。』
『俺も今ギルド前にいるんだ。このあとは観光でもしようと思ってるんだけどどうする?』
『そうね…美味しい物買ってくれるなら付いて行くわ。』
『俺も何か食べようと思ってたからな。じゃあ待っとくよ。』
通信を切ると急に腹が減ってきた。
ギルド近くの広場にはいつも多くの出店があっていい匂いが漂っている。
しばらくするとレヴィがギルドに入りこちらに駆け寄ってきた。
「見て見て!ほら!私Fランクに上がったわよ!日頃の成果ね!」
元気いっぱいに「F」と書かれたギルドカードを見せてきた。
「あぁ、俺もさっきランクアップしたんだ。ほら。」
さっき変わったばかりのギルドカードを見せるとレヴィの笑顔が消えた。
そりゃそうなるだろう。世の中って残酷だね。
「…それはそうとして、何か食べに行きましょ。あ、全部そっちが奢ってよね。」
契約悪魔とは、上級悪魔っていうのは契約主に奢らせるのか。
初めて知ったよ。別に構わないけど。
その後は広場の出店で色々買った。
牛串、サンドイッチ、ミートパイなどなど、出店なのにかなりのレパートリーがあって満足した。
レヴィの機嫌も直ったらしく終始笑顔だった。
サラやマモンでさえ怒ったレヴィが一番怖いと言うからね。危ない、危ない。
「ねぇ、あの子達どうしたのかしら。」
急に話しかけてきたレヴィの視線の先には2人の少年と少女がいた。
どちらも幼く、少女の方は中学生のように見える。少年は小学生ほどだろうか。
2人とも薄汚れた服を着て広場の端の方に立っていた。
すると待っていた牛串屋の店主が教えてくれた。
「ん?あぁ、ありゃ西地区の孤児院の子供だろうな。この時間帯になるとここらにいる事が多いかな。なんでも孤児院ってのは名ばかりで、実際はそこを運営してる奴らの遊び代や酒代に金が回ってるらしいぜ。」
「そんな事が…誰もどうにかしないんですか?」
そんな事を知っているのなら誰かが動いていてもおかしくない。
「一度は何人かが動こうとしたさ。ただなぁ、そいつら行ったきり帰ってこなかったんだよ。それ以来あの孤児院に首を突っ込むとろくなことにならない、ってなって今じゃ誰も動けねぇんだよ。」
「…その運営金はどこからきてるんですか?渡してる人に直接言えば解決できるんじゃ?」
「その渡してる人もグルなんだよ。オバラ伯爵っていうんだけどな、こいつは根っから腐ってやがるってんで評判だ。夜になれば孤児院からは大人の騒ぎ声が聞こえるって噂になってたぜ。」
そもそも孤児院ってのは捨てられた、もしくはなんらかの理由で育児が出来なくなった子供達を育てるための施設だろう?
それを運営するための国からの金を私利私欲のために使うのは論外だな。
決めた、潰す。そして子供を助ける。
レヴィの方も顔を赤くして怒っていた。
どうやら同じ考えのようだ。
「ねぇ、おじさん、どうやったらその孤児院潰せるの?」
レヴィの声が前よりずっと優しくなっている。
顔は笑っているように見えるが目が笑ってない。
あ、こりゃダメですわ。
「潰すって…嬢ちゃん、そりゃ難しいんじゃねぇか?国自体に出せる証拠でもあればなんとか出来るかもしれねぇけどよ…本人が国王の前で話す、とかな。」
「そこまで聞ければ十分だ。ありがとう。じゃあ牛串もらってくよ。」
屋台を離れて広場の端に行くとそこにはまだ子供がいた。
こちらを見る目には警戒心が溢れ出ている。
「何ですか…?」
「いや、これいる?別に餌付けしようとかは思ってないけど。」
そう言ってさっき買った牛串を差し出した。
すぐに少年の方が飛びついてきた。
「ちょっと、こら、セイル!もし危ない物だったらどうするの⁉︎」
セイルと呼ばれた少年は首を傾げながら牛串を食べている。
服の上からでもやせ細っているのがわかる。
こんなになるまで子供を放っていたのか。
俺は改めてその孤児院を潰す事を決心した。




